Wi-Fi 6の普及を待つ間もなく、その次の規格「Wi-Fi 6E」が浮上してきた。現在の市場とWi-Fi 6Eの動向を解説する。
2020年の時点で、新しいネットワーク機器の導入を考えているユーザーの大半にとっての次世代Wi-FiはIEEE 802.11axを意味する。この規格の認定機器には「Wi-Fi 6」のロゴが付いている。Wi-Fi 6に対応する主なスマートフォンとしては「iPhone 11」や「Galaxy S10」がある。
既存のノートPCでWi-Fi 6に対応するものは比較的少ないが、Wi-Fi 6互換ルーターは2019年から多数販売されている。いつものことだが、メーカーは最大限のパフォーマンスを主張し、理論上ほぼ10Gbpsのスループットを実現するという。だが、Wi-Fi 6ユーザーが体験する実際の転送レートは1Gbps程度だ。
最新のWi-Fi機器はユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる。転送レートが上がり端末の接続数が増え、遅延は少なくなる。Wireless Broadband Allianceによると、最新のWi-Fi機器はトライアル中に「一貫して2ミリ秒の低遅延」を実証したという。
Intelの主張はそれほど大胆ではない。Wi-Fi 6ネットワークで9台の端末を接続するシミュレーションでは、遅延は平均7.6ミリ秒になると予測しているという。
ゲーム愛好家や取引頻度の高い金融証券トレーダーは、有線イーサネットを依然として好む。有線イーサネットは遅延が5ミリ秒未満。エンジニアリングシステムでは1マイクロ秒を下回る。最も要求が厳しいPCゲーマーはWi-Fi 6をそれほど必要としていないし、求めてもいない。家電製品のユーザーは「PlayStation 5」でWi-Fi 6を体験する機会があるだろう。
ネットワーク管理者や小規模オフィスは、ユーザーが新たなハードウェアを入手するにつれて何年もかけてWi-Fiがアップグレードされる経験をしてきた。Wi-Fi 6の本格的な普及には、恐らく数年は必要だろう。
Cisco Systemsは、2023年には無線LANエンドポイントの約27%がWi-Fi 6互換になると予測する。だとしても、単一のアクセスポイントで多数の最新スマートフォンにサービスを提供することをネットワーク管理者が想定しているなら、現時点でアクセスポイントとホットスポットをアップグレードするのは妥当だ。
Wi-Fi 6の2020年モデルに飛び付く前に、計画段階にある「Wi-Fi 6E」に目を向けてみるのもよいだろう。
英国の規制当局は、6GHzバンドとして知られる約500MHzスペクトルの無認可使用を許可することを最近決定した。これにより、英国でWi-Fiが利用できるスペクトルの量はほぼ2倍になる。
米国の規制当局はさらに踏み込み、6G~7GHz全体を含む非常に大きな周波数帯をオープンにしている。その中には、リアルタイムのオンライン地図サービスやチャネル調整サービスにのみ利用可能な周波数もある。結果、米国のWi-Fiユーザーが利用できるスペクトルの量はほぼ3倍になる可能性がある。
Wi-Fi Allianceは、6GHz帯互換機器に対して2021年初頭からWi-Fi 6Eロゴを使った認定を開始する予定だという。だが、ASUSは「世界初のWi-Fi 6Eルーター」を既に発表しており、2020年12月には利用可能になると約束している(訳注:原文は2020年10月公開)。
Wi-Fi 6Eは、混雑している場所でのWi-Fiの問題を解決する見込みがある。ただ、コロナ禍の中、混雑した場所で多くのユーザーにサービスを提供する必要があるかどうかは疑問が残る。
ネットワーク管理者は長年、乗り換え地点(駅など)、スポーツ会場、大きな屋内施設に密集する多くのユーザーにサービスを提供するという課題に直面してきた。社会情勢が改善したら、ラッシュアワー中のWi-Fi需要を管理する仕事が再び課題になる。
後編では、Wi-Fi 7やWi-Fiと5Gの関係、WiGigなどについて解説する。
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