従業員の不満がシャドーITを生む
勝手クラウド利用を“悪者扱い”するだけで本当によいのか?
IT部門や企業の許可なく利用されているクラウドサービスの数とリスクは、企業が考える以上に多い。ただし、単にその撲滅だけを考えていると、大切なことを見落とすことになる。
IT部門や会社に無断で導入されたシャドークラウドアプリ/サービスがどのくらい使われているかを把握していると、企業は考えるかもしれない。だがほとんどの場合、その数は過小評価されており、付随するリスクも軽視されている。米Hewlett-Packard(HP)と米Skyhigh Networkのセキュリティ専門家は、こう警鐘を鳴らす。
2014年9月に米カリフォルニア州サンノゼで開催したイベント「CSA Congress 2014 & IAPP Privacy Academy 2014」というイベントでは、シャドークラウドアプリ/サービスとそのリスクが議論の的になった。あるセッションでは、HPのクラウドセキュリティアーキテクト アンディ・ラドル氏と、Skyhigh Networksのシニアプロダクトマネジャー ハロルド・ビュン氏が、シャドークラウドアプリ/サービスを囲い込んで保護するためのベストプラクティスについて意見を交わした。
シャドークラウドアプリ/サービスに向き合う
このセッションによると、企業が取るべき最初のステップは、自社が使用しているシャドークラウドアプリ/サービスの数を特定することだという。Skyhigh Netowrksが公開している2014年第2四半期版の「Cloud Adoption and Risk Report」(クラウドの導入とリスクに関するリポート)では、同社の法人顧客が平均で約738個のクラウドアプリ/サービスを使用していることが明らかになった。
この調査リポートは、200社を超えるグローバル企業と1100万ユーザーのデータを網羅している。米Facebook、米Twitter、米LinkedInなどが提供するソーシャルメディアツールだけでなく、米Boxの「Box」、米Dropboxの「Dropbox」、米Appleの「iCloud」のようなオンラインストレージ同期サービスにも注目していた。
企業で使用されているシャドークラウドアプリ/サービスの数は、企業によって大きく異なるはずだとビュン氏は指摘する。例えばSkyhigh Networksが、全世界で7万人を超える従業員を抱える米Cisco Systemsの案件に対処したとき、Ciscoは従業員が使用しているシャドークラウドアプリ/サービスの数を50~70種だと見積もっていた。だが分析したところ、その数は3000種を超えることが分かったという。
さらにビュン氏によると、一見すると無害なソーシャルメディアサービスでも、非常に大きなリスクをもたらす恐れがあるという。Skyhigh Networksのある顧客企業では、1人の従業員が同じサイズの大きな動画ファイルをPinterestとGoogleの「YouTube」に何百個もアップロードしていたという事件が発覚した。Skyhigh Networksがアップロードされた動画ファイルを確認すると、ファイルに機密文書が埋め込まれていることが判明した。
シャドークラウドアプリ/サービスは必ずしも悪いものではなく、従業員の生産性向上に役立つこともある。ただし、大きなサイズのファイルが繰り返しアップロードされるなど明らかに異常な状況に気付くために、企業はシャドークラウドアプリ/サービスの使用を監視することが重要だとビュン氏は強調する。「正しい行為と正しくない行為を判断する方法はある」と同氏は言う。
ラドル氏はビュン氏の意見に同調する。そして次のステップとして、企業はシャドークラウドアプリ/サービスを阻止するのではなく、戦略的な目で見るべきだと主張する。シャドーアプリ/サービスの使用は一般的に、IT部門が従業員のニーズに応えていないか、IT部門の対応が従業員のニーズに付いていけていないか、柔軟性に欠けていることの現われだという見方もある。「クラウドサービスの使用を阻止しようとしても、良い結果にはならないだろう」とラドル氏は言う。
最高情報責任者(CIO)と最高情報セキュリティ責任者(CISO)が取り組むべきは、こうしたクラウドアプリ/サービスに光を当てて適切に保護し、プロビジョニングできるようにする役割を果たすことだとラドル氏は語る。そのためには、企業は従業員が使用しているシャドークラウドアプリ/サービスを特定する必要がある。この取り組みのためにHPは「Skyhigh Discover」を使用しているという。
シャドークラウドアプリ/サービスを検出するには、もっと単純な方法もある。従業員の経費の簡単なチェックもその1つだ。「帳簿システムを活用するのがよいだろう。多くの場合、誰かがクラウドアプリ/サービスの料金を支払っている。それは帳簿で確認できる。分類が間違っていない限り、誰かに払い戻しがなされているからだ」(ラドル氏)
セキュリティチームはLANやWANといった社内ネットワークの情報を監視・分析して、トラフィックとデータがどこへ向かっているのかを確認する必要があると、ラドル氏は指摘する。HPではプロキシのログイン情報を閲覧して、少なくとも社内のオンプレミストラフィックを把握している。さらにHPはネットワークフローの情報を分析し、可視性を確保している。従業員が米Amazon Web Servicesの「Amazon Web Services」(AWS)を使っている場合は、AWSへのSSHセッションを探して、従業員がサーバ管理やソフトウェア開発などの作業を行っているかどうかを判断する。
ラドル氏は、セキュリティイベントの監視からID/アクセス管理に至るまで、さまざまなセキュリティツールとサービスの使用を推奨する。「ツールは1つではない。組み合わせて使わなければ問題全体を把握することはできない」とラドル氏は話す。
HPはプロキシとファイアウォールのデータ監視に「HP ArcSight」など多くの自社製品を使用している。また「HP Autonomy」を使って、プロキシへのログインといったネットワーク情報の巨大データアーカイブを分析し、不審なインシデントや行動を探している。
実際、無駄骨を折る場合もある。だがHPが作りたいのはこうした監視体制なのだとラドル氏は説明する。「何か変わった状況が発生したら、その状況を特定できるようにしたい。それがビジネスチャンスになる場合もあれば、本当に悪質な攻撃者の場合もある。どちらにしても、こうした状況には対処する必要がある」(同)
ラドル氏とビュン氏は、次の2点を同じように強調している。1つは、クラウドアプリ/サービスを注意深く監視してもクラウドに起因する侵害を防ぐことができるわけではないこと。もう1つは、侵害が起こった場合の対応策を企業が用意すべきであることだ。
三菱UFJフィナンシャル・グループの米銀行Union Bankで上級監視官を務めるカリマ・サイニ氏は、クラウドでの重要なデータ侵害についてそれほど恐れていないという。「法規制に従っていれば、データは厳重に保護されている。それでも、従業員が使っている幾つかのクラウドサービスでは、重要度が比較的低いデータは漏えいする可能性がある」とサイニ氏は語る。「ソーシャルメディアとソーシャルマーケティングには、当行のような銀行が監視しなければならないものもある」(同氏)
セッションの参加者は、シャドークラウドアプリ/サービスは良いものになり得ることに基本的に同意している。カリフォルニア州パロアルトにあるセキュリティベンダーのAdallomで戦略/マーケティング統括責任者を務めるタイ・クライン氏は、企業がシャドークラウドアプリ/サービスを恐れるべきではないと考えている。「CISOは以前、クラウドのことになるとまるで刑務所長のように振舞っていた。だが今は、交通指導員のように振舞っている」(クライン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
5
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
-
6
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー