ゲームの手法を応用する「ゲーミフィケーション」を従業員教育に活用する動きがある。だが、効果を上げるためには単に競争を煽ったりインセンティブを付与すればいいというわけでもない。何が重要なのか?
ゲームはもはや、社員向けオリエンテーションでチームビルディングの訓練に利用される面倒なだけのものではない。
ゲームの手法をゲーム以外の分野に応用する考え方を「ゲーミフィケーション」という。最近は、このゲーミフィケーションを用いれば、IT部門が提供するツールやサービス、アプリケーションについて従業員を効率的に教育でき、さらにはヘルプデスクの利用回数を減らすのにも役立つということに多くの企業が気付き始めている。
「実際、ゲーミフィケーションは人々の行動を変えられる。人は収入のある仕事に就いていれば安心するものだ。では、そうした従業員に新しいことを試させたり、これまでの仕事のやり方を変えさせたりするにはどうすればいいかということだ」とNTTデータ傘下のITサービス企業、米NTT DATA Americasで最高技術責任者(CTO)を務めるイムラン・サイード氏は指摘する。
同氏によれば、NTT DATA Americasの7000人の従業員の多くは、勤続数十年(decades)だという。そうした従業員を相手に、新しいスキルを学ばせたり、周囲の人たちと協力させたり、厄介なプロジェクトを最後までやり遂げさせたり、皆で一丸となって会社全体の目的に取り組ませたりするのは、やりがいはあるが骨の折れる難題だ。
NTT DATA Americasは2012年に入り、エンタープライズ向けのソーシャルコラボレーションプラットフォームを導入した。だが、サイード氏によれば、それから数カ月が過ぎても、このプラットフォームを積極的に活用する従業員はわずか100人程度だったという。もっと積極的に利用してもらうべく、同社は(貢献した人に与えられる)カルマポイントとバッジのシステムを導入した。すると、このプラットフォームのアクティブユーザー数はすぐさま4000人に拡大した。
このソーシャルコラボレーションプロジェクトの延長線上には、「ヘルプデスクによく寄せられる一般的な問題については、IT部門に頼るのではなく、このプラットフォームを使って従業員同士が協力して問題解決に当たってほしい」との思いもあった。サイード氏によれば、おかげで同社のIT部門はより大局的なプロジェクトに注力できるようになったという。ソーシャルコラボレーションプラットフォームが導入されていなければ、取り掛かる余裕などなかったであろうプロジェクトだ。
他にも、従業員にモバイルアプリケーション開発の勉強を奨励するための取り組みとして、同社はバスケットボールの全米大学チャンピオンを決める「3月の熱狂」と呼ばれる競技大会を模したコンテストを開催した。このコンテストで勝利を収めたアプリケーションは、同社のエンタープライズアプリケーションストアで派手に取り上げられるというシステムだ。将来の会社のリーダーを特定するためのキャリア開発およびキャリアマネジメントのためのゲームも近く登場する予定だ。
「狙いは、才能のある従業員を発掘し、昇進させ、従業員の定着率を高めることにある」とサイード氏は言う。
実際、NTT DATA Americasの離職率は既に70%減少している。その背景には、さまざまなゲーミフィケーションの取り組みを実施している影響もあるはずだ、とサイード氏は指摘している。
また、独SAPが米国に設置している研究開発拠点SAP Labsでシニアイノベーションストラテジストを務めるマリオ・ハーガー氏は次のように指摘する。「従業員教育にゲーミフィケーションを取り入れたいと考える企業は、望ましい結果とインセンティブについて検討する必要がある」
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