PC市場で起きている「需要の先食い」
なぜPC価格は“まだ”急騰していないのか? PC市場に漂う「嵐の前の静けさ」
メモリ価格の高騰などにもかかわらず、2026年に入ってもPC市場は堅調だ。PCの平均卸売価格もまだ急騰していないという。しかし専門家はこの状況を「需要の先食い」と評し、長くは続かないと警告している。PC市場で何が起きているのか。
部品不足によるPC価格上昇の見通しを受け、価格が急騰する前にPCを購入しようとする動きが活発化している。その結果、厳しい一年になる見通しだったPC市場は、「嵐の前の静けさ」の様相を見せている。調査会社Contextによると、2026年初頭のPC市場は、前年と比べて堅調な成長を記録した。平均卸売価格もまだ急騰していないという。しかし専門家はこの状況を「需要の先食い」と評し、長くは続かないと警告している。
なぜ急騰しないのか PC市場に漂う「嵐の前の静けさ」
Contextによると、2026年の最初の10週間において、欧州の卸売業者経由のノートPCの売上高は前年同期比10%、デスクトップPCは18%改善した。価格の不透明感に加え、特にWindows 10を使い続けているユーザーによる継続的なアップグレード需要が要因となっている。
欧州市場の成長には地域差があり、英国は前年同期比で横ばいだった。対照的に卸売業者が在庫を積み上げているフランスでは大幅な成長が見られた。
これらの需要増は「売り手側」が主導している側面もある。再販業者はユーザーに対し、値上げに先んじてより安価に購入するよう促している。
Contextのシニアアナリスト、マリー・クリスティーヌ・ピゴット氏は「市場は表面上は好調を維持しているが、これは長期的な安定によるものではなく、需要の先食いによるものだ」と述べる。同氏は「販売代理店やリセラーなどは、2025年当時の安い価格設定で在庫を確保しようと積極的に先買いをしている。この好機がすぐに終わることを分かっているためだ」と付け加える。
「一時的な緩衝効果」にすぎない
PCの平均卸売価格はまだ急騰していないが、Contextは「これは2025年に安く仕入れた在庫が市場に供給されていることによる『一時的な緩衝効果』にすぎない」と警告する。ピゴット氏は「卸売業者が抱える在庫が、メモリ価格高騰の影響から市場を保護しているが、これは長くは続かない」と指摘する。「第2四半期末(2026年6月)から第3四半期(7~9月)にかけて在庫が底を突けば、高騰する部品代に見合った価格に引き上げられるだろう」(同氏)
2026年最初の1カ月半、PC販売の現場は何とか持ちこたえているように見えたが、メモリ不足の影響はサプライチェーン全体に波及している。メモリ価格は2025年第3四半期の水準の3~4倍に上昇した。PCベンダーは定価を長く維持できず、短期間で価格を改定せざるを得なくなり、販売店はユーザーへの見積もりの提示が困難になっている。
Contextは、2026年を「二面性のある一年」と予測している。2026年上半期は、2025年当時の安い価格の在庫が消化されるが、それがなくなれば、部品不足による影響が表面化するだろう。
ピゴット氏は「ユーザー企業は、下半期に全く異なるPC市場になることを覚悟する必要がある」と警鐘を鳴らす。「今起きているのは、単に景気が減退しているのではなく、市場構造そのものの変化だ。本当の試練は、PCの供給が引き締まり、PC価格が部品代の高騰という実情に追い付いたときにやってくる」(同氏)
Contextは、英国の小売部門が厳しい市場環境と在庫管理の課題に直面していることを示す調査結果も発表した。Contextのシニアリテールアナリスト、ジェームズ・ベイツ氏は「今は季節的に売れる時期ではなく、販売店は平均販売価格を下げて在庫を処分しているため、今後、在庫管理が難しくなる局面が出てくる」と予測する。
「IT業界全体が供給不足や価格高騰を懸念している中で、こうした安売りがなされているのは皮肉な状況だ。しかし、もし販売店が古いモデルの在庫を過剰に抱えているとすれば、短期的には部品代の高騰による影響は顕在化しないかもしれない」(ベイツ氏)
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