なぜパッチ適用は間に合わないのか
システム障害の損失は1時間30億円 手作業の復旧が迎えた限界
システム障害やサイバー攻撃による業務停止被害が深刻化している。攻撃のスピードが増す中、復旧を人手に頼る従来の手法では被害拡大を防ぎ切れない。自律的な修復機能の導入を阻んでいる課題とは何か。
エンドポイントやシステムの停止に伴う業務中断は、企業の収益機会を奪い去る。セキュリティベンダーAbsolute Softwareは2026年7月、年間売上高5000万ドル以上の米国または英国企業に務める最高情報セキュリティ責任者(CISO)1000人を対象に、AI時代におけるサイバーレジリエンスに関する調査を実施した。その結果、エンドポイントが動作不能に陥った際のダウンタイム損失は1時間当たり平均1900万ドル(約30億円)に達することが判明した。
調査結果からは、企業はサイバー攻撃やシステム障害への備えを進めているものの、従来の手作業に依存した復旧手順では被害の拡大を抑え切れない実態が浮き彫りになっている。インシデント対処の自動化を模索し始めている一方で、運用領域における全面的な自動化には依然として障壁が存在する。何が妨げになっているのか。
手作業による復旧の構造的限界
調査によると、攻撃者はAIツールを悪用して脆弱(ぜいじゃく)性を特定し、攻撃スピードを急速に加速させている。2025年8月~2026年7月の12カ月間で、AIツールによる脆弱性の悪用を経験した企業は41%に上り、回答者の58%は「攻撃者がパッチ適用プロセスを上回るスピードで脆弱性を悪用している」と回答した。
これに対して企業の対処は追い付いていない。重大な脆弱性に対するパッチ適用を機器全体に完了するまで6~10日を要する企業は34%、11〜20日を要する企業は33%に達する。その結果、セキュリティリーダーは、常にパッチ非準拠である自社のエンドポイントの割合を平均で約3分の1程度あると見積もっている。攻撃のスピードが分や秒の単位に短縮される中、日単位を前提とした従来の手作業プロセスは構造的な限界を迎えている。
こうした構造的ギャップを埋める手段として、AI技術による自動対処をサイバーレジリエンスに組み込んだ運用モデル「自立型サイバーレジリエンス」がある。回答者の88%が「自律的な復旧機能があれば、ダウンタイムによって生じる損失を大幅に削減できる」と評価した。
しかし、自社システムを「広く自律化が進んでいる」と評価した企業は全体の4%にとどまる。83%の企業が自律型ツールの実証実験や部分導入を進めているものの、運用の成熟度は低い。
本番システムに自律型機能を導入する際の阻害要因として最も多く挙げられたのは「信頼」で38%だった。これは「システムの連携の難しさ」(33%)や「費用不足」(18%)を抑えて最大の課題となっている。IT管理者は、制御不能な自動処理が誤動作を起こし、予期しないシステム障害を引き起こすリスクを懸念している。
先進AIツールに対する警戒感と心理的負荷
自律化への足踏みは、Anthropicの「Claude Mythos」などの最先端AIモデルの取り扱いにも表れている。これらのツールについて、自社での利用検討は「リスクが大き過ぎる」と回答したリーダーは43%に達し、「そう思わない」(32%)を上回った。仕組みの解明まで社内利用を「禁止すべきだ」とする意見も41%(「そう思わない」は30%)となっている。
技術の進化速度とガバナンスの不整合は、現場担当者の負担にも影響を与えている。先進的なAIツールの登場によって、50%のセキュリティリーダーが「離職や業界からの退出を検討した」と回答した。人手に頼る運用体制のままでは、インシデント対処能力だけではなく企業の継続性自体が脅かされている。
制御可能な「自動化」への移行が解決の軸
エンドポイントのダウンタイムを最小化し、事業の継続性を確保するには、人とシステムの役割分担を再設計することが不可欠だ。
従来の脅威検出と遮断に焦点を当てた「事前防御」のアプローチから、侵害や障害の発生を前提とし、機器を自動で正常な状態に復元する「自動復旧」のアプローチへの転換が求められる。OSの再構築や設定の初期化、定期パッチの適用といった現場の手作業を自律システムに任せ、人間はポリシー策定や例外処理の判断に専念する。この役割分担の最適化こそが、1時間当たり約30億円に及ぶ損失を抑え込む現実解になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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