半年かかるデータ連携を“1カ月半”に短縮 古河電工が「Denodo」で得た効果データのサイロ化が生む情報格差の解消

部門ごとのシステム分断によるデータのサイロ化に直面していた古河電気工業は、「Denodo Platform」によってデータ一元化を実現した。物理的な集約では得られなかった、仮想化技術によるデータ連携の効果とは。

2026年07月24日 05時00分 公開
[TechTargetジャパン]

関連キーワード

データ統合 | 仮想化


 企業が蓄積してきたデータがDX(デジタルトランスフォーメーション)の障壁になるケースは珍しくない。古河電気工業では、各部門が独自のシステムを運用してきた結果、深刻なデータのサイロ化が生じていた。必要なデータの所在が分からず、経営層への速報値の提出が遅れ、ビジネスの動きとの間にギャップが生じるといった課題が浮き彫りになっていたのだ。

 これらの課題を解決するために物理的なデータ集約を検討したが、膨大な時間と労力が伴うため限界を感じていた。そこで白羽の矢が立ったのが、仮想化技術を用いたデータ連携システムだ。

 本システムの導入によって、古河電気工業は関係会社の統廃合に伴う72種類のデータ提供をわずか1カ月半で完了させた。物理的な集約と比較して、実質的に工数を約8分の1へと削減したことになる。ビューの開発依頼からデータ提供までの時間も、以前の3カ月程度から、最短30分で完了する体制が整った。

 劇的なスピードと工数削減を実現した裏側には、どのような仮想化技術があったのか。

物理的なデータ移動で生じる遅延を解消

 社内システムのほとんどをスクラッチ開発してきた古河電気工業は、それぞれの強みを生かすために経理、営業、購買など、部門ごとに縦割りでシステムを管理していた。しかし、この手法ではデータ量の増大に伴って全体を把握することが困難になり、新入社員や中途採用者がデータを見つけられず、社内における情報格差を生む原因になっていた。

 こうした課題に対し、情報システムDX推進室の主導の下で着目したのが、データを物理的に移動させずに仮想的な一元化アクセス層を構築する技術「Denodo Platform」だ。この仕組みでは、各部門のシステム内にデータが存在したまま、エンドユーザーからはあたかも1つの巨大なデータベースに見える状態でデータを扱うことを可能にする。

 この仕組みではデータをコピーしないため、新たなサーバやストレージへの移行テストが不要になり、「簡単で、早くて、すぐに使える」という即効性を確保できる。情報システム部門に開発を依頼して待たされるという旧来の業務プロセスは一変した。情報システム部門の作業負荷は激減し、各現場の担当者はデータへの接続許可さえ得れば、自らの手で即座に必要なデータを取得できるようになった。

プレーンな接続性と非構造化データへのアクセス

 データ集約システムを選定する過程において、古河電気工業は複数の製品を用いて概念実証(PoC)を実施した。その中で、Denodo Platformは既存のデータベース群に対する接続の容易さが評価された。同社の社内システムは多様なデータベースを有しており、これらを素早く接続してデータ一元化を実現できる点が優れていると判断された。

 クラウド型コンテンツ管理サービス「Box」に対する無制限の接続機能も重要な選定理由になった。企業活動においては、構造化されたデータベース内の数値情報だけではなく、文書ファイルや画像などの非構造化データも重要な資産だ。古河電気工業の社内にも、Box内にしか存在しない重要データが大量に蓄積されていた。

 「データ一元化をするのであれば、その資産を生かさなければ意味がない」という考えを持つ古河電気工業にとって、システム化されていないデータであっても必要に応じてBoxから取り出して利用できる機能は不可欠な条件だった。関連システム会社と一体となった内製体制を構築する上でも、データ連携機能が重視された。

データ活用がもたらす組織変革と今後の道筋

 2026年6月時点で、一元化されたデータシステムは経営ダッシュボードで100人以上、経理データの活用を含めると延べ約500人の従業員に日常的に利用されている。データを基にした意思決定が浸透しつつある証左だ。関係会社からも利便性に対して賛辞が寄せられており、企業風土そのものがデータ駆動型へと変化している。

 2026年度をデータ一元化の「加速フェーズ」と位置付ける古河電気工業は、今後の取り組みの軸として「量」「質」「定着」という3つのキーワードを掲げている。対象となるデータの種類とボリュームを拡大し、そこから得られる分析の精度を高めるとともに、現場の業務プロセスにデータ活用を完全に定着させる構えだ。

 今後は国内にとどまらず、海外の関係会社にも同システムの展開を検討している。各部門の独立性を維持したまま、仮想的な連携によって全体の最適化を図る古河電気工業のアプローチは、事業を支える重要なインフラとして機能を続ける。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓

瞬時にM365が乗っ取られる――全社員に周知すべき“新フィッシング”の教訓
MFA(多要素認証)を入れたから安心という常識が崩れ去っている。フィッシング集団「Tycoon2FA」が摘発されたが、脅威が完全になくなったというわけではない。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...