長年使っているWindowsアプリケーションを含め、レガシーアプリケーションの維持と最新化は多くの企業にとって喫緊の課題だ。現行システムの最新化にどう取り組むべきなのか。その実践的な手法を探る。
サーバOS「Windows Server」で稼働するアプリケーションを含め、既存の業務に深く根付いたレガシーアプリケーションの維持と最新化(モダナイゼーション)は、IT管理者にとっての悩みの種になっている。技術革新の必要性と、既存インフラが抱える制約との間で、適切なバランスを見極めることが求められる。課題に的確に向き合うための第一歩は、どうすれば踏み出せるのか。
レガシーアプリケーションの維持と最新化に効果的に取り組むため、IT管理者はさまざまな戦略的アプローチを検討できる。以下に候補となる戦略を示す。
段階的アプローチはさまざまな方法で始められるが、その核心は、最新化のプロセスを管理しやすい小さなステップに分解する点にある。例えば、まずは基盤となるプラットフォームの課題を解消するリフト&シフトから着手し、その後、最適化やライブラリ(プログラムの部品群)のアップグレードへと進める方法がある。一方、システムの状態や制約が把握し切れていない場合には、包括的な現状評価から始めて課題を明確にし、最適な進め方を見極めるのが現実的だ。
例えば、.NETアプリケーション(Microsoftの開発環境で構築されたWindows向け業務アプリケーション)や、OS「Linux」ベースのWebアプリケーションを、「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」(AWS)といったクラウドサービス群に移行することは、最新化の初期ステップとして現実的かつ効果的な選択肢となる。これにより、インフラ管理の負荷を軽減しつつ、リソースの柔軟な拡張や自動化といったクラウドの利点を活用できるようになる。
この段階的アプローチは、SAPのERP(統合基幹業務システム)やSQLデータベースなどのシステムにも適用可能だ。全体を一度に刷新するのではなく、構成要素ごとに段階的に更新・最適化することで、リスクを抑えながら着実な最新化を進めることができる。
互換性テストは、レガシーアプリケーションを新しいプラットフォーム上で実行する際に発生する可能性がある問題を特定し解決するために極めて重要だ。
「Windows Server 2025」のような最新のWindows Serverバージョンでアプリケーションを厳格にテストすることで、非推奨のAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)やセキュリティ構成の変更、ハードウェア要件の更新といった潜在的な非互換性を、プロセスの早い段階で検出することができる。古いバージョンのWindows Server用に構築されたレガシーなアプリケーションが、最新のOSで正しく機能することを確認することで、混乱や互換性の問題を防ぐことができる。
時代遅れのプロトコルをアップグレードすることは、従来型システムを最新化するための前向きなステップだ。「TLS 1.0」のような非推奨のプロトコルを段階的に廃止し、「TLS 1.2」や「TLS 1.3」などのより安全なバージョンに移行することで、最新のセキュリティ基準に準拠し、セキュリティリスクを軽減することができる。
このプロセスを段階的に実行し、テストを実施し、業務中断のリスクを最小限に抑えるのが企業にとっては理想的だ。加えて、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)やFTP(File Transfer Protocol)といった旧式の通信プロトコルについても、現在のセキュリティ基準に照らして見直しと更新をし、互換性と安全性を確保する必要がある。
ベンダーを評価する際には、コストが高く、機能や運用面で制約を伴う可能性のある専用ライセンスへの依存を減らすことを目的に、オープンソースや他社製品といった代替手段を検討することも重要だ。
例えば、「Oracle Java Development Kit」(JDK)のような商用のJavaディストリビューションから、「OpenJDK」などのオープンソース版に移行することで、ライセンスコストを大幅に削減し、特定ベンダーへの依存(ベンダーロックイン)を軽減できる。同様に、自社の要件により適合し、かつ有利なライセンス条件を備えたソフトウェアやプラットフォームを評価することで、コスト効率と柔軟性の両立を図ることが可能になる。
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