LLMの“これが困る”を解消する「次世代AIモデル」3選LLMの限界と“次のAI”【後編】

生成AIを支える大規模言語モデル(LLM)には課題がある。課題を克服し、企業やエンドユーザーのニーズに応えるための機能や特徴を有するAIモデルを3つ紹介する。

2025年07月07日 06時00分 公開
[Chris TozziTechTarget]

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 大規模言語モデル(LLM)は、膨大な計算リソースの要求や論理的な推論能力の欠如といった課題を抱えている。LLMの課題を克服し、より優れたユーザー体験(UX)を保証できるAI(人工知能)モデルには、どのようなものがあるのか。

LLMの“限界”に寄り添うモデル3選

1.論理推論システム

 LLMは、人間のような論理的な推論能力を持っていない。一方、論理に基づいたデータ処理が可能なAIモデルもある。決められたルールに沿って、論理的に結論を導き出すことを実現しようとする論理推論の試みは、AIモデルの最も初歩的かつ基本的な形態だ。1950年代には、事前に定義された手順に基づいて、「チェッカー」というボードゲームをコンピュータがプレイするためのプログラムが開発された。このプログラムが用いていたのが論理推論だ。1972年に登場した「Prolog」など、論理推論に特化したプログラミング言語も存在する。

 論理推論の欠点は、開発者があらかじめ論理的なルールを定義しなければならない点にある。AIモデルが論理推論を必要とする全ての状況を、開発者が事前に想定することは不可能だ。そのため、論理推論だけでLLMを動作させることは現実的ではない。しかし、論理推論システムとLLMを組み合わせれば、LLMの弱点を補うことが可能だ。事前に定義した論理ルールを用いてLLMの出力内容を評価し、ハルシネーション(事実に基づかない回答)とみられる情報を検出できる。

2.リアルタイム学習モデル

 一部の研究者やベンダーは、新しいデータを継続的に学習できるモデルの開発に取り組んでいる。その一例がAIベンダーのAigoだ。同社は、新しいデータを継続的に学習できるモデル「Aigo AI」を「統合型ニューロシンボリックアーキテクチャ」(Integrated Neurosymbolic Architecture:INSA)と呼ばれる手法で設計した。Aigo AIの仕組みに関する技術的な詳細は公開されていない。しかし、少なくともLLMではなく、知識ベースを継続的に拡張できる能力を備えていることが確認されている。

 Aigo AIのようなリアルタイム学習モデルが普及すれば、常に最新の情報に基づいた動作が求められる、生成AIの新たなユースケースが実現可能になる可能性がある。

3.小規模言語モデル(SLM)

 SLMは、基本的な構造はLLMと同じだが、LLMよりも小さなデータセットで訓練されている。

 一般に、学習データは多いほど良いとされているが、用途に応じた慎重な設計が必要だ。学習データが多いほど、LLMは多様な用途に使えるようになる。広範な領域をカバーする学習データを使えば、LLMはより多くの知識や表現パターンを学習し、多様な質問に応答する能力を獲得できるからだ。一方で、より少ない学習データで訓練されたLLMは、計算リソースを抑えながら、ハルシネーションの発生を低減できる。

 このような利点から、LLMの代替としてSLMの利用が増える可能性がある。特に、特定の業種における顧客対応など、用途が限定され、LLM以上の応答精度が求められるケースでは、LLMの代わりにSLMが求められる場合がある。

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