「生成AI」後発組でも効果は十分 ROIから見る“驚きの導入効果”とはもはや企業の必須ツール?

「ROIが見通せない」という理由で生成AIの活用に後れを取っていた企業でも、その効果を享受できている実態が判明した。生成AIのROIはどの程度なのか。

2024年11月14日 22時00分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

関連キーワード

人工知能


 テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」を業務に活用する動きが広がりつつある。一方で、予算の獲得や経営層の理解を得るのに時間がかかるために、生成AIツールを活用できていない企業がある。

 調査会社IDCが2024年11月に公開した調査レポートは、そうした企業にとって朗報になる可能性がある。同レポートは、生成AIの活用に積極的に取り組む企業と、活用に時間がかかっている企業において、AI投資に対するROI(投資対効果)を明らかにするものだ。生成AIの活用に後れを取る企業にも希望を与える、生成AI活用の実態とは。

出遅れてもこれだけ役立つ生成AI

会員登録(無料)が必要です

 IDCは回答結果を踏まえて、生成AIの活用に関する習熟度に基づいて回答者を3つのカテゴリーに分類した。

  • リーダー
    • 企業全体のAI戦略をビジネス目標と一致させ、革新的なビジネスモデルを構築して継続的に事業価値を生み出している企業
  • ラガード
    • AI技術への投資や活用に後れを取っている企業
  • ニュートラル
    • リーダーとラガードの間に位置する程度にAI技術への投資や活用を実施している企業

 調査では、回答者の43%が「生成AIを使って分析やタスクの完了にかかる時間を短縮できている」と答えた。回答者は生成AIへの投資1ドルに対して、平均370%のROIを達成したという。

 レポートによると、リーダーは平均1030%のROIを実現しており、これはラガードよりも高い数字だ。生成AIを導入するまでにかかった期間についても、「3カ月以内に導入した」と答えたのはリーダーの29%、ラガードの6%であり、導入スピードに顕著な差が見られる。

 ただしラガードが生成AIを活用できていないわけではない。ラガードも、生成AIに関する投資において290%のROIを実現している。

 調査レポートは、企業が独自のAIツールを開発する動きにも触れている。回答者の43%が「Microsoft Copilot」といった既存のAIツールを使用していると答えた。一方、特定のビジネスニーズや要件に合わせて一からAIツールを開発していると答えた回答者は19%、今後2年以内に特定のビジネスニーズや要件に合わせて一からAIツールを開発すると答えた回答者は36%だった。

 調査レポートは、調査会社IDCがMicrosoftの委託で実施し、世界各地のビジネスリーダーと、AI技術に関する意思決定権を持つ労働者約4000人が回答した。

生成AIで顧客の業務時間を4分の3に減らしたMoody's

 調査レポートは、生成AIを使って業務時間を削減した債券信用格付け会社Moody's Investors Service(以下、Moody's)の事例を紹介している。同社の最高製品責任者(CPO:Chief Product Officer)ニック・リード氏によると、Moody'sはAIモデルが利用可能なMicrosoftのクラウドサービス「Azure OpenAI Service」を活用して、市場データの参照や分析を容易にする「データの民主化」を推進している。

 そうした取り組みの一例が、Azure OpenAI Serviceを活用したデータ分析ツール「Moody's Research Assistant」だ。Moody's Research Assistantは生成AIを活用して信用調査データや分析結果から洞察を生成できるようにすることで、金融アナリストの業務時間を最大25%削減しているという。

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

新着ホワイトペーパー

技術文書・技術解説 サイオステクノロジー株式会社

平気でうそをつくLLM、正直者へと変身させるRAGアプリケーションの作成法とは

LLMはビジネスに計り知れない恩恵をもたらす可能性を秘めているが、問題点の1つは、平気でうそをつくこと(ハルシネーション)だ。そこで、この問題を解決するために役立つ、RAGアプリケーションの作成方法を紹介する。

市場調査・トレンド ServiceNow Japan合同会社

AIを利用して組織全体の生産性を向上させる方法とは?

生成AIの登場によって、AIを業務活用しようとする企業が増えてきている。しかし、AIをどのような形で導入すればよいのか悩んでいる企業も少なくない。本資料では組織全体にAIと生成AIを組み込む方法について解説する。

技術文書・技術解説 Asana Japan株式会社

AI導入の現在地:知っておくべき6つのメリットと「2026年問題」とは?

労働力不足の解消や生産性の向上など、多くのメリットが見込める、職場へのAI導入。一方、LLM(大規模言語モデル)の学習データが枯渇する「2026年問題」が懸念されている点には注意が必要だ。それによる影響と、企業が取るべき対策とは?

市場調査・トレンド Asana Japan株式会社

AI活用がカギ、最新調査で読み解く日本企業がイノベーションを推進する方法

現代のビジネス環境下で企業が成長を続けるには「イノベーション」の推進が不可欠だ。最新調査で明らかになった日本企業におけるイノベーションの現状を基に、イノベーション推進の鍵を握るAI活用やベロシティ向上の重要性を解説する。

製品資料 SB C&S株式会社

ワンランク上の「AI+PDF」活用、生産性・効率を飛躍的に向上させる秘訣

今やビジネスを中心に、多様な場面でやりとりされているPDF。このPDFをより便利にするためには、文書の能動的な活用がポイントとなる。本資料では、アドビの生成AIを用いながら生産性や効率を飛躍的に向上させる活用方法を紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...