ビジネスと人権に関するNPOが、ICT業界における強制労働の実態を明らかにした。同業界にまん延する「現代奴隷制」はなぜなくならないのか。
情報通信技術(ICT)業界では、資源や部品の調達、商品の製造、配送の過程で強制労働を排除できていない――。この実態を、ビジネスと人権に関するNPO(非営利団体)Business & Human Rights Resource Centre(BHRRC)が主導するイニシアチブ「KnowTheChain」(KTC)が明らかにした。
KTCは、資源や部品の調達、商品の製造、配送といったサプライチェーンにおける強制労働のリスクを可視化、改善するための指標とガイドラインを提供している。2025年4月に公開した年次調査レポート「KnowTheChain ICT benchmark」2025年版では、世界的なICT企業45社を対象に、人権侵害是正への取り組みを100点満点で評価した。評価は以下をはじめとした複数の指標に基づく。
この調査で、45社の平均点は20点にとどまった。50点を超えた企業は以下の3社のみだった。
一方で、調査対象45社のうち20社が15点未満だった。点数が一桁だった企業は以下の通りだ。
指標のうち、「従業員の結社の自由の支援」については、調査対象企業全体の93%が0点を記録した。「購買慣行」と「従業員の権利の行使」はいずれの企業でも数値が最も低く、両指標とも平均点は5点だった。
強制労働をはじめとした「現代奴隷制」(権力の行使や脅迫、暴力などによって搾取される状態)は深刻な問題だ。ICT業界では、商品の製造過程で使用する原材料の採掘や部品の調達において強制労働が見られるとKTCは指摘する。
2020年6月、KTCは同月に公開したKnowTheChain ICT benchmarkの2020年版の内容を受けて、ICT企業が「サプライチェーンにおける強制労働防止の取り組みを怠っている」と指摘した。KTCが2023年1月に公開したKnowTheChain ICT benchmarkの2022年版では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響でICT企業の収益は増加したにもかかわらず、企業の大半はサプライチェーンにおける強制労働のリスク排除や適切な対策を講じていなかったことを明らかにした。
KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版によると、ICT企業におけるポリシーやガバナンス、「人権デューデリジェンス」の確立には一定の進展が見られる。ただし、ポリシーと実践の間の差は拡大する傾向にあると同レポートは指摘する。「実際の業務や労働現場でポリシーをどのように運用しているか、実践の実効性をどのように計測しているか、データを示すことができている企業が少ないことは明らかだ」というのが同レポートの主張だ。人権デューデリジェンスは、強制労働をはじめとした労働に関する人権侵害の特定、分析、予防、軽減を進めるための取り組みを指す。
「ICT業界は、サプライチェーンにおける従業員の権利を守る活動を依然として怠っている」。BHRRCのKTC責任者兼投資戦略担当のエイン・クラーク氏はこう述べる。同氏は続けて、「サプライチェーンから強制労働を根絶するための取り組みを早急に強化する必要がある」とICT企業の課題を強調する。
サプライチェーンの人権リスク評価を実施する方法を開示している企業は、2025年版の調査で対象になった企業全体の67%だった。一方、リスク評価の利害関係者と具体的な事例を開示できた企業は20%にとどまった。これは、実際に被害を受ける側である従業員の視点を重視してリスクを評価する取り組みが乏しいことを示しているとKTCは指摘する。
KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版は、ICT業界で広く採用されている「ジャストインタイム」方式が、従業員の虐待リスクを高めていると指摘する。ジャストインタイム方式は、必要なものを必要な時に必要な量だけ生産し、完成品や部品の在庫を減らす生産方式だ。
「電子機器製造は中国や台湾、マレーシアなど、強制労働のリスクが高い地域で活発だ。さまざまな機関がリスクを指摘し、根拠となるデータを蓄積している」(クラーク氏)
特に、世界で流通する半導体の大半は台湾で生産されている。KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版は、従業員の採用手数料や偽装請負など、台湾では強制労働のリスクが高まっているとし、移民労働者を保護する必要性を強調している。
KTCは、企業のリーダーやサプライチェーン、採用の専門家に対し、以下の行動を呼び掛けている。
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