航空会社のAI活用、束ねる人は?【前編】
ポイントは分かりやすさ 用語や略語を禁じたAI統括者のノウハウ
人工知能(AI)技術の利用が広がっているが、うまくいかないケースもある。英国の航空会社Virgin Atlantic Airwaysはどのようにして失敗を避けたのか。同社のAI統括者に聞いた。
英国の航空会社Virgin Atlantic Airwaysは人工知能(AI)技術の利用によって顧客体験を高め、航空業界の厳しい競争を生き抜こうとしている。同社でバイスプレジデントとしてデータとAI技術の利用を進めるのは、リチャード・マスターズ氏だ。同氏は、AI技術利用に当たって何を重視するのか。AI活用の成功の秘訣を探る。
VirginのAI担当バイスプレジデントはこんなことを重視する
マスターズ氏はオックスフォード大学(University of Oxford)で天体物理学の博士号を取得。データ分析分野を歩む前は、研究者として宇宙関連の仕事に携わっていた。「チリのアタカマ砂漠にある超大型望遠鏡で銀河を計測するための装置を作ったり、ハッブル宇宙望遠鏡のデータを用いて銀河の暗黒物質を調べたりした」(同氏)と振り返る。
宇宙関連の仕事を通じて「データ」に関心を持つようになったとマスターズ氏は語る。「望遠鏡から入ってくるデータは多くのノイズを含んでいた。ノイズを取り除いた後、分析するための本当に重要なデータが残り、それに基づいて洞察を得た」(同氏)――。この手法は、マスターズ氏は現在の仕事でも生かしているという。
Virgin Atlantic Airwaysは利用者体験の向上や顧客サービス品質の確保を目的に、積極的にAI技術を取り入れている。顧客データやフライト情報を分析するための基盤を構築し、現場での業務効率化だけではなく、経営陣がデータ分析から得られる洞察を経営判断に生かすことも目指しているとマスターズ氏は説明する。
マスターズ氏によると、Virgin Atlantic AirwaysにはAI技術利用のための適切なインフラと人材がそろっている。しかし、それでも日頃のデータ分析作業ではさまざまな問題が発生するという。例えば、社内の言葉遣いだ。「技術者は多くの専門用語や略語を使うので、慣れていない人だと分からなかったり、間違った解釈をしたりする恐れがある」とマスターズ氏は指摘する。同氏は技術者に対し、伝えたいことをより明確に表現するように促し、シンプルな言葉遣いによって関係者同士の理解を高めるようにしている。
研究者としての背景を持っているからこそ、マスターズ氏は高度な専門知識を持っていることと、相手に明確な説明をする重要性を肝に銘じている。分かりにくい表現や不要な情報もある意味で「ノイズ」だ。それを取り除いて、簡素化に取り組むことで、同氏はVirgin Atlantic Airwaysでさまざまなデータ活用を可能にしている。
後編は、Virgin Atlantic AirwaysにおけるAI技術利用の具体的な取り組みをみる。
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