上空1万メートルの機内Wi-Fiを快適に
上り400Mbpsが変える「空のDX」 デルタ航空に学ぶ次世代インフラ戦略
ビジネス価値の向上にITインフラ刷新を直結させることは重要だ。下り1Gbps、上り400Mbpsの次世代衛星通信で上空の顧客体験を変革するデルタ航空から、自社のネットワーク戦略に応用できるヒントを探る。
「通信環境が不安定な現場をどうIT化するか」「インフラの刷新をいかに顧客体験(CX)の向上につなげるか」という課題は、企業の規模や業種によらず、IT部門に共通する課題だ。その解決のヒントになるのが、インフラ構築の難易度が極めて高い「上空1万メートル」のデジタル化を進める企業のネットワーク戦略だ。
競合各社が機内通信を強化する中、Delta Air Lines(以下、デルタ航空)はAmazon.comの地球低軌道(LEO)衛星サービス「Amazon Leo」を導入し、機内で高速かつ低遅延のインターネット接続を実現する提携を発表した。
両社は、この提携が「旅行とテクノロジーの未来をけん引する」ことを意味し、旅行体験を大きく向上させると主張している。しかし、自社のネットワーク運用やIT戦略を担う担当者の目線で見れば、これは単に「機内のWi-Fiが速くなる」という表面的なニュースではない。通信インフラの制約でDX(デジタルトランスフォーメーション)を諦めていた現場を、どうクラウドサービスとスムーズに連携させるか。単なる「回線の調達」を、いかに経営層が求める「CXの向上」というビジネス価値に直結させるかを示している。
デルタ航空はなぜAmazonの衛星通信を選んだのか
世界最大級の航空会社であるデルタ航空は、1925年に農薬散布サービスを提供する農業航空会社として誕生した。18機の専用機を擁する全米有数の民間航空会社に成長した同社は、その後1927~28年にかけてパンアメリカン航空の関連会社Peruvian Airwaysの南米西海岸路線運航を担った。
デルタ航空は国際線の強化とプレミアム戦略の推進に向け、機材の刷新を急速に進めている。最新のナローボディー機(単通路機)や、2026年に大量発注した「Boeing 787」「Airbus A350-900」といった大型機を軸に、Amazon Leoの通信設備を順次搭載する方針だ。
AWSとAIを駆使した「空のDX」
今回の契約は、単なる通信手段の確保にとどまらない。デルタ航空は、自社システムにおけるクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)の活用を拡大する。AWS、Amazon Leo、人工知能(AI)技術を連携させ、予約から搭乗後までの顧客体験を向上させる狙いだ。具体的には、搭乗客用サービス「Delta Sync」を通じ、乗客一人一人の好みに合わせた無線LAN利用や座席モニターでのコンテンツ提供を可能にする。
Amazon.comによると、Amazon Leoの通信速度は下り最大1Gbps、上り最大400Mbpsに達する。これは従来の衛星通信を大きく上回る速度だという。
デルタ航空は、Amazon Leoの衛星技術を使用し、国内線および国際線での映画やテレビ番組のストリーミングサービスの改善を図る。高い上り速度を生かし、写真や動画のリアルタイム共有、ビジネス資料の安全な送信といった用途も想定している。
Amazon Leoの導入について、デルタ航空のCEOであるエド・バスティアン氏は次のように述べる。「低遅延かつ投資効率に優れたAmazon Leoによって、地球上のあらゆるルートで安定した通信を実現する。Amazon.comの技術力を活用し、機内においてもビデオ会議やクラウドサービスを用いた作業が滞りなく遂行できる環境を構築する」
Amazon.comのプレジデント兼CEOであるアンディ・ジャシー氏は、「通信が安定しない地域に高速インターネットを提供できる設計であり、旅行中の体験を根本から変える好例だ」とAmazon Leoの社会的意義を強調する。
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