徹底解説:ストレージ仮想化、オブジェクトストレージにおける「SDS」の仕組みとはSDSの定義とトレンド【後編】(1/2 ページ)

「ソフトウェア定義ストレージ」(SDS)ほど見解に相違が見られる用語はない。「柔軟性」「使いやすさ」「スケーラビリティとパフォーマンス」「総所有コスト」の4基準で各SDSの長所と短所を評価する。

2017年06月05日 15時00分 公開
[Marc StaimerTechTarget]

 前編「徹底解説:vSAN、HCIベンダーが提供する「SDS」の長所と短所」では、vSANのようなハイパーバイザーベースのSDSと、ハイパーコンバージドインフラを構成するSDSについて紹介した。後編では、以下2つのSDSの種類について取り上げる。

  • ストレージ仮想化のSDS
  • スケールアウトオブジェクト/ファイルのSDS

ストレージ仮想化のSDS

 ストレージ仮想化のSDSは、SDS市場において、最も成熟したSDSだ。2000年初頭から存在しているが、当時は単に「ストレージ仮想化」と呼ばれていた。ストレージ仮想化のSDSは、基本的に全てのストレージサービスを含むストレージソフトウェアスタック全体を指している。x86アーキテクチャで動作し、ホストを高性能で高機能なストレージコントローラーに変化させるように最適化されている。ストレージ仮想化のSDSでは、サーバストレージと外部ストレージシステムを仮想化して、容量、データ保護ポリシー、パフォーマンス特性がそれぞれ異なる仮想ストレージプールを作成する。ストレージ仮想化のSDSは、基本的にx86サーバをストレージシステムに変換している。一部の製品では、VMを仮想ストレージアプライアンスとして動作させることも可能だ。ストレージ仮想化のSDSは主にアーキテクチャをスケールアップするが、一部の製品ではスケールアウトにも対応している。そのような製品は、専用の高コストなハードウェアを排除して低コストなサーバドライブを活用し、旧式のストレージシステムに再び役割を持たせ、データの移行を簡略化する目的で構築されている。ストレージ仮想化のSDSの主要なメーカー企業と製品には、DataCore Softwareの「SANSymphony」、Datrium、Dell EMCの「EMC ViPR」、ElastiFile、FalconStor、Formation Data Systems、日立データシステムズ(HDS)、IBMの「SAN ボリューム・コントローラー」(SVC)、ioFABRIC、Microsoftの「Windows Server 2012 R2」以降、NetAppの「ONTAP Cloud」、Nexenta Systemsの「NexentaStor」、OSNEXUSの「QuantaStor」、Starwind Software、StorONEなどがある。

ストレージ仮想化のSDSの長所

  • 柔軟性

 ベンダーが認定およびサポートしているx86物理ホストまたはVMであれば、そのほぼ全てで機能する。ストレージは全て仮想ストレージプールに変換されるため、古いストレージにもう一度役割を持たせることができる。スケールアウトの場合は、物理ホストやVMへのアクセスを任意のノードに許可できる。複数のコピーによるミラーリングは可能だが、コントローラーの単一障害点を防ぐためにミラーリングを使用する必要はない。なぜなら、ストレージ仮想化のSDSはソフトウェアとして準備したり、HCIと同様にサーバハードウェアにバンドルしたりすることが可能だからだ。

  • スケーラビリティとパフォーマンス

 クラスタでは各ノードの容量を増やしたり、ノードを追加して拡張したりできるため、柔軟なスケーリングが可能だ。一般的に、ストレージ仮想化のSDSは、アクティブ/アクティブ構成のサイロ化したストレージシステムの大半と同じものと考えられる。

  • 使いやすさ

 ハードウェアにバンドルされたストレージ仮想化のSDSは、非常に明快なストレージシステムだ。市販のコモディティハードウェアを利用し、拡張性が高い。ブロック(SAN)、ファイル(NAS)またはオブジェクトを提供するものもある。

  • 総所有コスト(TCO)

 ストレージ仮想化のSDSでコストが抑えられる最大の理由は、コモディティハードウェアとサーバベースのドライブにある。また、インラインデータ削減機能によってもコストが抑えられている。ほぼ全てのストレージ仮想化のSDSのTCOは、同等のストレージシステムと比べて圧倒的に有利だろう。

ストレージ仮想化のSDSの短所

  • 柔軟性の問題

 大半のストレージ仮想化のSDSは、ベンダーが認定およびサポートしている指定のコモディティハードウェアでしか動作しない。また、仮想ストレージアプライアンスとして実行可能な製品では、ベンダーが認定およびサポートしているハイパーバイザーが必要になる。

  • スケーラビリティとパフォーマンスの問題

 このようなシステムは、スペック上では容量について非常に高いスケーラビリティがサポートされているが、実際に使用すると多少の違いが見られる。ストレージ仮想化のSDSの容量は、x86サーバの制約を受ける。各サーバで処理できる容量は、x86サーバのパフォーマンスが許容できないほど低下しない範囲に限られる。ストレージ仮想化のSDSのスケールアウトは、サポートされるストレージコントローラーノードの数に上限があるため、クラスタ化の制限を受ける。さらに、パフォーマンスも同じ制限の影響を受けることもある。

  • 使い勝手の悪さ
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