ストレージコストの賢い圧縮方法【第3回】
SSDの常識を変えた“あの高速化技術”と「データ削減」の効き目
企業のデータセンターで利用が拡大してきたSSD。以前はそのストレージにデータ削減をしない傾向があったが、状況は変わってきた。背景にある技術進化やメリットとは。
SSDの普及が進む中、企業のストレージ運用に変化が見られる。従来、企業はSSDに「データ削減」を適用することに消極的だった。SSDの利用拡大やストレージの各種進化によって、その状況は変わりつつある。技術進化のポイントや、データ削減によるメリットを整理する。
SSDの「速さ」と「使い方」を変えた技術とは
併せて読みたいお薦め記事
連載:ストレージコストの賢い圧縮方法
SSDで注目の話題
ストレージの技術進化
オールフラッシュストレージ(SSDのみで構成するストレージアレイ)の利用が拡大し、それに合わせてストレージのデータ削減がデータセンターで広く使われるようになってきた。データ削減をする場合は、機能の実行に伴うオーバーヘッド(負荷)が生じがちだ。アプリケーションに悪影響を与える懸念があるため、これまで企業はSSDのデータ削減には消極的だった。
その状況が変わってきた背景にあるのは、まずはSSDの各種パフォーマンスの改善だ。特筆すべき進歩は、IOPS(1秒間に処理する入出力数)とレイテンシ(遅延)のパフォーマンス向上だと言える。これに伴い、SSDでデータ削減を実行する際のオーバーヘッドを抑制しやすくなった。
進化したのは、ストレージ製品そのものだけではない。SSDは新世代のインタフェース規格に準拠することで、より高速なデータ転送が可能になってきた。インタフェース規格「PCI Express 4.0」(PCIe 4.0)に準拠したことが大きかった。その後はPCIe 4.0の後継規格である「PCI Express 5.0」(PCIe 5.0)への準拠が始まり、2022年には「PCI Express 6.0」(PCIe 6.0)の仕様策定が完了した。PCIeの規格は、基本的には世代を経るごとにデータ転送速度が2倍になっている。
SSDを利用したストレージシステムのパフォーマンス向上には、ストレージ接続規格「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)や、「NVMe-oF」(NVMe over Fabrics)も貢献している。NVMe-oFは、NVMeをイーサネットやファイバーチャネル(光ファイバーや同軸ケーブルを使うデータ転送技術)に拡張する仕組みだ。基本的にNVMeは、インタフェースにPCIeを使用することでSSDのパフォーマンスを最大限に引き出せる仕様になっている。
こうした一連の進化があり、SSDのパフォーマンスを維持しながら、データ削減を実行するストレージシステムが実現するようになった。
データ削減の実行によるメリット
データ削減時にSSDのパフォーマンスを維持しやすくなった背景には、データ削減の技術進化も貢献している。オールフラッシュストレージは、以下の機能を備えることが一般的だ。
- 可逆圧縮
- 圧縮したデータを完全に元の状態に復元
- インライン方式のデータ削減
- データを書き込む前にデータ削減の処理を実行
- グローバルデータ削減
- ストレージアレイ全体にわたってデータ削減を実行
ストレージベンダーはこうした機能を取り入れながら、ストレージのパフォーマンスを維持しつつデータ削減を実行できる仕組みの改良を続けている。
データ削減を実行することで、以下のようなメリットが期待できる。
- ストレージシステムの空き容量を確保
- 消費電力量の抑制
- ストレージ設置スペースの削減
- ストレージの設置や運用に掛かるコスト全体の抑制
オールフラッシュストレージでデータ削減を実行することで、メモリセルへのデータの書き込みと消去のプロセスを意味する「P/Eサイクル」の回数を減らし、SSDの寿命を延ばし、それが全体のコスト抑制につながる。データ転送の負荷を軽減する効果も見込める。これらの結果として、より多くのアプリケーションでSSDの利用を検討できるようになる。
データ削減は依然としてSSDのパフォーマンスに悪影響を与え得る機能ではある。だがSSDの採用を広げることで企業が得られるメリットと比べれば、その悪影響は重大なものではない。パフォーマンスが低下する影響を考慮しても、ほとんどの場合はデータ削減を実行する価値があると言える。
第4回と第5回は、データ削減機能を備えるオールフラッシュストレージ製品を紹介する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化 -
製品レビュー
[サイボウズ株式会社] 京セラコミュニケーションシステムに学ぶ、製造業の現場でAIを定着させる方法 -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] 元ヤンマーCIOの矢島氏が語るDXの本質:日本企業が陥った4つの落とし穴と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
4
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
年収が増えても幸せになれない 給与増でエンジニアが直面する「幸福度の壁」
-
7
便利機能が「裏口」に コンテナの安全を脅かす“監視の穴”とは
-
8
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
9
「野良Excelマクロ」に悩むSMBC日興証券が導き出した内製化の“現実解”
-
10
「Linux」の脆弱性を生むのは誰か? ベテラン開発者の意外なミス
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー