AIエージェントやAPIが抱える休眠ID問題
1800件の「非人間ID」をどう統制するか JBCCが実践したリスク防衛策
AIエージェントや自動処理プログラムに付与される「非人間ID」は放置されやすく、サイバー攻撃の標的になりやすいリスクを抱えている。JBCCホールディングスはこの課題に対して、どうID管理の統制を図ったのか。
企業の業務効率化においてAI技術の活用が急速に進む中、情報システム部門は新たなセキュリティの盲点に直面している。それが「非人間アイデンティティー」(NHI)と呼ばれるデジタルIDの増加だ。
NHIには、AIエージェントや自動処理プログラム、APIキーなどが含まれる。これらは自律的に処理を実行するために発行される。それ故に、過大なアクセス権限が付与されやすい傾向がある。さらに厄介なのは、従業員IDのように「人」にひも付いていない点だ。退職や異動に伴うアカウント削除などの管理が行き届きにくく、有効なまま放置される「休眠ID」が生まれやすいという構造的なリスクを抱えている。
社内で稼働するAIエージェントの数が、人間の従業員数に迫る勢いで増加している企業も現れ始めている。ITサービス業のJBCCホールディングスは、従業員約2000人に対して約1800体のAIエージェントが稼働しているという。同社はこうした見えざるIDリスクに対処するため、グループ全社にセキュリティ統制の仕組みを導入した。
従業員数に迫る「AIエージェント」の権限を管理するのは誰か
JBCCホールディングスは、Oktaが提供するIDセキュリティ態勢管理サービス「Okta Identity Security Posture Management」(Okta ISPM)をグループ全社のITシステムに導入した。2026年9月15日、JBCCホールディングスが発表した。従業員IDの利用状況や権限を継続的に可視化する仕組みを構築し、IDを起点とするサイバー攻撃への防御態勢を強化した。今後はAIエージェントなどのNHIにも対象を広げ、自社運用で得た知見を顧客支援に生かす。
AI技術が業務現場へと浸透するにつれ、企業内では従業員IDだけではなく、NHIと呼ばれる人間以外のデジタルIDが出現している。NHIは、AIエージェントや自動処理プログラム、APIキー、アクセストークンなどを含む。自律的な処理や外部サービスへのアクセスのために発行されることから、過大なアクセス権限が付与されやすく、利用状況や権限の継続的な把握が不十分な場合、不要なIDや過剰権限が残存するリスクがある。人間にひも付かないため、退職や異動に伴う削除などの管理が行き届きにくく、有効なまま放置される休眠IDが生まれやすい。
JBCCグループでは従業員約2000人に加え、業務効率化を目的に構築したAIエージェント約1800体が稼働している。自社内におけるIDリスクの早期把握や対処を進めるため、Okta ISPMをまず自社システムで先行して採用した。
Okta ISPMは、複数システムに点在する人間とNHI双方のID権限や利用状況を横断的に可視化し、不正アクセスが起きる前にリスクを毛出するサービスだ。AI機能がリスクを自動で特定・分類し、過剰な権限を持つIDや長期間使われていない休眠IDなどを検出する。深刻度に応じた対処の優先順位と推奨される対処策を提示し、担当者による修正、または事前設定したルールに基づく自動修正によって、迅速なリスク低減を支援する。
今回の導入によって、JBCCホールディングスは従業員IDの権限や利用状況を継続的に可視化する仕組みを構築した。今後は防御対象をソフトウェアやAIエージェントなどのNHIに拡大し、複数システムに分散するIDを一元的に可視化しながら、リスクの早期発見と是正を進める。自社の可視化・是正プロセスを通じて蓄積した知見を基に、顧客のITシステムや業務体制に合わせたリスク低減支援を展開する。
JBCCホールディングスは2026年9月現在、企業の継続的なAI活用を支える機能群「AI Orchestration Platform」(AIOP)の構築を進めており、セキュリティを重要サービスの一つに位置付けている。今後はOkta ISPMなどの技術を取り込みながら機能群を強化し、企業のAIトランスフォーメーション支援を加速させる。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「JBCC HD、Okta ISPMを全社導入 AIエージェントのIDリスクに対応」(2026年9月16日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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