「生成AIで効率化」はもう古い?
エージェント型AIで成果を出す企業、出せない企業――その”否定できない差”とは
自律的な「エージェント型AI」の導入によって、企業の業務プロセスは飛躍的に改善する可能性がある。その一方で、基礎的な仕組みの不備によって、AIツールを実用化できない壁に直面している。成否を分ける差とは。
企業におけるAI(人工知能)技術の活用は、単なるコンテンツ生成から、自ら分析や推論をして自律的にタスクを処理する「エージェント型AI」へと進化を遂げている。現場の担当者がシステム間でデータを手入力する煩雑な作業は、複数のツールを自動で連携させるAIツールによって代替されつつある。
Googleのクラウド部門Google Cloudの委託によって、IDCが実施した調査の報告書「Asia Pacific Generative AI Adoption Study 2025」では、こうしたAIツール導入の動向が明らかになった。同調査は2025年初頭に実施され、アジア太平洋地域(APAC)を拠点とする950人のITおよびビジネスリーダー(うち日本は100人)を対象としている。
報告書によれば、すでに多くの企業がエージェント型AIの活用を計画しており、先行して取り組む企業は高い投資対効果(ROI)を達成している。一方で、導入を阻む大きな障壁として、社内のデータの質や連携の課題が浮き彫りになった。
企業がAIツールによる変革を成功させるには、どのような戦略が必要なのか。先行企業が実践する「自律化」への具体的なロードマップと、日本市場特有のトレンドを読み解く。
明暗を分ける“見えない壁”の正体
エージェント型AIは、人間が指示を与えるまで待機する従来の生成AIとは異なり、目標を与えられれば自ら計画を立てて行動する。製造業では、予測型モデルと生成AIを組み合わせることで、機械からのリアルタイムデータを基にダウンタイムを予測し、不足部品を自動で発注する仕組みが稼働している。通信業界では、トラフィックの急増を予測して自律的にネットワークを自己修復するエージェント型AIが登場している。このように、日常的な課題解決や定型業務をエージェント型AIが担うことで、従業員は戦略的な業務に集中できるようになる。
しかし、こうした自律的な仕組みを全社規模で展開し、高い成果を上げている「先行組」と、そうではない「後発組」には明確な違いがある。調査によると、先行組はAI関連の取り組みにおける成功率が81%に達し、平均3.5倍のROIを実現しているが、彼らが重視しているのはデータ管理システムと人材への投資だ。全ての業界において、最大の障壁となっているのが不十分なデータアクセスと低いデータ品質だ。信頼できるデータがなければエージェント型AIは正常に作動しないにもかかわらず、一部の業界では最大51%の企業がこの課題に直面している。そのため先行企業は、AI関連予算の大部分をデータエンジニアリングやITインフラに振り向けている。
AIツールを運用するシステム構成の選択も明暗を分ける。先行企業は、既存の企業システムとシームレスに連携し、モデルからツール、ガバナンスを一貫して提供できるフルスタックのAIベンダーをパートナーに選ぶ傾向が強い。システムの分断を避け、一元管理できるインフラを整備することが、AIツールの拡張性を担保する決定的な要因となる。
日本市場の動向を見ると、実務的で慎重なアプローチが特徴として浮かび上がる。日本企業の42%が2026年初頭までにエージェント型AIの導入を計画しているが、インフラやモデルの刷新よりもビジネスアプリケーションへの適用を優先している。具体的には、生産性の向上(67%)や顧客支援の改善(66%)といった、従業員の負荷軽減や顧客体験向上に直結する領域への期待が高い。まずは業務部門で具体的な成果を実感した上で、次のステップとしてデータインフラの整備に投資を広げていくという堅実なロードマップを描いている。
AI技術はもはや未来の技術ではなく、企業の競争力を左右する中核的な能力になりつつある。経営層には、AIツールを単なる効率化の手法ではなく、企業価値を創出する自律的なパートナーとして位置付ける視点が求められる。今後は、正確で信頼性の高いデータを集約する仕組みを構築し、人間とエージェント型AIが協調するためのスキルを高め、適切なシステムと連携できた企業が、その真価を引き出せるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
Anthropicが明かす AIは入力データを「どこまで覚えているのか」
-
10
HDDではもう限界? AIのGPU待機時間を解消する「大容量SSD」の条件
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー