「機内で無線LAN」はなぜできる? 航空会社が“宇宙”に着目する理由航空機の事例で学ぶ次世代通信

新型コロナウイルスによる影響から回復しつつある航空業界。南米の航空会社LATAMはIntelsatと協力し、乗客が快適に利用できる機内接続サービスを提供する。どのような技術を使うのか。

2022年08月26日 05時00分 公開
[Joe O’HalloranTechTarget]

 南米の大手航空会社LATAM Airlines Group(LATAM)は、同社が保有する航空機に通信衛星会社Intelsatが提供する「インフライト接続」(IFC)を導入する。IFCは航空機の乗客が機内で利用するデバイスを無線LANに接続する機能。LATAMがIFCを導入する狙いと、その仕組みはどのようなものなのか。

航空会社が着目する「機内で無線LAN」の仕組みとは?

 1929年にチリの国営航空会社LAN Airlinesとしてアルトゥーロ・メリノ・ベニテス氏が設立したLATAMは、ブラジルやチリ、コロンビア、エクアドル、ペルーなどで国内線を運航する。国内線に加えて、同社はラテンアメリカ(中南米)圏や欧州、米国、カリブ諸国などの地域間で国際線を運航している。

 他の航空会社と同様、LATAMは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)の影響を受けた。同社の推定によると、2022年1月の有効座席キロ(ASK:総座席数×輸送距離)は、パンデミック前の2019年1月と比較して最大72%ほどまで回復した。2021年12月の有償旅客キロ(RPK:有償旅客数×輸送距離)は2019年1月と比較して68.8%、ASKは2019年12月と比較して70.1%だった。

 LATAMがIFCを導入するのは、航空機メーカーAirbusが製造するナローボディ機(旅客機のうち内部の通路が1つしかないもの)だ。チリやエクアドル、ペルー、コロンビアを拠点に運航する「A320ceo」や「A320neo」などの航空機にIFCを導入する。最大160機が導入の対象となっており、導入完了までには3年を要するという。

 約70機の新型機については、LATAMへの納入に先立ち、Intelsatが提供する衛星アンテナ「2Ku」をAirbusが米国と欧州の製造拠点で機内に設置する。

 LATAMのチーフエクスペリエンス&カスタマーオフィサーのパウロ・ミランダ氏は、これまでLATAMはIntelsatと緊密に連携し、同社のブラジル拠点の航空機にIFCを提供してきたと語る。「チリやコロンビアなど、スペイン語圏の顧客も同様のサービスを望んでいる。今回の発表はそれを実現するための第一歩であり、Intelsatの2Kuを利用して、地域で最高のIFCを提供することを目指す」(ミランダ氏)

 Intelsatの民間航空部門でコマーシャル担当シニアバイスプレジデントを務めるデイブ・ビジュール氏は「Intelsatの使命は、パートナーである航空会社の顧客が仕事やエンターテインメント用に使う、高品質で信頼性の高い接続を提供することだ」と語る。Intelsatは今後何十年にもわたって、顧客のLATAMや、南米全域の乗客に優れたIFCを提供していくと、ビジュール氏は強調する。

 次世代の国際的な人の移動に貢献するため、Intelsatが衛星通信用のネットワークに投じる初期投資は約20億ドルに上る。このネットワークには、周波数変調や周波数帯域、軌道位置などをソフトウェアで再構成可能にする「ソフトウェア定義衛星」のような人工衛星も含まれている。ソフトウェア定義衛星を活用することで、ストリーミング(データを受信しながら同時に動画を再生する方式)が可能なレベルの接続を機内で提供しやすくなる。

 「グローバルで統一された衛星通信のネットワークを用いることで、どの運航ルートでも、IFCを顧客に提供できるようになる」とIntelsatはコメントする。

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