AIコスト管理が企業の明暗を分ける
Gartnerが説く、2027年テクノロジー「トップ・トレンド」 エージェントコスト管理が課題に
AIエージェントが広がる一方、企業では権限管理やデータ統制などの課題が浮上している。AIの能力を引き出すには、それを安全に動かすためのIT基盤の再設計が必要になりそうだ。
ガートナージャパンは2026年11月4日、2027年に企業や組織へ大きな影響を与える「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」を発表した。Gartner IT Symposium/Xpo 2026の講演で、バイスプレジデントアナリストの池田武史氏が解説した。
今回挙げられた10のトレンドには、AIの能力を高める各種のモデルだけでなく、AIを安全かつ効率的に運用するための仕組みが複数含まれている。その内容は次の通りだ。
・音声推論モデル(Speech Reasoning Models)
・ワールド・モデル(World Models)
・大規模定量モデル(Large Quantitative Models: LQM)
・AIコンテキスト・プラットフォーム(AI Context Platform)
・エージェント・コーディング・ハーネス(Agent Coding Harness)
・AIエージェントのアイデンティティー(AI Agent Identity)
・自律型エクスポージャー修復(Autonomous Exposure Remediation)
・ソブリン・テック(Sovereign Tech)
・使い捨てアプリケーション(Disposable Applications)
・サービスとしてのウェットウェア(Wetware as a Service: WaaS)
特に企業のIT部門が注目すべきなのが、「AIコンテキスト・プラットフォーム」「エージェント・コーディング・ハーネス」「AIエージェントのアイデンティティー」の3つだ。
AIエージェントのコスト効率化が明暗を分ける
「AIコンテキスト・プラットフォーム」は、AIエージェントが業務上の判断を下すために必要な知識や情報を提供する仕組みだ。単に社内データを参照させるのではなく、データの意味や業務上の関係性を理解できるようにすることが重要となる。
Gartnerは、2027年までにAI-Readyデータでセマンティクス(意味情報)を優先する組織では、エージェント型AIの精度が最大80%向上し、コストを最大60%削減できると予測している。AIエージェントを業務に組み込むには、モデルの選定だけでなく、参照させるデータの整備も重要になる。
「エージェント・コーディング・ハーネス」は、AIによるソフトウェア開発を統制する仕組みだ。開発ライフサイクル全体を通じてAIエージェントの振る舞いを制御し、生成されたコードの検証などを管理する。AIによる開発速度の向上と、品質や安全性の確保を両立させることが狙いだ。
「AIエージェントのアイデンティティー」は、自律的に動くAIに適切なIDとアクセス権限を与える考え方だ。エージェント自身を識別するだけでなく、誰から権限を委任されたのか、何を目的として、どこまで実行できるのかを管理する必要がある。
Gartnerは、2028年までに企業のセキュリティ侵害の25%が、管理されていないマシンの権限やレガシーな認証情報の取り扱いに起因するAIエージェントの不正利用によるものになると予測する。AIエージェントの普及が、従来のID管理やアクセス制御の見直しを迫ることを示している。
AIを使うためのIT基盤そのものが変わる
今回のトレンドで注目したいのは、AIを業務に導入することだけでなく、AIが動く環境そのものを再設計する必要性が示されている点だ。
AIエージェントに業務を任せる企業では、従業員のアカウント管理とは別に、エージェントごとのIDや権限、実行履歴を管理する仕組みが必要になる。エージェントが複数のシステムを横断する場合には、システムごとに異なるアクセス権限をどう制御するかも問題だ。
AIを使った開発を進める企業では、コード生成の効率だけでなく、レビューやテスト、承認といった工程を含めて開発プロセスを見直す必要がある。AIが生成する量に人間の確認作業が追い付かなければ、効率化の効果は限定的になるからだ。
このほか、今回のトップ・トレンドには、特定のベンダーへの依存を抑える「ソブリン・テック」や、特定の目的を達成したら廃止することを前提とした「使い捨てアプリケーション」も含まれている。
前者は地政学的リスクやベンダーロックインへの対応、後者はアプリケーションを長期間維持することを前提とした従来のIT投資の見直しにつながる。AIを含むテクノロジーの進化が速くなる中、企業にはシステムを導入して維持するだけでなく、依存関係や利用期間まで含めて設計する視点が求められている。
ただし、こうした仕組みを導入すれば、直ちにAI利用のリスクがなくなるわけではない。既存システムとの連携やデータの整備、権限設計、運用ルールの策定など、企業側で対応すべき課題は残る。
AIエージェント時代、情シスは何を見直すべきか
今回のGartnerの発表から読み取れるのは、企業のAI活用における課題が、モデルの性能や導入効果を検証する段階から、AIを組織の中でどう統制するかの段階へ移っていることだ。
情報システム部門やDX推進部門は、まず自社で利用しているAIエージェントやAIサービスを把握し、どの業務でどのデータやシステムにアクセスしているのかを確認すべきだ。特に、現場部門が独自に導入したAIツールや、従業員が個別に作成したエージェントは、全社的な管理から漏れる可能性がある。
その上で、AIエージェントに付与する権限を必要最小限に抑え、実行内容を追跡できる仕組みを整えることが重要だ。AIが人間に代わって処理を実行する以上、誰がその処理を許可し、どこまでの責任を負うのかというルールも明確にしなければならない。
また、AIの判断に使うデータの品質や意味情報を整理し、開発や業務処理の結果を検証するプロセスも必要になる。
AIを導入するかどうかだけでなく、AIにどこまで仕事を任せるのか、どのような条件で実行を許可するのか、問題が起きた際にどう停止・復旧するのか。こうした問いに答えられる体制を構築できるかが、今後の企業のAI利用を左右する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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