光を利用する無線技術「Li-Fi」の実用化が進んでいる。Gartnerが指摘するようにまだ制限もあるが、Wi-Fiにはないメリットもある。用途によっては有力な選択肢になるかもしれない。
Signify(旧Philips Lighting)はLi-Fi(訳注)製品のラインアップをアップデートし、安全で信頼性の高いワイヤレスネットワークを求める企業向け新シリーズを発表した。
訳注:LEDを使った光無線通信技術。光を使うためWi-Fiのように壁を通過することはできないが、遮光するだけで通信を制限できるため用途によってはメリットになる。
Li-Fiは、Li-Fiモジュールを組み込んだ天井照明器具などがアクセスポイントとなり、ノートPCなどの端末と光を使ってワイヤレス接続する。Wi-Fi機能を内蔵するのが一般的ではなかった時代と同じく、端末にはLi-Fiで送受信するためのUSBドングルが必要だ。Li-Fiモジュールを組み込んだ天井照明器具は、建物に敷設されたイーサネットに有線接続する。
Signifyは、Li-Fiをオフィス照明に組み込むことで市場を活性化したいと考えているが、Li-Fiはまだあまり実証されていない技術と見なされている。
調査会社Gartnerは2018年に次のように記している。「Li-Fiには制限事項が多い。仮に導入されるとしても時間がかかるだろう。企業の管理責任者は慎重な投資を行い、Wi-Fi、Bluetooth、セルラーなど、広く導入されている柔軟な技術と比べてLi-Fi製品が優れている部分に注目する必要がある」
Signifyが主張するLi-Fiの主なメリットは、セキュリティと信頼性の高い帯域幅にある。Signifyで事業開発部門の責任者を務めるエド・ヒューバース氏は次のように語る。「無線周波数は非常に混雑してきた。一方ここ数年で、光を調整することによってWi-Fiと同じ方法で通信ができることが分かった。この原理自体は新しいものではない。当社はLi-Fiモジュールをオフィス業務に利用できる速度にまで向上させた」
ヒューバース氏によると、Li-FiはWi-Fiよりも高速ではないとしても、ほとんどの場合それに匹敵する速度を実現するという。「例えば1000Mbps(訳注)のWi-Fiルーターは100人で共有することになる。それによって衝突が起きる。ユーザーから見ると、10M~150Mbpsで接続することになる。また接続が非常に不安定なWi-Fiとは異なり、Li-Fiは信頼性が非常に高い」(ヒューバース氏)
訳注:原文は「Gbps」。「Mbps」の誤記と解釈した。
ヒューバース氏は、Li-Fiは建物内でのみ利用可能で、信号漏れは照明器具の光が届く範囲に限られることをもう一つのメリットに挙げている。セキュリティ上の懸念からWi-Fiを利用できない政府機関や金融機関の内部ネットワークにとっては適切な選択肢になる。
Li-Fiモジュールには最大16台の端末を接続できる。そのためWi-Fi接続よりもネットワークの競合が少なくなる。これは、高速かつ信頼性の高い接続を必要とするアプリケーションにはメリットがあるとヒューバース氏は話す。その一例が動画などのメディアだ。それらはモバイル端末とファイルサーバの間で大容量ファイルの転送が必要になることがある。
ベルギーのマーケティングおよび通信会社Claerhout Communication Campusは、ベルギーの都市ヘントの同社オフィスにおいて、大会議室のLED照明器具(Philipsブランド)4台にTrulifiを取り付けて相互に接続している。このシステムを利用するのは同社の従業員とクライアントだ。
同社で事業開発マネジャーを務めるクリストファー・ルイス氏は次のように述べる。「当社は高解像度の画像、芸術作品、ビッグデータファイルを処理できる高品質でエネルギー効率の良い照明とワイヤレス接続を必要としていた。当社が従業員やクライアントに提供する帯域幅は、5Mbpsから150Mbpsに増えている。ある照明から別の照明への引き継ぎがシームレスに行われるため、社員は自由に動き回ることができる」
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