RFPの回答作成をAIで効率化【後編】
Microsoftの営業に学ぶ「AI活用」 乗り越えた“3つの壁”とは?
MicrosoftはAIツールを導入したことで、営業活動の効率化を実現した。しかし、その導入に当たっては、幾つかの課題にも直面したという。
Microsoftは、営業活動の効率化を目指してAI(人工知能)ツールを活用している。その狙いは、「提案依頼書」(RFP)や「情報提供依頼書」(RFI)に対する回答作成をよりスムーズに実施することだ。RFPとRFIは、企業や政府などの発注者が製品やサービスを調達するために、受注先候補に送る文書を指す。製品やサービスの提供事業者は、RFPやRFIの内容を基に提案し、契約の獲得を目指す。
増え続けるRFPとRFIの管理負担を減らすために、Microsoftは2020年にAI機能を搭載したRFP管理ツール「Responsive」を導入。Responsiveの導入により業務効率化は順調に進んだが、チームは幾つかの課題に直面した。
Microsoftが直面した“3つの壁”とは?
併せて読みたいお薦め記事
連載:RFPの回答作成をAIで効率化
効率化に向けたAI活用術
1つ目の課題は、ガバナンス審査による導入遅延だ。Microsoftの厳格な内部ガバナンス審査の影響で、導入は当初の予定より数週間遅延したという。審査では、セキュリティ、「責任あるAI」(公平性や透明性、安全性の確保を考慮したAI技術)、アクセシビリティー、ソースコードの品質などが確認された。
2つ目が、自動化への過度な依存だ。Responsiveのユーザーは、AIが生成した初稿の正確性を十分に確認しない傾向があったという。提案管理者や営業担当者、専門家(SME)は、自動生成された内容を確認し、必要に応じて修正する必要がある。不正確な情報が提案書に記載されたまま提出されると、組織の業績に悪影響を及ぼしかねない。この課題を克服するために、人間が最終チェックを実施する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を徹底し、明確なガイドラインを策定する必要がある。
3つ目が、法的・専門的表現の維持が困難であることだ。AIツールは回答を生成する過程で、元のデータを要約したり、言い換えたりするため、法的文言や特有の表現が変更されるリスクがある。その結果、法的リスクや信用の低下といった悪影響を及ぼしかねない。
この問題に対処するため、ジョーダン氏のチームはMicrosoftの法務部門およびResponsiveの開発チームと連携し、「一言一句変更不可」の内容にはタグを付与し、AIが原文のまま回答する仕組みを導入したという。
これらの課題に直面したものの、ResponsiveのAI機能を導入したことで、提案チームや営業担当者の作業時間は大幅に削減されたという。成長する組織にとって、業務効率化は極めて重要だ。「競争優位性を確保し、少なくとも競合に後れを取らないための強力な武器となる」とジョーダン氏は話す。
ジョーダン氏によれば、AI導入を成功させる秘訣は「単なるツールの導入にとどまらない、組織全体での文化醸成」にあるという。失敗を恐れず、試行錯誤を歓迎する文化を築くことで、チーム内のイノベーションが促進されるからだ。
AI導入を目指す場合、リーダーに全てを任せるのではなく、現場のチームが主体的に関与することが不可欠だ。現場のチームこそが実務プロセスを熟知しており、日々の業務課題に最も精通しているからだ。
AI技術をどのように提案業務に組み込むか、現場のチームが上層部に伝えなければ、逆に指示を受ける立場になってしまう。「チームのかじは自分たちで取る方がいい」とジョーダン氏は話す。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー