この勢いは続くのか
一体なぜ? Oracleのクラウド事業が今になって“爆伸び”
Oracleのクラウドインフラ事業が好調だ。2025年度第2四半期の売り上げ成長率が、AWSやMicrosoft、Googleを上回ったという。成功の要因は何か。今後の課題と併せて紹介する。
近年、クラウド市場で存在感を急速に高めている企業がある。それがOracleだ。伝統的にはデータベースや業務アプリケーションのベンダーという印象が強い同社だが、2025年度第2四半期(2024年9~11月)、クラウドインフラ事業の売り上げが大幅に増加し、その成長率はAmazon Web Services(AWS)、Microsoft、Googleといった大手クラウドサービスベンダーを上回った。Oracleの事業全体の売上高は前年同期比9%の伸び率にとどまったが、OracleのCEOを務めるサフラ・キャッツ氏によると、同社のクラウドサービス群『Oracle Cloud Infrastructure』(OCI)の売上高は52%という驚異的な増加を記録した。
Oracleのクラウド事業が急成長する要因は何か。その勢いが今後も続くのかどうかと併せて検証する。
Oracleのクラウド事業が“爆伸び”する3つの要因
併せて読みたいお薦め記事
クラウドサービス市場の最新動向
キャッツ氏は、成長の要因として「記録的なAI(人工知能)需要」を挙げた。生成AIのモデルのトレーニングにOCIを活用する企業が増えたのが主な原因だ。同氏は、この成長はまだ初期段階にあると語る。「AI分野でのクラウドインフラ事業の成長は驚異的だが、今後もさらに上昇していくと確信している」と語った。
「OCIは、他社のクラウドサービスよりも処理速度に優れ、低コストだ。世界的に有名な複数の生成AIモデルのトレーニングに活用されている」。Oracleの会長兼CTO(最高技術責任者)であるラリー・エリソン氏はそう語る。
まずは今回の成功につながったOracleの強みを見ていこう。
長年培った信頼
企業戦略における影響力という観点では、20年以上に渡り、OracleはIBMなどと並び存在感を発揮してきた。企業がIT投資における重要な意思決定をする際、選択肢としてOracleの名前が上がることが多く、AI導入に当たっても、Oracleが選ばれる機会が増えたと考えられる。
データベース製品のシェア
Oracleのデータベース製品は、クラウドサービスでもオンプレミスデータセンターでも、広く普及している。AIモデルのトレーニングには、データベースへのアクセスが欠かせない。Oracleのデータベース製品は、データセキュリティとデータ主権(データの制御や管理に関する権利)という重要な要件を満たす点で、企業の信頼に応えてきた。Oracleのデータベース製品を利用する企業がそのままOCIのユーザーとなるケースが珍しくない。
手頃な価格設定
OCIは大手クラウドサービスよりも安価で、アクセス料金およびエグレス(外部インフラへのデータ転送)料金を抑えているので、企業はそれを理由にAIトレーニングに向くと考える。「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」や「Google Cloud」といったクラウドサービスと比較して、国際的なホスティング密度(同時に処理できる接続の数)が低い、サービスや機能が少ないという弱点はあるが、これらの点はAIトレーニングではあまり重要ではない。自社でホスティングするAIモデルを構築し、学習データだけをOCIに転送してトレーニングができる。オープンソースのAIモデルをOCIで実行することも可能だ。
この勢いは続くのか? 課題は
OCIの成長がこの先も続くという保証はない。次に課題を挙げていく。
競合との差別化をいつまで維持できるのか
競争の激化が見込まれる中で、差別化要因の耐久性が問われる。他のクラウドサービスが、AIトレーニングにおいて、OCI以上の処理性能を、同等もしくはより安価な価格で提供してくる可能性がある。競争を勝ち抜くには、生成AI開発における信頼できるパートナーとして、OCIのブランドを確立する必要がある。データベース製品、アプリケーション製品との連携を進め、強力な顧客基盤を拡大しなければならない。
AIモデルのトレーニングが続くのか
OCIの成功はAIトレーニングに依存している。しかし、企業が独自のAIモデルの構築のために、自社でトレーニングをする流れが今後も続くとは限らない。生成AIに関連する各ベンダーのサービスが充実していけば、AIトレーニング市場が縮小する可能性さえある。実際、新しいモデルや機能が続々と登場する中、モデルの開発にこだわる必要性が少なくなりつつある。環境が急速に変化する中、企業がトレーニングにOCIを活用し続ける保証はない。
Oracleが技術革新を続けるか
仮に企業がAIモデルのトレーニングに引き続きOCIを使用し続けたとしても、それだけでは成長は維持できない。OracleがAIアプリケーション分野でも業界のリーダーとなることが求められる。
OracleはSaaS(Software as a Service)型のアプリケーション製品も幅広く展開しているが、冒頭で述べたように、それを含めた全体の売上成長率は9%にとどまる。SaaS事業でAI需要を効果的に取り込めているとは言い難い。OracleはAIを活用した企業向け製品を十分には提供できておらず、この点はライバルのIBMとは対照的だ。Oracleが決算報告の中で今後の成長の要因として挙げたのは、AIモデルのトレーニングだけだ。成長を維持し、大手クラウドサービスの代替手段として認知されるために、今、Oracleは大胆な技術投資をする必要がある。そうでなければ、OCIはAIのトレーニング用として用途が限定されてしまうだろう。
(翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝)
TechTarget発 先取りITトレンド
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策の重要ポイント バックアップがあっても安心できない理由 -
製品資料
[Dropbox Japan株式会社] 失敗しないDropbox導入 移行の進め方と事前設計の注意点 -
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] 取引先から聞かれる前に知っておきたい、SCS評価制度とファイル共有管理の基本 -
製品資料
[TXOne Networks Japan合同会社] 沖電気工業に学ぶ、OT環境の「リスク可視化」から始めるセキュリティ対策 -
事例
[Neatframe株式会社] 船井総研HDのビデオ会議はここが違う 美観・品質・操作性を追求した環境構築術
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
3
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
4
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
5
AIエージェントで「ERPの魔改造」復活の懸念 せっかくのクリーンコアが崩壊
-
6
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
7
米国防総省で300万人分の個人情報が流出 その「意外な原因」と教訓
-
8
Googleの業務向けAIエージェント「Gemini Agent」が登場 しかし課題は山積み
-
9
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
10
増えすぎたAIエージェントが野良化 幹部の36%がインシデント発生時に隠したいと回答
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
-
8
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
9
Wi-Fi 7はまだ導入しなくてよい? AI時代の企業ネットワーク戦略、次の一手は
-
10
脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー