Computer Weekly製品導入ガイド
企業ITの主流になるDevOps
連続的なリリースを必要とする動きの速いソフトウェアプロジェクトでは、開発チームと運用チームを組み合わせることで時間を短縮でき、品質も向上する。だがそのためには文化的にも大きな変化が求められる。
アプリケーション開発チームとシステム運用チームの作業を融合させる「DevOps」は、アプリケーション開発と導入に対するニッチなアプローチだったが、今後1年ほどで主流へとシフトするだろうと米Gartnerは予想する。
実際に、この草の根的理念の魅力は大きく、グローバル2000社の4分の1がDevOpsを採用するとGartnerは予想する。ソフトウェアツールの市場規模は21.1%拡大して、2014年の19億ドルから2015年には23億ドルに成長する見通しだ。
関心は幅広い分野に及ぶとGartnerは見込んでいる。最近まで、DevOpsは主にクラウド事業者の他、金融サービス業者や通信事業者の一部が他社に先駆けて実験的に採用していたにすぎなかった。だが今では採用の幅が広がり(全社レベルではないにしても一部の部署で)、製造や小売、製薬、ライフサイエンスといった分野にも普及しつつある。
だが、ITコンサルティング企業Xceed GroupでDevOpsと継続的配信の手法を主導するベン・サンダース氏によれば、こうした右肩上がりの状況にあっても、多くの組織ではまだ懐疑的な見方が残っているという。
DevOpsはまだ「生まれたばかり」だ。これが一時的な現象で終わるものではないという確信が持てないことに加え、これが何を意味するのかについても一致した定義が確立していない。従って「単純にどこから始めればいいのかが、多くの人にとって大きな課題になっている」とサンダース氏は言う。
同氏によれば、DevOpsはアプリケーション開発部門と運用部門の連携を実現し、問題が浮上すれば導入時まで持ち越すことなくその都度対応する手法を指す。
「これは共有と、チームが結束して開発の歩調をそろえることに尽きる。その理念は、アプリケーションの動作に問題があれば運用チームが開発チームにフィードバックを提供し、確実に最善の解決策を取ることにある」(サンダース氏)
DevOpsの核心はペースにあると451 Researchの調査マネジャー、ジェイ・ライマン氏は言う。同氏は、「一般的にはスピード、アプリケーション導入までの時間、商品化までにかかる時間、競争力から始まる」と指摘した。
DevOpsのメリットを実証
組織がこのルートをたどると、作業の効率性が高まり、反応が良くなり(少なくともプロセス自動化のレベル上昇がその一因となる)、大幅なコスト削減につながり、人事面でもメリットがある。
ライマン氏は言う。「組織は、特に大企業は、人材を引き付けてつなぎ止めたいと思っている。だが旧態依然と見なされれば、優秀な人材を引き付けることも、つなぎ止めることもできない。しかもこの種の専門技能については本当に需要が大きい」
ただし、DevOpsのアプローチは何もかもバラ色というわけにはいかない。多くの場合、管理手法の変更と、単純に担当者をその気にさせることが大きな課題になる。DevOpsは開発者を中心とする草の根運動であることから、特に運用側にそれが当てはまる。
Xceed Groupのサンダース氏は、「人は変化を好まないので、最初は必ず抵抗に遭う。自分にマイナスの影響が出ると思われればなおさら抵抗は大きい」と指摘する。「例えば、テスターに対してテストケースを自動化すると告げれば、彼らは必然的に職を失うと考える」
従って、担当者に試験プロジェクトの数値を提供してどれほど時間が節約できるかを示すなど、DevOpsのアプローチのメリットを示すことが重要だ。プロジェクト完了までの期間を短縮できた場合のボーナスなどの形で、チーム全体にインセンティブを与えることも役に立つ。
だだ、DevOpsがあらゆる種類の開発に適しているわけではないことも忘れてはいけない。例えば、DevOpsは一般的にアジャイルとの組み合わせで進められることから、継続的に更新され、小規模なリリースが多く、配信の間隔が短いWebやモバイルアプリなどの開発には適している。
一方、規模の大きいバッチメインフレームプログラムや従来型のクライアント/サーバ型プログラムの構築にはこの方式は適していない。それでもライマン氏は、「DevOpsは新しいやり方を提示しており、このまま定着する」と予想する。
恐らく抵抗があることは同氏も認めた上で、例えばアプリが機能しない場合やサイトがダウンした場合などの対応に関してメリットがあることを考えれば、いずれはこれが必須になるとの見方を示した。「競合相手がこれを使い始めれば対応を迫られる。従って、いずれは定着するだろう」
ケーススタディ:Postcode Anywhere
「DevOpsは未来だ」。クラウドベースのアドレス管理サービスを手掛ける英Postcode Anywhereのマイク・クック最高情報責任者(CIO)はそう言い切る。「テクノロジー業界がリリースサイクルを早める動きが加速する中で、ユーザーが求める物を届けるため、企業は必然的に変わらなければならない。旧来のようなウォーターフォールモデルを使っていたのでは、それに対応するのは難しくなる」
同社は2001年に設立され、英Tesco、英Manchester City Football Club、伊Fiatなどを顧客に持つ。DevOpsは2014年初めごろから導入に乗り出した。
この動きは、事業の成長に対応するための全社的なビジネスプロセス見直しの一環として始まり、合計で12カ月を要した。プロジェクトの第1段階として、IT部門は機能横断的な製品開発チームを「孤立」させ、それぞれの役割を洗い出して、アジャイルソフトウェア開発の手法を導入した。
「アジャイルはDevOpsと相性がいい。必然というわけではないが、いずれも意思決定を速め、コラボレーションや意思疎通を促すという点でつながりがある」とクック氏。
次にチームメンバーから、顧客の声の役割を果たすプロダクトオーナーと、スケジュール通りに結果が出ていることを確認するスクラムマスターの役職を志望する人材を募った。
「適切な人材に適切な役割を持たせることが重要だ。その狙いは拡張性の支援にあり、従って人材という駒が重大な鍵を握る。これはいくら強調しても強調し過ぎることはない」(クック氏)
だが、この種の文化を変えるプロジェクトにおいて同様に重要なのは、プロセスの中での自分の役割と自分の仕事への影響、自分にとってのメリットについて、開発側と導入側の両方の担当者に理解してもらう手助けをすることだ。その目的は、担当者を乗り気にさせ、不安を感じさせないことにある。
第2段階として、全員が会社の目標に沿っていることを確認する目的で、プロジェクトチームを創設した。フルタイムのプロジェクト管理者と助手は、「取締役会から開発チームに至るまで、メッセージが上から下まで伝わって、誰もが戦略に関して同じ認識でいることを確認する」役割を担った。
最終段階では、豪Atlassianのイシュー・プロジェクトトラッキングソフトウェア「Jira」と「Confluence」のチームコラボレーションパッケージを導入して、ツールセットを標準化した。
「価格も法外ではなく、使い方は非常に単純だった。ツールセットが適切に採用されることは基本だ。あまりに複雑なツールでは足を取られてしまう」(クック氏)
この変化は、Postcode Anywhereの目標達成を支援する上で大きなメリットがあった。例えばソフトウェアリリースにかかる期間は6カ月から2週間に短縮され、事業上のリスクは大幅に低減した。
「“実行”ボタンを押すことは常にリスクが伴う。しかし1つの大きなリスクではなく、多数の小さなリスクに分散すれば、そうでない場合に比べてブランドが傷つく危険性は最小限で済む」とクック氏は言う。
だが最大の恩恵は、IT部門のやる気と満足度が高まったことかもしれない。
「チームに意思決定の責任を委譲して、指図することをやめれば、大きな自信が生まれて仕事に対する満足度が高まる。これは極めて前向きな姿勢だ」とクック氏は話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
5
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
6
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
10
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー