自然言語だけで“理想のソフトウェア”は作れるのか?
「バイブコーディング」は企業には難しい
AIツールを使い、英語や日本語など自然言語の指示内容を基にソースコードを生成するバイブコーディングは開発作業を効率化する手法の一つだが、必ずしもそうとは限らない。バイブコーディングが抱える課題は何か。
ソフトウェア開発者がAIツールに自然言語で目的を伝えることで、ソースコードを自動生成する「バイブコーディング」は、ソフトウェア開発への参入障壁を下げて、アプリケーションソフトウェアをより簡単に作成できるようにする。しかしバイブコーディングには幾つかの注意点がある。
自然言語はなぜ開発に不向きなのか
併せて読みたいお薦め記事
企業で「バイブコーディング」は役立つのか
ソフトウェア開発ツールを手掛けるAzul Systemsの副最高技術責任者であるサイモン・リッター氏は、AIツールと自然言語を使ったコーディングの課題をComputer Weeklyで語った。最初の課題は、一般的なプログラミング言語がある入力に対して常に同じ結果を返す決定論的な性質を持つことだ。つまり開発者はコンピュータに何をすべきかを正確に伝える必要がある。開発者が書いたソースコードが、コンピュータのCPUに指示を与える機械語に変換される過程に誤解があってはならない。
コンピュータがプログラミング言語を正確に機械語に変換するために使用するのが、コンパイラとインタープリタというプログラムだ。コンパイラはプログラミング言語で書かれたソースコードを機械語に翻訳し、それを実行可能にする。インタープリタはソースコードをリアルタイムで変換し実行する。
自然言語を用いてプログラムが何を達成すべきかを指定する場合、必ずしも出力されたソースコードでコンピュータがうまく動作するとは限らない。リッター氏は、自然言語の曖昧さを示す例として「The chicken is ready to eat.」(鶏は食べる準備ができている)というフレーズを挙げた。同氏は次のように説明する。「このフレーズは何を意味するのか、複数の解釈が可能だ。『生きている鶏が空腹になり食物を食べたがっている』とも、『人がスーパーで買った鶏肉をオーブンに入れて、今食べる準備ができている』とも捉えられる。自然言語は、何かを実行するよう明確に記述する際に、大きな問題を抱えている」
バイブコーディングは各ツールが利用するAIモデルの処理結果に基づく。そのため特定のプログラミング作業には適しているが、全てのソフトウェア開発の工程に適しているとは限らない。企業ソフトウェアは追加機能やカスタマイズを加えるときに、事業に必要な要件を満たす必要がある。「しかしAIツールが企業で利用するソフトウェアの開発に必要な要件を満たすための特定の情報で訓練されている可能性は低い」とリッター氏は指摘する。AIツールの提供企業がユーザーに独自の要件を満たすことができるAIモデルを提供しない限り、企業ソフトウェアを開発するためにサードパーティーのAIツールを使用することは難しい場合がある。
バイブコーディングを組織で活用するには
制約はあるものの、リッター氏はバイブコーディングをミッションクリティカルではないソフトウェアのソースコードを作成するための有用な技術と捉えている。簡単な利用ケースとしては、スプレッドシートでの単純な自動化や、データセットを意味のあるレポートに変換するためのマクロの作成などが挙げられる。
企業のシステム開発におけるAIツールのもう一つの利用ケースは、ソフトウェア統合だ。従来は主にRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールがこの問題に取り組んでいた。リッター氏は、複数のユーザーがさまざまなアプリケーションを使用する際の行動履歴をAIツールが観察し学習することで、企業アプリケーション統合を推進するための豊富な訓練データを提供できると考えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget グローバルインサイト
米国Informa TechTargetが発信する記事を翻訳し、国内向けに分かりやすく紹介します。最新の海外動向や先進事例を取り上げ、グローバルなITトレンドを把握できる連載です。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
5
最も脆弱性が少ない&多いプログラミング言語が判明
-
6
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
7
「Windows 10」が入ったままの“Windows 11未移行PC”に残された延命手段
-
8
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
9
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
10
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー