プロンプト作成の次はこれ
AIエージェントはどう作る? まず押さえておきたい重要技術
IBMは、AIエージェントの仕組みを理解する上で重要な5つの用語/技術を紹介した。LLMを中核に、指示や専門知識、外部システムとの接続、エージェント間連携、処理の分担をどう組み合わせるのかを解説している。
「AIエージェントを業務に導入しよう」という声がある。しかし、AIエージェントはどうすれば作れるのか。何から始めればいいのか。IBMのマーティン・キーン氏(マネジャー兼IBMテクニカルトレーニングコンテンツクリエイター)は、AIエージェントの仕組みを理解する上で押さえておきたい5つの用語を紹介している。
LLMだけでは「AIエージェント」にならない
AIエージェントの中核には大規模言語モデル(LLM)がある。LLMは文章を生成したり、与えられた情報を基に推論したりする役割を担う。
ただし、LLMだけでAIエージェントが成立するわけではない。AIにどのように振る舞うべきかを指示し、必要な知識を与え、外部のツールやシステムと接続するといった周辺の仕組みが必要になる。
キーン氏は、LLM単体について、基本的には「対話相手」として機能するものだと説明する。その上で、LLMの周囲に指示や外部連携の仕組みを組み合わせることで、タスクを計画、実行するAIエージェントになるという。
こうしたAIエージェントの仕組みを理解する上で重要になるのが、「AGENTS.md」「Agent Skills」「MCP」「A2A」「Subagents」の5つだ。
1.AGENTS.md――プロジェクト固有の「作業ルール」を伝える
1つ目は「AGENTS.md」だ。AGENTS.mdは、AIエージェントにプロジェクト固有の作業ルールを伝えるためのMarkdown形式のテキストファイルだ。プロジェクトのルートディレクトリなどに配置し、AIエージェントがそのプロジェクトで作業を開始するときに内容を読み込む。
記載できるのは、テストで実行すべきコマンドや、コードベースで採用しているコーディング規約、セットアップ方法、プルリクエストのタイトル形式といった情報だ。
キーン氏はAGENTS.mdについて、人間向けのREADMEに近いものの、「AIエージェント向けに書かれたREADME」と考えると分かりやすいと説明する。AIエージェントはAGENTS.mdを参照し、作業内容に応じて記載されたルールやコマンドを適用する。
AGENTS.mdは階層化することもできる。例えば、プロジェクト全体に適用するAGENTS.mdをルートに配置し、サブプロジェクトごとに別のAGENTS.mdを置く構成だ。
キーン氏によると、作業対象に近い場所にあるAGENTS.mdの指示を優先させることで、プロジェクト内の領域ごとに異なるルールを適用できるという。
なお、全てのAIエージェントが「AGENTS.md」というファイル名を使うわけではない。キーン氏は一例としてClaudeを挙げ、同様の目的で「CLAUDE.md」が使われていると説明した。
2.Agent Skills――必要なときだけ専門知識を読み込む
2つ目は「Agent Skills」だ。プロジェクト共通のルールとは別に、AIエージェントには特定のタスクを実行するときだけ必要になる知識もある。
例えば、プレゼンテーション資料を作るための詳細な手順をAIエージェントに与えていたとしても、プログラムを修正する際にその情報まで読み込む必要はない。無関係な情報を常に読み込めば、LLMが一度に扱える情報量であるコンテキストウィンドウを圧迫する。
そこで利用するのがAgent Skillsだ。特定の種類のタスクを実行するための手順やリソースをまとめ、必要になった場合だけAIエージェントから呼び出せるようにする。
キーン氏は、Agent Skillsのフォルダには「SKILL.md」と、タスクの実行に必要なスクリプトやリソースなどを配置すると説明する。SKILL.mdにはSkillの説明などを記載し、どのような依頼を受けたときに利用するのかをAIエージェントが判断できるようにする。
ユーザーの依頼内容がSkillの用途に一致すれば、AIエージェントはそのSkillを読み込む。一致しなければ読み込まない。
キーン氏はAGENTS.mdとAgent Skillsの違いについて、前者は「特定のプロジェクトでどのように作業するか」を示し、後者は「特定の種類のタスクをどのように実行するか」を示すものだと整理している。
3.MCP――AIエージェントと外部システムをつなぐ
3つ目は「MCP」(Model Context Protocol)だ。AIエージェントが業務を遂行するには、APIやデータベース、開発ツール、SaaSなど、AIエージェントの外にあるシステムへアクセスする必要がある。
ここで問題になるのが接続方法だ。外部システムごとに異なるインタフェースを持つため、共通の仕組みがなければ、AIエージェントと外部システムの組み合わせごとに接続機能を開発する必要がある。
キーン氏は、これを解決する仕組みとしてMCPを紹介する。MCPはAIアプリケーションとツール、データソース、ワークフローを接続するためのオープンプロトコルだ。
MCPでは「MCPサーバ」が外部のツールやデータソースを共通のインタフェースで扱えるようにする。MCPに対応したAIエージェントであれば、そのインタフェースを介して外部システムを利用できる。
キーン氏は例として、AIエージェントがNotion Labsの情報共有ツール「Notion」にアクセスするケースを挙げる。AIエージェントはMCPを使ってMCPサーバと通信し、Notion固有のAPIとのやりとりはMCPサーバ側が担うという構成だ。
つまりMCPは、AIエージェントがさまざまなツールやデータにアクセスするための「共通の接続方法」と捉えることができる。
4.A2A――AIエージェント同士を連携させる
4つ目は「A2A」(Agent2Agent)だ。MCPがAIエージェントとツールやデータを接続する仕組みなのに対して、A2AはAIエージェント同士の通信を目的としたオープンプロトコルだ。
キーン氏は、契約交渉を担当する「調達エージェント」と、支出を承認する「財務エージェント」を例に挙げる。
調達エージェントが契約内容をまとめた後、その処理を財務エージェントへ引き継ぐとする。A2Aのような共通の仕組みがなければ、2つのAIエージェントを連携させるための個別の仕組みが必要になる。
A2Aでは、AIエージェントが自身の役割や通信方法などを記述した情報を公開する。
キーン氏は、別のAIエージェントがこの情報を参照することで、「相手のAIエージェントが何をできるのか」を把握し、適切な仕事を委任できると説明する。
MCPが「AIエージェントとツールやデータ」をつなぐのに対し、A2Aは「AIエージェントとAIエージェント」をつなぐ。この違いを押さえると両者を理解しやすい。
5.Subagents――1つのAIでは処理し切れない仕事を分担する
5つ目は「Subagents」(サブエージェント)だ。AIエージェントが扱うタスクが大規模になれば、1つのAIエージェントだけでは効率的に処理できないケースが出てくる。
例えば、数千ファイルから成るコードベースを調査するとする。1つのAIエージェントが全ファイルを読み込もうとすれば、コンテキストウィンドウを大量に消費してしまう。
キーン氏は、こうした場合にメインとなるAIエージェントから子となるAIエージェントを起動し、処理を分担させる方法を紹介する。これがSubagentsの考え方だ。
各サブエージェントは、それぞれのコンテキストウィンドウを使って割り当てられたタスクを処理し、終了すると結果を親となるAIエージェントへ返す。
例えば、500ファイルの内容を調べる作業をサブエージェントに任せ、調査結果の要約だけを親エージェントに返せば、親エージェント側のコンテキストウィンドウを圧迫しにくくなる。
複数の処理を並列化する用途にも使える。キーン氏は、互いに独立した20個のチェック処理がある場合、それぞれを別のサブエージェントに任せ、並行して実行する例を挙げている。
一方、Subagentsは他の4つの用語とは位置付けが異なる。
Subagentsについてキーン氏は、現代のAIエージェントシステムで広く見られる設計パターンではあるものの、特定の標準仕様が存在するわけではないと説明する。基本的な考え方は、親となるAIエージェントが1つ以上の子エージェントに仕事を割り当て、結果を受け取って処理を続けるというものだ。
キーン氏は5つの用語について、AGENTS.mdとAgent SkillsはAIエージェント内部で「どのように振る舞うか」を支える仕組み、MCPとA2Aはツールや他のAIエージェントといった外部との連携を支える仕組み、Subagentsは1つのコンテキストでは扱い切れない仕事を分担するための考え方だと整理する。
企業がAIエージェントを導入する際には、「どのLLMを使っているか」だけを見るのでは不十分だ。どのようにルールや知識を与えるのか、社内外のシステムとどう接続するのか、複数のAIエージェントにどう仕事を分担させるのか。こうしたLLMの周囲にある仕組みまで理解することが、AIエージェントの設計や製品選定の第一歩になりそうだ。
本稿は、IBM Technologyが2026年6月23日に公開した5 AI Agent Terms You Need to Knowを基に作成しました。
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