Snowflake事例が示す脅威と現実解
自律型AIが脆弱性を発見・悪用 情シスに問われる「対処すべき1.5%」の選別
自律型AIが脆弱性の発見から侵入まで人手を介さず完結させる時代が到来した。膨大な警告に追われる情シスが、悪用される「わずか1.5%の重大リスク」を見極めて防衛体制を再構築する現実解を解き明かす。
AIエージェントがソフトウェアの脆弱性を自律的に発見し、悪用(エクスプロイト)する事例が登場している。情シスを始めとするセキュリティ担当者の間では、従来のアプリケーションセキュリティ手法で追随できるのかという疑問が生じている。さらに重要なのは、AIが発見した脆弱性のうち、どれが直ちに対処すべきものかを判断することだ。
注目を集めた直近の事例では、WizのAI搭載ペネトレーションテストツール「Red Agent」が、Snowflakeの公開リポジトリで従来のセキュリティチェックが見落としていたGitHub Actionsのワークフロー脆弱性を発見した。Red Agentは人間の介入を一切受けずにエクスプロイトコードを作成し、Snowflakeの社内Jiraシステムへのアクセス権を獲得した。
Wizがこの脆弱性を報告した後、Snowflakeはすぐに修正を実施し、不正アクセスを受けた形跡はないと説明した。
Wizで脅威エクスポージャー部門の責任者を務めるガル・ナグリ氏は、「AIコーディングエージェントが関与するワークフロー内でも重大な脆弱性が混入、承認される可能性があり、確立された自動セキュリティチェックをすり抜けることがある」とブログで指摘している。
本記事では、悪用される「わずか1.5%の重大リスク」を見極めて防衛体制を再構築する現実解を解き明かす。
今回のインシデントが際立つ理由
AIが脆弱性を発見したのはこれが初めてではない。しかし、Red Agentが脆弱性の発見から悪用に至るまでをほぼ自律的に実行できた点は大きな意義がある。
脆弱性管理プラットフォームを手掛けるRoot EvidenceのCEO、ジェレマイア・グロスマン氏はTechTargetに、「今回の事例が唯一無二で、状況を一変させるものだとは言えない。どちらかといえば、過去に起きたことが一過性のものではなかったと証明された形だ。こうした事象は今後、より一般的になっていくだろう」と語った。
グロスマン氏によると、通常は人間が主導しなければならない攻撃の複数段階を、AIエージェントが自ら進められた点が際立っているという。
「人間が通常行うさまざまな手法を、ほとんど手助けを受けることなく自律的に連携させることができたようだ。これは斬新で興味深い」(グロスマン氏)
優先順位付けの課題
この動きは情シスに新たな課題をもたらす可能性がある。AIがこれまで以上に多くの脆弱性を発見するようになると、セキュリティチームはどの脆弱性に優先して対処すべきかの判断に追われ、身動きが取れなくなる恐れがある。
専門家の中には、その解決策として脆弱性を発見した技術そのものに立ち返るべきだとする声もある。
サイバーセキュリティやコンプライアンス、マネージドセキュリティサービスを提供するCISO GlobalでCISOを務めるゲイリー・パーキンス氏は、「単により多くの発見事項を生み出すのではなく、優先順位付けのためにAIを活用することを企業に推奨したい」と語る。「AIシステムが『1万件の脆弱性があるが、最重要資産の侵害につながる経路は12件のみである』と提示してくれれば、セキュリティチームに1万項目の脆弱性レポートを渡すよりもはるかに有用だ」(パーキンス氏)
もちろん、AIエージェントに脆弱性テストの責任をより多く負わせることには、新たなリスクを生み出す化の姓があると懸念するセキュリティリーダーからの警戒感もある。
クラウドネイティブセキュリティベンダーZscalerでチーフエバンジェリストを務めるクロード・マンディ氏は、AIエージェントに大きな自律性を与える前に、セキュリティチームはリスクを封じ込める必要があると述べる。
「残念ながら、大半の企業は基盤が整っていない。侵害された際に容易に再構築できるような隔離された本番環境を備えていない」とマンディ氏は指摘する。「自律型テストを支える適切なアーキテクチャがなければ、エージェントを特定の環境や権限、許可されたアクションに制限する方法を確立する前に実弾演習を実施することになり、それに伴うあらゆるリスクを背負うことになる」(マンディ氏)
そうした予防策を講じたとしても、AIの脆弱性発見能力が向上したからといって、攻撃者が発見された全ての欠陥を悪用するとは限らない。グロスマン氏は、脆弱性の発見が早まったからといって、攻撃者がその欠陥をより迅速に悪用するようになると決めつけるべきではないとも指摘する。
「攻撃者が悪用しているのは、既知の脆弱性(CVE)全体の1.5%未満にすぎない」とグロスマン氏は語る。「ハッキングが可能だからといって必ずしも攻撃されるわけではない。攻撃者にもビジネスモデルがある」(グロスマン氏)
従って、CISOやセキュリティチームは、単により多くの脆弱性を見つけ出すことに過度にとらわれるのではなく、現実的な脅威となる脆弱性に集中する必要がある。
重要な1.5%の脆弱性を特定することは容易ではない。グロスマン氏は、企業が探索しなければならない対象が「はるかに巨大な干し草の山」になっていると付け加えた。
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