サーバだけではなく「Windows 11」などクライアントOSを搭載するPCでも「Hyper-V」による仮想化が可能だ。ただしPCでHyper-Vによる仮想マシンを動作させるには、幾つか乗り越えなければならない条件がある。
サーバ仮想化に使われるMicrosoftのハイパーバイザー「Hyper-V」は、「Windows 11」や「Windows 10」といったクライアントOS(デスクトップOS)を搭載するPCでも使える。仮想マシン(VM)を動作させることで、物理的なPCに依存しないことによるメリットが見込めるが、Hyper-VをクライアントPCで使うに当たっては、幾つか乗り越えなければならない条件がある。
仮想化は現代のコンピューティングにおける重要なツールだ。Hyper-Vはその一つとして、サーバとクライアントデバイスの両方において信頼を得ている。クライアントOS向けのHyper-Vは、Windows 11のエディション「Windows 11 Pro」および「Windows 11 Enterprise」の機能として使うことができる。
サーバ仮想化ではなく、PCの仮想化のためにHyper-Vを使う場合は、幾つか考慮すべき制限事項がある。
VMごとに約4GBのメモリを用意する必要がある。各VMには独自のOS、ドライバやエージェントなどが必要になり、アプリケーションの処理負荷がかかる。4GBのメモリはすぐに消費される。昨今のクライアントデバイスは16GB以上のメモリを搭載していることが珍しくないため、4GBが直接的な制約になることはあまりない。だが、クライアントデバイスのメモリでは、せいぜい数台のVMを動作させるのに十分な容量しかないということを理解することが重要だ。
VMは通常、1台につき最低1つのCPUコアを必要とする。クライアントデバイスのハイエンドのプロセッサは12〜14個のコアを搭載していることもあるが、4〜8個のコアを搭載しているのが一般的だ。利用できるVMの数もこのコア数によって制限される。そもそも、Hyper-Vを実行するPCには、十分な処理能力が必要であることを忘れてはならない。
コンピュータのパフォーマンスは、クロック速度、バスアーキテクチャ、チップセットの選択、その他の設計などの要因によっても制限される。プロセッサのコア数や、メモリの容量だけでVMのパフォーマンスが決まるわけではない。プロセッサ、メモリ、ストレージ、ディスプレイなどの間でやりとりされるデータが通過するバスによっても影響を受ける。同じ接続を全てのVMに同時に提供することはできず、時分割(時間を分けて順番に割り当てる方式)で共有する必要がある。システム上に存在するVMが多いほど、これらの制限の影響を受けることになる。
特定のハードウェアに依存して書かれたソフトウェアは、VM内でうまく実行されない可能性がある。例えば、一部のゲームや数学を多用するソフトウェアは、システムのGPU(グラフィックス処理ユニット)とスムーズにやりとりできない場合がある。
特定のCPUモデルなど、特別なハードウェアに直接アクセスするように書かれた古いレガシーアプリケーションも、VM内で深刻な問題に見舞われる可能性がある。加えて、レイテンシ(遅延)に敏感だったり、高精度のタイミングを要求したりするプログラム(オーディオやビデオ編集アプリなど)は、VM内で問題を起こす可能性がある。
次回は、本稿で紹介した制限を克服するためのポイントを解説する。
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