トラフィックの優先度設定が可能
Wi-FiのQoSを制御する標準規格が登場 QoSで何が変わるのか
Wi-Fi Allianceは、Wi-Fiにトラフィックの優先度を制御する標準規格を策定した。この規格がWi-Fiに実装されることでどのようなメリットがあるのだろうか
Wi-Fi Allianceがワイヤレス接続規格に「Wi-Fi CERTIFIED QoS Management」を導入する。トラフィックに付加する優先順位を標準化する規格で、これによってリアルタイムアプリケーションでのWi-Fiエクスペリエンスが向上する。
Wi-Fi CERTIFIED QoS Managementは「Wi-Fi CERTIFIED WMM」を基礎とし、Wi-FiネットワークのQoS(Quality of Service)処理にエンド・ツー・エンドで一貫性のあるアプローチを実現するというのがWi-Fi Allianceの見解だ。
Wi-Fi CERTIFIED QoS Managementの目的は、クライアントアプリケーションからのQoS処理の要求やネットワーク管理者によるQoSポリシーの実装を可能にするメカニズムを標準化することにもある。これによって、ユーザー端末とアクセスポイントはアプリケーションに応じたトラフィック優先度の識別が可能になる。
Wi-Fi CERTIFIED QoS ManagementにはWi-Fi機器、アプリケーション、ネットワーク管理者がトラフィックフローに優先順位を付けられる2つの技術が導入されている。
「MSCS」(Mirrored Stream Classification Service)は、「Mirrored」(ミラーリングされる)QoSという考え方に基づき、トラフィックに任意の優先度を割り当てるよう要求する簡単な手段をユーザー端末のアプリケーションに提供する。この双方向のQoS処理によってアプリケーションの遅延が削減され、Wi-Fiチャネルが混雑していても良好なWi-Fiエクスペリエンスを実現する。
「DSCP」(Differentiated Service Code Point)マッピングは、ネットワーク全体でネットワーク管理者がアクセスポイントとユーザー端末の両方からのトラフィックを特定のQoS優先度にマッピングできるようにする。その結果、没入感が高いリアルタイムアプリケーションでのエクスペリエンスの改善、オンラインゲームのプレイや対話型のクラウドサービス、エッジサービスへのアクセスにおける遅延やジッタの削減など、「堅牢(けんろう)な」サービス提供と高品質のWi-Fiが実現するとWi-Fi Allianceは述べている。
住宅用ネットワーク、企業ネットワーク、パブリックネットワークにもメリットがあるとWi-Fi Allianceは補足する。ビデオ会議、インタラクティブゲーム、拡張現実、仮想現実、IIoT(産業用IoT)、医療モニタリングなど、低遅延や低ジッタが求められるアプリケーションを使う場合は特にメリットがあるという。
企業ネットワークでは、ネットワーク管理者がDSCPマッピングによってビデオ会議のトラフィックの優先度を高くしたり、ミッションクリティカルなサービスのためにマッピングテーブルを設定したりできる。
Wi-Fi Allianceのエドガー・フィゲロア氏(プレジデント兼CEO)は次のように語る。「現在のWi-Fiネットワークは、リアルタイムアプリケーションが必要とする大量のデータを送受信している。リアルタイムアプリケーションは、エクスペリエンスを高めるためにトラフィックの優先度を把握する必要がある」
最初のWi-Fi CERTIFIED QoS Management製品の一つとして相互運用性のテストベッドとなる機器を提供するメンバー企業には、Airties、Broadcom、Intel、Qualcomm Technologies、CommScope、ASSIA、ON Semiconductorなどがある。
Airtiesのメティン・タスキン氏(CTO:最高技術責任者)は次のように話す。「リアルタイムアプリケーションのパフォーマンス強化を目的とするWi-Fi Allianceの新たな取り組みを、当社は高く評価している。当社をはじめとする世界中のサービスプロバイダーが提供する高度なスマートWi-Fiソフトウェアやクラウド管理ソリューションを補完するのにこの機能が役立つのは間違いない」
Broadcomのトーマス・デラム氏(ワイヤレス通信および接続部門の主任科学者)も次のように補足する。「Wi-Fi CERTIFIED QoS Managementは、モバイル機器やゲーム機器のアプリケーション開発者やベンダーが家庭や企業のWi-Fiネットワークで双方向のトラフィックフローを巧みに処理できるツールになる。その結果、全てのアプリケーションが必要とするサービス品質を実現する」
「これはまた、ネットワーク管理者によるシステムレベルでのQoSの管理を可能にする必須のツールにもなる。Wi-Fi CERTIFIED QoS Managementと『Wi-Fi 6E』を組み合わせることで、企業、運用担当者、ユーザーはライブ動画ストリーミング、ゲーム、拡張現実、仮想現実などのアプリケーションを、周波数帯が混雑した厳しい環境下でも快適に利用できるようになる」
Wi-Fi AllianceはWi-Fi CERTIFIED QoS Managementの公開に先立つ2021年1月、Wi-Fi 6Eエコシステムの成長を促すために6GHz周波数帯のワイヤレス標準を強化すると発表した。Wi-Fi Allianceによると、この新しい仕様によってメンバーはAFC(自動周波数調整)制御下で機能するさまざまなWi-Fi 6E製品を開発できるようになるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
7
Microsoft 365の知られざる5つの裏口 パスワードを変えても攻撃者は消えない
-
8
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
9
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー