次期規格「Wi-Fi 6E」は2021年から次世代Wi-Fi【前編】

Wi-Fi 6の普及を待つ間もなく、その次の規格「Wi-Fi 6E」が浮上してきた。現在の市場とWi-Fi 6Eの動向を解説する。

2020年12月18日 08時00分 公開
[Michael GoldComputer Weekly]

今すぐアップグレードするならWi-Fi 6

 2020年の時点で、新しいネットワーク機器の導入を考えているユーザーの大半にとっての次世代Wi-FiはIEEE 802.11axを意味する。この規格の認定機器には「Wi-Fi 6」のロゴが付いている。Wi-Fi 6に対応する主なスマートフォンとしては「iPhone 11」や「Galaxy S10」がある。

 既存のノートPCでWi-Fi 6に対応するものは比較的少ないが、Wi-Fi 6互換ルーターは2019年から多数販売されている。いつものことだが、メーカーは最大限のパフォーマンスを主張し、理論上ほぼ10Gbpsのスループットを実現するという。だが、Wi-Fi 6ユーザーが体験する実際の転送レートは1Gbps程度だ。

 最新のWi-Fi機器はユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる。転送レートが上がり端末の接続数が増え、遅延は少なくなる。Wireless Broadband Allianceによると、最新のWi-Fi機器はトライアル中に「一貫して2ミリ秒の低遅延」を実証したという。

 Intelの主張はそれほど大胆ではない。Wi-Fi 6ネットワークで9台の端末を接続するシミュレーションでは、遅延は平均7.6ミリ秒になると予測しているという。

 ゲーム愛好家や取引頻度の高い金融証券トレーダーは、有線イーサネットを依然として好む。有線イーサネットは遅延が5ミリ秒未満。エンジニアリングシステムでは1マイクロ秒を下回る。最も要求が厳しいPCゲーマーはWi-Fi 6をそれほど必要としていないし、求めてもいない。家電製品のユーザーは「PlayStation 5」でWi-Fi 6を体験する機会があるだろう。

 ネットワーク管理者や小規模オフィスは、ユーザーが新たなハードウェアを入手するにつれて何年もかけてWi-Fiがアップグレードされる経験をしてきた。Wi-Fi 6の本格的な普及には、恐らく数年は必要だろう。

 Cisco Systemsは、2023年には無線LANエンドポイントの約27%がWi-Fi 6互換になると予測する。だとしても、単一のアクセスポイントで多数の最新スマートフォンにサービスを提供することをネットワーク管理者が想定しているなら、現時点でアクセスポイントとホットスポットをアップグレードするのは妥当だ。

Wi-Fi 6Eは2021年まで待て

 Wi-Fi 6の2020年モデルに飛び付く前に、計画段階にある「Wi-Fi 6E」に目を向けてみるのもよいだろう。

 英国の規制当局は、6GHzバンドとして知られる約500MHzスペクトルの無認可使用を許可することを最近決定した。これにより、英国でWi-Fiが利用できるスペクトルの量はほぼ2倍になる。

 米国の規制当局はさらに踏み込み、6G〜7GHz全体を含む非常に大きな周波数帯をオープンにしている。その中には、リアルタイムのオンライン地図サービスやチャネル調整サービスにのみ利用可能な周波数もある。結果、米国のWi-Fiユーザーが利用できるスペクトルの量はほぼ3倍になる可能性がある。

 Wi-Fi Allianceは、6GHz帯互換機器に対して2021年初頭からWi-Fi 6Eロゴを使った認定を開始する予定だという。だが、ASUSは「世界初のWi-Fi 6Eルーター」を既に発表しており、2020年12月には利用可能になると約束している(訳注:原文は2020年10月公開)。

 Wi-Fi 6Eは、混雑している場所でのWi-Fiの問題を解決する見込みがある。ただ、コロナ禍の中、混雑した場所で多くのユーザーにサービスを提供する必要があるかどうかは疑問が残る。

 ネットワーク管理者は長年、乗り換え地点(駅など)、スポーツ会場、大きな屋内施設に密集する多くのユーザーにサービスを提供するという課題に直面してきた。社会情勢が改善したら、ラッシュアワー中のWi-Fi需要を管理する仕事が再び課題になる。

後編では、Wi-Fi 7やWi-Fiと5Gの関係、WiGigなどについて解説する。

ITmedia マーケティング新着記事

news079.jpg

狙うは「銀髪経済」 中国でアクティブシニア事業を展開する企業とマイクロアドが合弁会社を設立
マイクロアドは中国の上海東犁と合弁会社を設立。中国ビジネスの拡大を狙う日本企業のプ...

news068.jpg

社会人1年目と2年目の意識調査2024 「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、2年生は53%
ソニー生命保険が毎年実施している「社会人1年目と2年目の意識調査」の2024年版の結果です。

news202.jpg

KARTEに欲しい機能をAIの支援の下で開発 プレイドが「KARTE Craft」の一般提供を開始
サーバレスでKARTEに欲しい機能を、AIの支援の下で開発できる。