AI導入が裏目に出るのはなぜか
AIエージェント導入が82%増 Salesforce調査で判明した“急拡大”の代償
手作業に依存していた業務プロセスを自動化し、従業員が付加価値の高い業務に専念できる業務環境を構築する手段として、自律的にタスクを実行するAIエージェントに期待が寄せられている。
セールスフォース・ジャパンは、国内外のIT部門管理職を対象に実施した「2026年版 接続性ベンチマークレポート」の日本語版を発表した。本調査は2025年10月から11月にかけて、従業員1000人以上の企業に属する世界中のITリーダー1050人(うち日本100人)の回答を集計したものだ。
調査結果からは、日本企業においても人とAIエージェントが協働する体制への移行が急速に進んでおり、今後さらに導入が加速する見通しが示された。すでに71%の企業が大部分の部門でAIエージェントを導入している状態だ。しかし、部門ごとに導入が先行した結果、稼働中のAIエージェントの多くが既存の社内システムから孤立した状態(サイロ化)で運用されているという課題に直面している実態も明らかになった。
企業が個別の自動化にとどまらず、組織全体の価値を引き出すためには、どのようなアプローチが求められるのか。
現場の期待と乱立するAIエージェントの実態
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AI活用におけるサイロ化の課題
調査データを踏まえて、Salesforceは日本企業で稼働しているAIエージェント数の平均が、調査時点の11から、2027年までに82%増加すると予測している。すでに71%の日本企業が大部分の部門でAIエージェントを採用しており、本格的な普及期に入っていることがうかがえる。
AIエージェントは実験的な試みから、実際の業務効率を引き上げる推進力へと位置付けが変化している。日本のITリーダーの91%が、AIエージェントによって従業員の業務体験が改善されると期待を寄せ、95%が開発担当者をより付加価値の高い業務に専念させることが可能になると考えている。
一方、導入現場では提供形態の混在が進んでいる。稼働中のAIエージェントの内訳は、SaaS(Sotfware as a Service)として提供される既製のAIエージェントが37%、企業向けシステムに組み込まれたものが36%、社内で独自開発されたものが27%となっている。出どころが異なる自律型プログラムを相互に連携させるため、AIエージェント同士をつなぐ「Agent Network Protocol」(ANP)や、AIエージェントと外部ソースをつなぐ「Model Context Protocol」(MCP)などの新たな通信規格の採用も進んでいるが、規格の標準化や運用ルールの整備はまだ途上だ。
アプリケーションの孤立とシャドーAIのリスク
AIエージェントの適用範囲の拡大は、既存のITインフラが抱える構造的な弱点を浮き彫りにしている。日本企業が業務で利用するアプリケーション数は、2024年調査の721から906へと大幅に増加した。しかし、これらが相互にデータ連携できている割合はわずか29%にとどまる。
このような連携不足の状態でAIエージェントを乱立させれば、システムはますます複雑な状況に陥りかねない。調査では、稼働中のAIエージェントの51%がマルチエージェントシステムの一部としてではなく、他のシステムから孤立したサイロ状態で運用されていた。ITリーダーの76%が、AIエージェントの乱立は価値を生み出す以上に運用上の複雑さを増大させると懸念を示している。
AI主導の業務変革を妨げる最大の障壁として、企業は主にデータの一元化とセキュリティ体制の不備を挙げている。社内の専門知識不足(56%)に加え、リスク管理や法令順守への懸念(54%)、孤立したデータとアプリケーションの連携(43%)が現場の足かせになっている。
とりわけ深刻なのはデータガバナンスの欠如だ。各部門が個別にAIツールを導入した結果、半数以上(53%)がアプリケーションを横断するデータガバナンスを最大の課題として挙げている。調査時点で、社内システムと接続するためのAPIのうち、平均31%が管理部門の統制範囲外で稼働していると推定される。AIエージェントに対する正式な監督体制を整備している企業は46%に過ぎず、監視の目が行き届かないシャドーAIのリスクが潜在している。調査対象の97%がデータの利用に当たって何らかの障壁を経験しており、老朽化したITアーキテクチャが変革の妨げとなっていることが読み取れる。
個別最適からAPI主導アーキテクチャへの設計思想の転換
こうした課題に対処するため、ITリーダーの関心は個別の自動化から、システム全体のオーケストレーション(連携体制の構築)へと移行している。従来の手作業によるデータ抽出や、個別のシステム間を都度結び付ける密結合な手法は、開発工数がかさむ上に仕様変更に弱く、技術的負債になりやすいという設計上の制約があった。
新たなアプローチとして注目されているのが、APIをシステムの「結合組織」として用いるアーキテクチャだ。日本のITリーダーの92%が、AIエージェントを成功させる鍵は全社システムにまたがるシームレスなデータ連携にあると回答している。88%のITリーダーが、アプリケーション、データ、AIを接続するためにAPIを構成要素とする仕組みが必要であると認識している。
この設計思想では、孤立して稼働するAIエージェントを共通の通信基盤上に統合する。API経由でアクセス権限やデータの流れを制御することで、異なるシステム間でも安全にコンテキスト(文脈や背景情報)を共有できるようになる。これによって、データの品質を確保しながら、AIエージェント群が連携して一貫性のあるタスクを処理することが可能になる。
IT部門の役割変化と今後の展望
AIエージェントの導入が本格化する中で、企業は単なる実証実験の段階を脱し、複数のAIエージェントが協働する状態に移行しつつある。しかし、確立された統制フレームワークを持たずにAIエージェントを運用することは、大きなセキュリティやコンプライアンス上のリスクを招く。
今後の企業においては、単一のAIエージェントが全ての業務を完結させるのではなく、専門化された複数のAIエージェントが協力してプロセスを実行する体制が主流となる。そのためには、各エージェントが参照するデータの正当性を保証し、権限のないデータへのアクセスを遮断する仕組みが不可欠だ。
マルチAIエージェント時代において、IT部門に求められる役割は劇的に変化している。サイロ化された個々のアプリケーションを保守・管理する業務から、複数のAIシステムが安全かつ安定して機能するシステム設計に重心を移す必要がある。APIを介したデータガバナンスとセキュリティ体制を整備することが、企業の競争力を左右する最大の判断軸となる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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