NVMeには、ローカル接続が前提という制約がある。これを解決して共有ストレージを実現するのがNVMe-oFだ。
NVMe標準の最初のバージョンがリリースされて約10年。NVMeはSSDのインタフェースとしてますます一般的になった。NVMeはSATAやSASなどのHDD向けに設計された古いインタフェースではなく、PCI Expressを使用する。そのためプロセッサとストレージ間の多くのボトルネックを解消する。CPUとフラッシュメモリをリンクする複数チャネルによる高IOPS、低遅延の並列アーキテクチャが実現するため、NVMeが明確な選択肢になる。
だが、NVMeはサーバ内やDAS(Direct Attached Storage)に最適化されているためある程度制限がある。
企業が必要とするのは、ネットワーク経由でフラッシュストレージに接続し、パフォーマンスのメリットを最大限に引き出し、従来のiSCSIやファイバーチャネルなどのSANを置き換えることだ。まさにこれを目的とするのが「NVMe-oF」(NVMe over Fabric)だ。
NVMe-oFは広範な技術を表す。それぞれの技術がさまざまなワークロードやユースケースに適しており、それぞれのパフォーマンスのメリットも異なる。
NVMe-oFの実用性は、企業の既存インフラやプロトコルによって異なる。ストレージのパフォーマンスを向上させるために、そのどちらかまたは双方をアップグレードする価値があるかどうかにも左右される。
NVMe-oFは、NVMeコマンドを複数のネットワークプロトコルの一つにラップすることで機能する。こうしたプロトコルには、ファイバーチャネル、iWARP(Internet Wide Area RDMA Protocol)、RoCE(RDMA over Converged Ethernet)、InfiniBandなどがあり、最近ではTCPもこれに含まれる。InfiniBandとイーサネットで最大100Gbpsの速度を提供すると称するサプライヤーもある。一般に、ファイバーチャネルは低速で、最大32Gbpsだとされている。
NVMe-oFの主なデメリットは複雑さとコストにある。NVMe-oFからメリットを得るには、新しいハードウェアに投資しなければならない。ネットワークやストレージシステムのアップグレードが必要になる可能性もある。
NVMe-oFはまだ比較的新しい技術だ。そのため、AIや大規模なビジネス分析、金融サービスなどの分野で、時間に制約があり多量のデータを処理するアプリケーションなど、高いパフォーマンスが要求されるユースケースをサポートする可能性が最も高い。
Gartnerでリサーチ部門のバイスプレジデントを務めるジュリア・パルマー氏は次のように語る。「NVMe-oFを採用している企業は全体で見て中程度だ。現時点ではNVMe-oFの複雑さとコストが広範な採用の障壁となっている。この状況は今後しばらく続くだろう」
「AIやHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、インメモリデータベース、トランザクション処理など、高いパフォーマンスが求められるさまざまなワークロードにNVMe-oFを利用できる。だが、主流となるワークロードの大半では移行は計画されていない」(パルマー氏)
NVMe-oFを採用する理由として真っ先に浮かぶのはパフォーマンスだ。フラッシュストレージの登場が意味するのは、ドライブのリード/ライト速度ではなくネットワークがボトルネックになることだ。
NVMeは、低遅延とIOPSの改善、ストレージのリード/ライトの並列化によってストレージのボトルネックに対処する。これらをHDDで行うのは難しい。
NVMe-oFはNVMeのパフォーマンスを共有ストレージに取り入れ、
など、新たなメリットを追加する。
その結果、ネットワークが維持できる限り、最も要求の厳しいコンピューティングタスクを処理できる大規模かつ高速で柔軟性のあるシステムになる。
後編では、NVMe-oFのプロトコル、既存インフラを生かしたNVMe-oF移行の方法、NVMe over Fibre ChannelやNVMe over TCPなどを解説する。
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