大学ITの時限爆弾化した“技術的負債”
「作った人しか直せない」を終わらせる 同志社女子大学が挑んだ独自認証の脱却
脆弱性修正のたびに発生する「システム計画停止」と、特定担当者に依存した「独自実装」。これらが引き起こす属人化はIT部門を追い詰める。同志社女子大学がこの課題から脱却するために採用したアーキテクチャとは。
「脆弱(ぜいじゃく)性が見つかるたびに、夜間や休日にシステムを停止してパッチを当てる」。これは組織のIT部門にとって、終わりの見えない苦行だ。それに加えて、システムの根幹となる認証システムが特定の技術者にしか分からない独自実装で構築されていたら、問題はいっそう複雑になる。その担当者が退職した瞬間、システムはブラックボックス化し、組織のインフラは維持不能に陥る。
同志社女子大学も、同様の技術的負債を抱えていた。同大学は学内システムとの連携やID管理を自前で実施するため、オンプレミスインフラで認証システム(SAML IdP)を運用していた。このシステムを運用する上で、脆弱性修正に伴うバージョンアップのたびにシステム停止作業が発生し、運用部門の重い負担になっていた。他サービスと連携するための「学認接続」も作った本人しか直せないプログラムで動いてしており、長期的な維持管理にも大きな課題を抱えていた。
同志社女子大学が求めたのは、システムのクラウド化による安定運用だけではない。設定や変更作業における属人性を排除し、専門のエンジニアではなくても運用できる持続可能な体制を確立することだった。そのためには既存の単一製品では要件を満たせず、複数ベンダーのサービスを組み合わせる未知のシステム連携が必要となった。そこには、どのような壁と画期的な解決策があったのか。
「独自実装」を捨て、運用を標準化する“世界初”の構成
同志社女子大学は、学生や教職員が複数の学術サービスに安全にアクセスするための認証システムを刷新し、クラウド型認証システムを用いた「学術認証フェデレーション(学認)連携方式」を構築した。システムの設計・構築に当たっては、ネットワンシステムズの支援を受けた。2026年6月22日、ネットワンシステムズが発表した。従来課題となっていたシステム停止を伴う保守作業や、特定の技術者に依存した運用を解消し、中長期的な安定運用と効率化を図る。
同志社女子大学は、学内システムとの連携とID管理を自前で完結させるため、オンプレミスインフラでSAML IdPを運用していた。しかし、脆弱性の修正に伴うバージョンアップが必要になるたびにシステムの停止作業が発生しており、運用部門にとって大きな負担となっていた。学認接続を独自実装したプログラムで運用していたため、長期的な維持管理にも課題を抱えていた。こうした状況から、安定運用とセキュリティ向上の両立に向け、認証システムのクラウド化と標準化された学認連携方式の導入が求められていた。
課題解決に向けて同志社女子大学の要件に適合する方式を検討する中、ネットワンシステムズはSAML IdPに対応するCisco Systemsの多要素認証・アクセス制御サービス「Cisco Duo」に着目した。ネットワンシステムズはCisco Systemsおよび商用認証ツールと学術ネットワークの橋渡しに特化したベンダーCirrus Identityと協働し、Cisco DuoとCirrus Identityの製品を組み合わせることで学認への適合を実現する新たな構成を考案。Cisco Systemsの技術陣に対する勉強会の実施や仕様調整、機能改修の検討を主導した上で、世界初となる構成の実証実験を同大学のシステムで実施した。検証の結果、問題なく学認と連携できることと運用性の向上が確認できたため、本番導入に至った。
導入効果として、認証システムのクラウド化によって停止を伴うバージョンアップ作業が不要になり、安定した運用が可能となった(図)。正式サポートに基づく構成で学認接続を実装したため、保守性と拡張性が向上した他、SAML SP追加時の作業工数や証明書更新に伴う運用負荷も低減された。Cisco Duoを用いたSAML IdPの設定作業を標準化するための専用ツールを整備したことで、設定や変更作業における属人性を排除し、専門のエンジニアに依存しない持続可能な運用体制を確立した。
同志社女子大学の長南敏彦氏は、「今回の刷新によって、運用負荷の軽減と学認連携という長年の課題を解決することができた。前例のない世界初の構成に不安もあったが、ネットワンシステムズの検証段階から導入に至る手厚い伴伴奏支援があったからこそ、安全に移行作業を完了させることができた」とコメントする。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「同志社女子大学、クラウド認証基盤を刷新 停止を伴う保守と運用の属人性を排除」(2026年6月23日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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