COBOL人材の不足からどう抜け出した?
オフコンから脱却 アイリスオーヤマが帳票開発者を4倍に増やしたレガシー刷新
アイリスオーヤマは、約40年稼働したCOBOLベースの受注・出荷システムを刷新し、新たな帳票基盤を導入した。同社は、帳票開発に携われる人員を従来の約4倍に増やしたという。何をしたのか。
長年使い続けてきた基幹システムを刷新したくても、レガシーな言語を扱える人材が不足している企業がある。新しいシステムへ置き換えるだけではなく、特定の担当者に依存した開発体制そのものをどう変えるかも、レガシー脱却の重要な課題だ。
生活用品や家電、食品などを手掛けるアイリスオーヤマも、約40年にわたって稼働してきた受注・出荷システムで同様の問題を抱えていた。同システムはオフコン基盤でCOBOLを使って構築されており、社内でCOBOLを扱える技術者は限られていた。帳票開発にも専門知識が必要だったため、新規取引先の増加に開発が追い付かない状況が生じていた。
そこでアイリスオーヤマは、受注・出荷システムをAWS上のJavaベースのシステムへ刷新するとともに、帳票基盤としてウイングアーク1stの「SVF」を導入した。その結果、帳票開発に携われる人員は従来の約4倍に増えたという。COBOL人材不足を抱えていた同社は、どのように開発体制を変えたのか。
「開発できる人が少ない」が事業拡大の制約に
アイリスオーヤマでは、旧システムで帳票を開発する際、コマンドを使って印字位置を指定する必要があり、帳票を作成するにも専門的な知識が求められた。そのため開発を担当できる人材は少数に限られていた。
アイリスオーヤマは、問屋を介さず量販店やスーパーマーケットなどと直接取引するケースが多い。新たな取引先と取引を始めるには、EDI(電子データ交換)の仕組みに加えて、取引先ごとに指定されたラベルや帳票を準備する必要がある。
しかしCOBOL環境では対応できる担当者が限られていたため、帳票開発案件が毎月数十件滞留していたという。その結果、新たな取引を始めたくても帳票開発が間に合わず、ビジネス機会を逃すケースが生じていた。
全てを内製せず「帳票基盤」は製品を採用
そこでアイリスオーヤマは2022年、受注・出荷システムのオープン化プロジェクトを開始した。
同社はほぼ全てのシステムを内製しており、新しい受注・出荷システムもAWS上にスクラッチで構築した。一方で、帳票基盤については自社開発せず、市販製品を利用する判断をした。
その理由の1つが「スプール機能」だった。帳票の印刷データを一時的に蓄積し、大量の印刷処理を管理する機能である。同社では国内11工場で1日約10万枚の帳票を印刷するため、大量印刷を安定して処理できる仕組みが欠かせない。
アイリスオーヤマ システム部 部長の阿部弥孝氏によると、従来のオフコンが備えていたスプール機能を新しいオープン環境で自社実装し、運用するのは難しかった。そのためスプール機能を備えた外部製品を検討したという。
そこで同社は、オフコンと同等のスプール管理機能を備えた帳票製品を比較し、PoC(概念実証)を実施した。操作性やプリンタへの対応力、印刷速度などを検証した結果、SVFを採用した。
この選択は、単に帳票基盤を置き換えるだけではなく、COBOLやコマンド操作に詳しい一部の担当者に依存していた開発体制を見直すことにもつながった。
「帳票を作れる人」を増やす
旧環境の帳票基盤では、帳票を開発するにはコマンドを使って文字やバーコードなどの印字位置を指定する必要があった。これに対してSVFの帳票設計ツール「SVFX-Designer」はGUIで操作でき、画面上で完成形を確認しながら帳票を作成できる。
帳票開発チームのリーダーを務めたアイリスオーヤマ システム部の小田暖人氏は、GUI化によってシステム開発メンバーだけでなく、開発担当以外のメンバーにも帳票作成を手伝ってもらえるようになったと説明している。
その結果、従来は少数しかいなかった帳票開発の担当者を約4倍に増やすことができた。帳票開発の生産性も向上し、滞留していた案件の解消につながった。
レガシー刷新で「情シスに頼る業務」も減らす
刷新による変化は開発だけではない。
例えば従来、過去の帳票を再出力する場合、現場スタッフがシステム部に連絡し、担当者がデータベースから対象データを取り出して印刷する必要があった。
新システムでは、現場スタッフ自身がスプールから必要な帳票を選択し、再出力できる。工場ごとに出荷指示書やラベルなどを分類して提供することで、現場で操作できるようにした。
レガシー脱却というと、古いハードウェアやプログラミング言語を新しい技術に置き換えることに目が向きやすい。しかしアイリスオーヤマの事例から見えてくるのは、「誰がそのシステムを開発、運用できるのか」という視点の重要性だ。
特定の技術者しか変更できない仕組みを残せば、新しい技術基盤へ移行しても、別の形で属人化が残る可能性がある。開発できる人を増やし、現場でできる作業を現場に移す――。レガシー刷新では、システムだけでなく「仕事の担い手」を再設計することも重要になりそうだ。
本稿は、ウイングアーク1stが2026年8月27日に公開したアイリスオーヤマが新受注・出荷システムの帳票基盤にSVFを導入、国内11工場で1日10万枚、500種類の帳票を刷新、アイリスオーヤマが挑む、レガシー脱却による「帳票開発の民主化」 1日10万枚・500種類の帳票印刷を支えるSVFを基に作成しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
7
テレワークやBYODでリスクが拡大、デバイスの多様化を弱点としない管理方法とは
-
8
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
-
9
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
10
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー