Microsoftは営業活動の業務にAIツールを導入し、約9億円相当の生産性向上を実現した。導入したツールと、その活用方法とは。
Microsoftは提案活動の効率化を図るべく、AI(人工知能)ツールを活用している。その狙いは、増え続ける「提案依頼書」(RFP)や「情報提供依頼書」(RFI)に対する回答の作成をスムーズに実施することだ。
RFPおよびRFIは、企業や政府などの発注者が製品やサービスを調達するために、受注先の候補に送る文書を指す。製品やサービスの提供事業者はRFPやRFIの内容を踏まえて提案し、契約の獲得を目指す。
Microsoftは提案活動においてどのようなツールを活用したのか。その効果と併せて解説する。
従来Microsoftでは、提案書の作成を営業チームが全面的に担っていた。しかし、この業務負担により、営業担当者は顧客との対話や、人脈の構築に割ける時間が限られていたという。
この問題を解決するため、同社は中央集約化された提案チームを設立。このチームは、以下2つの役割を担うものだ。
Microsoftは2020年にRFP管理ツール「Responsive」を導入。RFP管理のワークフロー効率化と、グローバル規模での業務拡大を進めている。
Responsiveには、提案書関連のナレッジを一元管理するリポジトリや、プロジェクトコラボレーション機能などが含まれる。リポジトリには提案書に関する情報が蓄積されており、営業チームはこれを活用してRFPの回答作業を迅速化できる。
ジョーダン氏によると、このリポジトリは提案チームが5年間かけて約2万件の文書を収集、整理したもので、提案に関する質問や回答テンプレートなどを検索できる。Microsoftの数千人の営業担当者が活用しており、年間600万ドル(約9億円)相当の生産性向上が実現されたという。
Responsiveのプロジェクトコラボレーション機能を活用すれば、RFPを直接アップロードして、主題専門家(SME)に質問を割り当てて進捗状況を確認したり、正確性とコンプライアンスの審査をスムーズに実施したりできる。
MicrosoftのRFP管理プロセスは、Responsiveを活用することで大幅に改善された。2025年初頭には、AIによる提案書の自動作成機能を本格運用する計画だ。サンドボックス(テスト環境)で同ツールの生成AI機能を検証し、複雑な提案書の初稿を作成して従業員の時間を節約できたという。
Responsiveの生成AI機能は、ツール内のライブラリだけでなく、社内ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」(以下、SharePoint)内の技術文書といった外部データからも情報を取得し、提案書の初稿を自動生成できる。これにより、営業担当者や提案管理者は、時には数百もの質問を含むRFPをワンクリックで記入できるようになる。「ツールを活用することで、初稿作成に掛かる時間を93%短縮できた」とジョーダン氏は話す。
提案チームは、民間企業向け案件や公共セクター向け案件を想定したサンプルEFPでAI機能をテストし、良好な結果を得たという。2025年1月には正式に運用を開始し、同年春にはMicrosoftの全営業担当者への展開を計画している。
次回は、MicrosoftがResponsive導入の過程で直面した課題について解説する。
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