AI CoEに求められる本当の役割は
なぜ貴社のAI CoEは「ただの相談窓口」に成り下がるのか 成功率5%の壁
AI導入を成功に導く拠点として注目されるAIセンターオブエクセレンス(AI CoE)だが、設立すれば成果が出るとは限らない。実効性あるAI活用の鍵を握るのは、その“運用の質”にある。何をすればいいのか。
人工知能(AI)センターオブエクセレンス(CoE:組織横断的な取り組みを実施する拠点。以下、AI CoE)を設立すれば、自動的にAIプロジェクトが進み、成果が生みだされる訳ではない。
企業内におけるAI導入を成功に導くため、AI CoEは企業におけるAI戦略の中核的な構成要素となることを期待される。一方、生成AIの領域では、実に95%ものAIプロジェクトが失敗に終わるという調査結果もある(注)。
※注:マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)は、2025年8月に公開したレポート「The GenAI Divide: State of AI in Business 2025」において、52件の企業を対象とした詳細なインタビュー調査と、300件以上の事例分析を実施した。その結果、2025年7月時点で調査対象企業の生成AI関連支出は300億~400億ドルに達したものの、95%がそこから投資対効果(ROI)を得られていないと見積もった。
AIプロジェクトが投資に見合った効果を得る上で、AI CoEはどのような役割を果たせばいいのか。期待された成果を出せていないAI CoEは何が不足しているのか。
AI CoEが成果を出せる存在になれない原因は
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AI CoEを設立したら、AIプロジェクトが必ずうまく進展するとは限らない。AI CoEの機能不全を招く要因として以下がある。
1.戦略とビジネスがかみ合っていない
AI CoEは「企業でAIを使おう」という曖昧な目的で動かないようにする。企業の戦略や事業目標を踏まえて、AI投資を支援するための役割を担う。
そのためには、AIに投資する明確な目的を最初に定める必要がある。コスト削減や業務スピードの向上、新製品開発といった目的であっても、AI CoEはこれらの目標に沿って機能するようにする。
2.経営層のサポートが足りない
AI CoEがその役割を果たすには、経営層による支援が不可欠だ。経営陣は、AI CoEに対して十分な人材と予算を確保し、現場の関係者がそのリソースを積極的に活用できるよう促す必要がある。
支援が不十分であれば、AI CoEは名ばかりの取り組みに終わってしまう危険性がある。
3.従業員がAI CoEに関心を持たない
経営層がAI CoEを支援していても、現場レベルでの信頼や協力が得られなければ、AI CoEの効果は限定的なものとなる可能性がある。
現場の従業員が「AI CoEは、企業がAIに取り組んでいるように見せかけるだけの存在」と捉えていたり、「AIは自分の仕事を奪う脅威だ」と感じていたりする場合、組織としての関与度は低下する恐れがある。
4.官僚主義的なルールを従業員に強制する
AI CoEは、本来ならAI導入を加速させる存在だ。しかし、従業員に対して煩雑な手続きや承認プロセスの利用を求めればAIプロジェクトの進行を妨げる事態も起こり得る。
例えば、AI CoEから支援を受けるのに長い申請書を書き、順番待ちをしなければならないといった状態を従業員に強いるようでは、本来の目的とは逆の結果が発生する可能性がある。
5.AIプロジェクトの進化に追随できない
多くの企業において、AI投資は段階的に進む。最初は小規模な実験的プロジェクトから始まり、やがて重要なAIツールの本格運用へと拡大していく。
この変化に合わせて、必要とされるリソースや専門知識も変化する。実験段階ではインフラ要件はそれほど高くないが、AIを本番環境で運用する段階では、より高度なインフラとガバナンスが必要となる。
AI CoEもこの変化に適応し、進化し続ける必要がある。逆に、設立当初のままの体制で規模を拡大しなければ、機能不全に陥る恐れがある。
6.AI CoEとして見えている領域が狭過ぎる
AIの導入には、データサイエンス、IT、サイバーセキュリティ、コンプライアンス、ビジネス戦略など、複数領域にわたる支援が必要である。
AI CoEがこれらを網羅できていなければ、全社的なAI展開を成功に導くことはできない。特定の領域に偏った支援では、全体最適は見込めない。
7.AI CoEが過度に依存されている
AI CoEは、初期段階でのガイドラインや従業員の支援を提供する役割にとどまり、いずれは現場が自立できるように導く存在であることが求められる。
つまり、「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」存在だ。「AI CoEがいなければ何も進まない」といった体制を取る場合、企業の持続的なAI活用力は損なわれる。
従業員に頼られ、ビジネスに役立つAI CoEになるには
「成果を出せない」「存在意義が分からない」と言われてしまっているAI CoEをより良い存在へと導くには、以下に取り組むことを薦める。
1.AI CoEのミッションを明確にする
目標やミッションが曖昧なAI CoEに対しては、管理職や経営層の支援のもと、「何をすべきか」「どのように企業の戦略目標と結び付くか」を明確に定義することが必要だ。
必要であれば、AI CoEの目標に即した組織構造やツール、人員体制の見直しも検討する。
2.リソース配分を見直す
AI CoEが十分に機能していない理由が予算や人員不足にある場合がある。その場合は、リソース配分を見直すことで問題が解消することもある。
ただし、「金をかければよい」という話ではない。AI CoEの機能強化と成果の最大化につながるための、戦略的な配分と活用計画が不可欠だ。
3.従業員教育を徹底する
AI CoEの存在はあっても、従業員がその価値や活用方法を知らなければ意味がない。そこで、AI CoEの役割や利用方法について社内で周知徹底、教育活動を継続することが有用だ。
4.成果事例を社内で共有する
AI CoEを活用した成功事例を社内で積極的に共有することで、組織内の関心と信頼を高められる可能性がある。
ある部署がAI CoEの支援によりAIツールを導入した事例があれば、その内容と成果を社内報や社内イベントで紹介することで、他部門の利用促進につながる。
5.経営層と取締役会に定期的な報告を実施する
AI CoEの活動状況を取締役会へ定期的に報告する仕組みを整えることで、経営層の関心と支援を維持できる。この仕組みは、将来的に追加予算や人材配置を求める際の理解促進にもつながる。
6.支援対象を拡大する
AI CoEの支援領域がセキュリティやコンプライアンスなどに限定されている場合は、その支援範囲をビジネス戦略、データ分析、ITインフラなどにも広げる。
そのためには、新たな人材の確保や予算の追加が必要になることもあるが、支援領域の拡大によってAI CoEの価値は大きく高まる。
7.AI CoEの活動終了に向けた計画を策定する
AI CoEが事業の恒久的な一部になってしまうリスクを減らすために、同組織をどのように縮小し、最終的に終了させるかを明確にする計画を策定する。例えば、「AIプロジェクトの成功事例が一定数に達した段階で機能縮小する」といった具体的なマイルストーンを設けることで、AI活用の自立を促せる。
AI CoEで成功を勝ち取るためのロードマップ
AI CoEの成功事例をただ採用するだけでなく、企業独自のロードマップを作製することが、AI CoEを成功へ導く鍵だ。ロードマップには、以下の項目を含めるとよい。
| 番号 | 項目 | 詳細 |
|---|---|---|
| 1 | ミッションを定義する | ビジネス戦略と整合した明確かつ具体的なミッションを持つ。 |
| 2 | 必要なリソースを評価する | AI CoEがミッションを達成するために必要なリソースを特定する。 |
| 3 | リソースを割り当てる | 必要なリソースを確保する。このプロセスには技術調達や人材採用、予算配分などを伴う可能性があるため、事前の計画と一定の時間を要することがある。 |
| 4 | AI CoEを立ち上げ、公表する | リソースが整ったら、AI CoEを正式に稼働させる。立ち上げ時には、経営層や組織全体がその目的を理解し、どのように支援、活用すべきかを周知する広報活動を実施する。 |
| 5 | AI CoEの成果を監視、測定する | メトリクスやKPIを追跡しながら、AI CoEの有効性を評価する。例えば、支援しているAIプロジェクトの数、各プロジェクトへの関与期間、AI CoEが関わるAIプロジェクトが予定されたロードマップにどの程度沿って進んでいるかなどを指標とする。 |
| 6 | AI CoEを進化させる | 企業のAI戦略や導入が成熟していくに従い、AI CoEの規模、リソース、人員構成を適宜見直し、調整していく。 |
| 7 | AI CoEを終了させる | 企業が自律的にAIプロジェクトを立ち上げ、維持できるようになり、AI CoEの支援が不要となった時点で、段階的に組織を縮小させ、最終的に終了させる。 |
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