Virgin Atlantic Airwaysの「偏見なしAI活用」 支えている製品は航空会社のAI活用、束ねる人は?【後編】

顧客体験向上のために人工知能(AI)技術利用に力を入れる英国の航空会社Virgin Atlantic Airways。同社はどのような方針で製品を採用しているのか。

2025年06月27日 06時00分 公開
[Mark SamuelsTechTarget]

関連キーワード

人工知能 | 事例 | データ分析


 英国の航空会社Virgin Atlantic Airwaysは人工知能(AI)技術の利用に注力し、利用者によりよいサービスを提供することを目指している。同社でバイスプレジデントとしてデータとAI技術の利用を促進しているリチャード・マスターズ氏はどのようにAI技術を同社に浸透させたのか。Virgin Atlantic Airwaysが採用したAI関連製品も含め、同社でAI戦略を束ねるマスターズ氏の動きを紹介する。

マスターズ氏の「まずやったこと」と将来のビジョン 課題は何か?

 マスターズ氏の役割はVirgin Atlantic Airways全体のデータ利用を統括することだ。同氏の仕事はデータ分析システムの構築や運用にとどまらず、業務アプリケーションや顧客向けサービスの開発まで、幅広い領域をカバーする。特にマスターズ氏が力を入れているのは、AI技術の開発や利用だ。

 AI技術利用に当たってマスターズ氏はまず、以下の問いに対する答えを出すことに取り組んだ。

  • AI技術利用のためのインフラをどう作るか、どのような技術やツールを利用するか
  • 外部とのパートナーシップに際し、どのような企業と提携すべきか
  • AI技術関連の投資に関する方針は間違っていないかどうか
  • Virgin Atlantic Airwaysにとって「責任あるAI」とは何か

 マスターズ氏はAI技術利用の一環として、機械学習によるバイアス(偏見に基づいた偏った分析)をできる限りなくすことを重要視していると説明する。なぜならVirgin Atlantic AirwaysはAI技術による分析結果をビジネス領域の意思決定支援に用いているからだ。同社にとっては「AIモデルの中立性」と、「データを『正しく』分析する能力」が重要だとマスターズ氏は述べる。

「Unity Catalog」を採用

 2023年、Virgin Atlantic Airwaysに入社したマスターズ氏が最初に手掛けた仕事は、Databricksのシステムを導入することだ。Databricksはデータ分析技術を開発する企業で、同社のシステムを開発基盤として活用することで、生成AIアプリケーションを開発することができるとマスターズ氏は考えた。

 Virgin Atlantic Airwaysは2025年5月現在、Databricksのデータ管理ツール「Unity Catalog」を使用し、生成AIアプリケーション開発に利用するために集めたさまざまな情報源からのデータを統合している。

 AI技術が得意とする用途の一つは、情報の要約と分類だ。同社は、席や食事について特別なニーズがある顧客の情報を自動的に抽出し、AI技術によって顧客サービスの優先順位を付けている。

 顧客情報を収集するために、Virgin Atlantic AirwaysはGenesys Telecommunications Laboratoriesのコンタクトセンターシステムや、MicrosoftのCRM(顧客関係管理)システム「Microsoft Dynamics」といった複数の異なるシステムを使っている。そのため、データの保存場所が複数あるという課題があった。Virgin Atlantic AirwaysはUnity Catalogを利用することで分散したデータを一つの保存場所に集約し、検索や要約、ポリシー変更をしやすいようにしている。

チェックイン不要を目指す

 マスターズ氏はAI技術利用によって中長期的に目指しているのは、よりパーソナライズされた顧客体験の実現だ。そのためには今後、幾つかの課題を解決しなければならないと同氏は言う。大きな課題の一つは、プライバシー侵害の懸念をどう払拭(ふっしょく)するかだ。マスターズ氏は、「顧客は私たちが顧客ニーズについてもっと知って迅速に対応することを望んでいる」と分析する。

 将来のビジョンは、AI技術利用によってチェックインを不要にすることだとマスターズ氏は語る。「私たちは顧客のことを十分に知っているので、顧客はフライト当日に現れるだけでいい」(同氏)――。身元確認はシステムで実施する。このビジョンを実現するためには、マスターズ氏はシステムや用語の統合にこれまで以上に取り組む必要があると捉えている。「統合は今後数年間で大きく進むだろう」(同氏)

TechTarget.AIとは

TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...