AI・DX関連案件が3.1倍に増加
コードは書けても案件が取れない ITフリーランスを左右する「対面コミュ力」
レバテックは、同社のデータを基にした「ITフリーランス市場動向」を発表した。AI・DX関連案件が1年間で約3.1倍に増える中、技術力に加え、これからのITフリーランス人材に求められるスキルが示唆された。
IT人材・コンサルティング事業を展開するレバテックは、同社が保有するデータを基に「ITフリーランス市場動向」をまとめ、2026年7月27日に発表した。同調査から、これからのITフリーランス人材に求められるスキルを整理する。
フリーランスITにこれから求められるスキルとは
2026年6月時点におけるITフリーランス人材の案件希望者数は前年同月比136%となり、案件を探すIT人材は引き続き増加傾向にある。中でも、PM(プロジェクトマネジャー)の登録者数は前年同月比で約1.8倍に伸びた。
レバテックはこの背景として、自身の市場価値をリアルタイムで確認したいという意識の高まりや、1つの企業に所属するのではなく、プロジェクト単位で複数の案件に携わりたいというキャリア観の広がりを挙げている。
ITフリーランスという働き方は、単に独立性や報酬を求めるための選択肢ではなく、経験する業界やプロジェクトを自ら選び、専門性を高めるためのキャリア手段として捉えられつつあることがうかがえる。
ただし、案件希望者が増加する中で、案件を獲得するために必要な能力も変化している。特定の技術を使って開発作業を担うだけでなく、企業の課題を把握し、プロジェクト全体を前に進められる人材への需要が高まっている。
AI・DX案件は1年間で約3.1倍に増加
こうした人材需要の変化を示しているのが、AI・DX関連案件の増加である。AI・DX関連のITフリーランス案件数は、直近1年間で約3.1倍に拡大した。
企業では、生成AIをはじめとする技術を試験的に導入するだけでなく、実際の業務フローに組み込み、コスト削減や生産性向上、新規サービスの創出といった具体的な成果につなげようとする動きが強まっている。
レバテックによると、企業のAI活用は、単にAIを導入する段階から、ビジネスの現場に実装して成果を出す段階へ移行している。そのため、AIモデルやシステムに関する技術的な知識だけでなく、現場の業務フローを理解し、導入計画の策定から実装、定着までを推進できる人材に需要が集中しているという。
特に需要が伸びているのが、複数の関係者を調整しながらプロジェクト全体を管理するPMのポジションだ。PM案件数は直近3年間で3倍以上に増加した。
AI・DXプロジェクトには、経営層、情報システム部門、事業部門、開発会社、コンサルティング会社など、多様な関係者が参加する。プロジェクトを進めるには、技術的な実現性だけでなく、対象業務や投資効果、データ管理、セキュリティ、従業員教育まで考慮しなければならない。
その上で、ビジネス上の目的を整理し、それぞれの関係者が担う役割を定め、合意形成を進める必要がある。技術と業務の双方を理解し、多様な関係者を調整しながらプロジェクトを成果へ導けることが、これからのITフリーランスに求められる重要な能力となる。
フルリモート案件の割合は約30%に縮小
求められる能力の変化は、ITフリーランス人材の働き方にも影響している。
調査によると、2026年6月時点で、フルリモート案件が全案件に占める割合は約30%まで縮小した。完全な在宅勤務ではなく、週に数日出社するハイブリッド型の働き方が標準になりつつあることが示唆されている。
フリーランスは、正社員と比べてフルリモートで働きやすいと考えられてきた。しかし、出社回帰を進める企業が増える中、ITフリーランス人材にも対面でのコミュニケーションを求める案件が増加している。
その背景の1つとして考えられるのが、AI・DX案件の重要性である。AI・DXは、単独のシステム開発にとどまらず、企業の業務や組織、経営戦略に関わるプロジェクトになりやすい。
プロジェクトの初期段階では、現場担当者への聞き取りや業務フローの整理、関係部門との合意形成が必要になる。こうした業務では、オンライン会議だけでなく、対面で密に意思疎通できる人材を求める企業も少なくない。
今後は、勤務場所を問わず作業できることだけでなく、必要に応じて顧客のオフィスへ出社し、現場に入り込んで業務や課題を理解できることも、案件を獲得する上での条件になりつつある。
コーディング単独から「AIを使って成果を出す仕事」へ
レバテック代表執行役社長の泉澤匡寛氏は、AIの進化によって、ITフリーランス市場で求められる業務と人材は大きく変化していると説明する。
定型的な開発や運用業務ではAIによる代替が進む一方、AIを現場で活用し、プロジェクトを成功に導くPMやコンサルタントなど、上流工程を担う人材への需要は拡大している。
従来のような、コーディングスキルだけを提供する案件と比べ、AIを使いこなし、戦略の策定から実装までを担う案件の需要が伸びている。今後は、AIツールを操作する技術だけでなく、企業が抱えるビジネス課題を理解する力が必要になる。
加えて、人間とAI、複数の部門や外部事業者をつなぎ、それぞれの役割を整理しながら成果を生み出す力も求められると泉澤氏は指摘する。
ITフリーランス人材にとっても、特定のプログラミング言語や製品に関する知識だけでは十分とは限らない。業務分析、要件定義、プロジェクト管理、組織間の調整といった能力を身に付け、AIを使って企業の課題解決につなげられるかどうかが、今後の市場価値を左右しそうだ。
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