次世代Wi-Fi【後編】
Wi-Fi 6/6Eをスキップして「Wi-Fi 7」を待つべきか?
IEEEは既にWi-Fi 7に取り組んでおり、近い将来に利用可能になる。業界とCIOは、Wi-Fi 6に移行するかWi-Fi 6Eを待つか、一気にWi-Fi 7にするかのジレンマに陥る可能性がある。
前編「次期規格『Wi-Fi 6E』は2021年から」では「Wi-Fi 6E」について解説した。後編ではWi-Fi 7やWi-Fiと5Gの関係、WiGigなどについて解説する。
今後のWi-Fiと5Gの比較
Wi-Fi開発者とモバイルサービス開発者は、よく似た動機と願望を持って同じ道を歩んでいるように思える。それは、ウェアラブル拡張現実(AR)と工業規模の無線ネットワークという2つの高度な応用を実現することだ。どちらも低遅延が求められる。
ARの場合、スマートグラスは頭の位置の変化や環境内のイベントに素早く反応する必要がある。これにより、ユーザーは遅延を感じたり乗り物酔いに似た症状を体験したりしなくなる。工業用ネットワークの場合、ある機械の信号がコンマ何秒のタイミングで他の機械を制御する必要がある。
無線技術によって、保守が困難な配線を削減あるいは排除できる可能性がある。機器の追加、移動、変更のプロセスがシンプルになるかもしれない。ただし、工業オートメーションは高可用性と非常に短い信号遅延を実現するため、有線接続に依存する傾向が強い。
5Gの開発者とサービスプロバイダーは、数年以内に工業ユーザーにサービスを提供することを目指している。URLLC(Ultra-Reliable and Low-Latency Communications:超高信頼低遅延通信)という5Gの要素とD2D(Device-to-Device:端末間通信)の5G直接接続によって、現在の緊急無線開発が工業開発に移行する可能性がある。
だが、工業用アプリケーションにWi-Fiが好まれる要因はまだ幾つかある。屋内では、Wi-Fiはスケールメリットを生かす経済的な選択肢であり続ける見込みがある。追加のセルラーアカウントを契約する必要がなく、外部委託のマネージドWi-Fiサービスを利用するオプションが常にある。
IoT(モノのインターネット)アプリケーションの開発者も、電力要件を引き下げ、バッテリー駆動機器をメンテナンスなしで長時間運用できるようにするため、Wi-Fiの新機能を利用しているようだ。Wi-FiのTWT(Target Wake Time)機能を利用すると、クライアント端末やルーターはデータ伝送の調整やスケジュール設定を行い、指定された時刻までクライアント端末を低電力モードのままにすることが可能だ。
スマートグラスアプリケーションも、少なくとも当面はWi-Fiを優先する可能性が高い。スマートグラスがまだ未来のライフスタイルとして思い描く空想のレベルを満たしていないことを考えると、ユーザーは屋内で数時間程度使えることを重視する可能性が高い。開発者が、一日中屋外で使えるサイズ、重量、バッテリー要件に取り組むのはその先のことだ。
Magic LeapやMicrosoftなどのARヘッドセットメーカーは、主に顧客や企業への直接販売を選択している。だが、ARアイウェア(眼鏡やコンタクトレンズなど)は恐らく2020年代後半にはスマートフォンのアクセサリーになり、スマートフォンメーカーがハードウェアを供給し、5Gネットワークが信号を供給するようになるだろう。
HTCとValveが共同開発したVRヘッドセット「HTC Vive」にはWiGigを利用する無線オプションがある。WiGigは、知名度は低いがWi-Fiのバリエーションの一つで、60GHzのマイクロ波周波数を利用する。ユーザーはHTC Viveの無線オプションの応答性に満足しているようだがWiGigの受信範囲には限界があり、壁を貫通する能力も限られる。
Wi-Fi 7を待つかどうかの決断
IEEEの802.11beタスクグループは、2019年から「Wi-Fi 7」に取り組んでいる。この規格はルーター1台当たり40Gbpsを処理する可能性が高い。これはWi-Fi 6の約4倍のスループットに相当する。802.11beの開発者は、2021~2024年初頭までの予定としてかなり積極的なスケジュールと段階的な改善手順を提示している。この期間の終わりまでには、Wi-Fi AllianceがWi-Fi 7の認定手続きを確立する可能性がある。
ただし、メーカーは802.11beの早期ドラフトを実装することが可能だ。このドラフトは2021年に承認される予定で、主な仕様は既にある程度明確になっている。初期段階のWi-Fi 7製品はチャネルの最大帯域幅を倍増(160MHzから320MHz)し、ルーター1台当たり最大16本のアンテナを使用可能にして変調技術を改善することで、約3G~4Gbpsの送受信が可能になる可能性がある。
PCメーカーは、今すぐWi-Fi 6に取り組むかWi-Fi 6Eの登場を待つかを迷っているように思える。1年後になったら、ネットワーク管理者やネットワーク製品の設計者はWi-Fi 6Eに取り組むか、802.11beの早期実装を待つべきかを自問することになるだろう。さらに2~3年後には、完全なWi-Fi 7を待つべきかどうか悩むことになるかもしれない。
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