期限が迫る“2027年問題”
“SAPのクラウド化”は「短距離走ではなくマラソン」 導入企業が語る教訓とは?
SAP ERP Central Component の保守サポート終了が迫る中、企業は次の一手を模索している。Rise with SAPを活用してクラウド型ERPへの移行を進める企業はどのような所感を持っているのか。
クラウドサービス型ERP(統合業務)システムへの移行を促す「RISE with SAP」の導入は“いつ、どのように進めるか”であり、“するかどうか”ではない――英国およびアイルランドにおけるSAPユーザー企業団体UKISUG(UK and Ireland SAP User Group)議長のコナー・リオーダン氏はこう述べる。
ある大手企業幹部は、RISE with SAPの導入を「短距離走ではなくマラソン」と評する。その発言の真意は何か。
「短距離走ではなくマラソン」の真意
SAPは、ERP(統合業務)システム「SAP ERP Central Component」(以下、ECC)の保守サポートを2027年に終了する計画だ。ECCのユーザー企業は、ECCの次世代版「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)への移行を迫られている。
RISE with SAPは、SAP S/4HANAを含めたSAPのオンプレミス型ERPパッケージからクラウドサービス型ERP「SAP S/4HANA Cloud」への移行を支援し、顧客企業が選択したクラウドサービスで利用できるようにするサービス群だ。
2024年12月、UKISUGは年次カンファレンス「UKISUG Connect 2024」を開催した。カンファレンスに登壇した製薬会社Pfizerでカスタマーサービス部門の部長を務めるリオーダン氏は、RISE with SAPの導入を「短距離走ではなくマラソン」と例える。「急いでRISE with SAPを導入しようと焦る必要はない。導入は一朝一夕に終わることはない、長い挑戦だ」と説明する。
リオーダン氏は、 Pfizerで20年にわたりSAP製品の導入に携わり、ビジネスプロセス改善部門の一員でもある。同社は200を超える市場で約1万8500種類の製品を展開している。 SAP製品導入の目的は、それらの決算処理を一元管理できるシステムを構築するためだ。
PfizerはSAP ECCを約20年間使用してきた。オンプレミスを前提とするECCからSAP S/4HANAへの移行に際して、同社は過去5年分のデータのみを移行することを選択したという。
S/4HANA移行は“一世一代の大勝負”
製薬大手のAstraZenecaも、SAP製品のアップグレードに長期間取り組んできた。同社でERP変革技術担当部門のバイスプレジデントを務めるラッセル・スミス氏はこの取り組みを、「一世一代の大勝負」だと語る。この取り組みは6年間にわたり、ゼロからシステムを構築する「グリーンフィールド」型のアプローチを取った。「われわれは、1500件以上の業務プロセスを簡素化しようとしている。SAP製品に接続されたシステムは750個以上、インタフェースは3000個に及ぶ」という。
AstraZenecaでソリューションデザインとデリバリー部門の責任者を務めるエイド・ウェルシュ氏は、「2024年はグローバルレベルの設計とテストフェーズの準備が目標だ」と述べる。
ウェルシュ氏は、RISE with SAPの導入に付随するさまざまな取り組みを同時並行で進めることの重要性にも言及する。「われわれは同時並行してプロジェクトを進める方法を学んでいる最中だ。2025年にはより多くのプロジェクトを並行して進める計画だ」
データの取り扱いは、SAP製品のアップグレードにおいて企業が直面する課題の一つだ。「データに関しては、いつ始めても遅すぎることはない」とスミス氏は提言する。
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