そろそろ実用段階?
SaaSの躍進で重要性を増すモバイルブラウザ
SaaSの台頭や高速な3G携帯ネットワークの普及拡大を受け、ビジネスツールとしての利用に耐え得るモバイルブラウザの必要性が高まっている。
モバイルブラウザは長い間、スマートフォンの要素の中で二の次にされていた。レンダリング機能は貧弱で、Webページをナビゲートするには、禅の修行で要求されるような忍耐が必要だった。手軽にWebサーフィンすることなど考えられなかった。
しかし現在、SaaS(Software as a Service)の台頭や、高速なブラウジングが可能な3G携帯ネットワークの普及拡大を受け、端末メーカーは搭載ブラウザの品質向上を進めている。今ではスマートフォンのWebブラウザに、Webベースアプリケーションを通じてエンタープライズソフトウェアを提供できるようになっている。
「アプリケーションをモバイル端末に提供する場合、Webブラウザを利用すればかなり簡単だ」とNemertes Researchのアナリスト、マイク・ジュード氏は語った。
Nemertes Researchが最近実施した調査では、約3分の1の企業が端末の購入決定に当たって、モバイルWeb体験の質を考慮に入れることが分かったと、ジュード氏は述べた。
さらに同氏は、回答者の25%が、「従来の基本的なPIM(Personal Information Manager)だけでなく、CRM(顧客関係管理)系のアプリケーションをモバイル端末に提供しようと考えている」と答えたと語り、「すぐに大きなトレンドになるとはいえないだろうが、少なくとも一定の関心はある」と付け加えた。
Salesforce.comのモバイル部門担当副社長、チャック・ディートリック氏は、そうしたアプリケーションの提供は自然な動きであり、モバイル規格の充実がその背景にあると指摘した。
「携帯メールが浸透するとともに、端末でほかに何ができるかが模索されるようになった」とディートリック氏。「われわれのプログラムをモバイル化するのは非常に簡単だった。われわれのインフラは1つのアプリケーションであり、われわれはこれをターゲットに、130万の顧客すべてをサポートするモバイルソリューションを構築済みだからだ」
「Salesforce」は、現在最も普及しているSaaSプラットフォームの1つだ。ディートリック氏は、「Salesforce.comの製品に対しては、『高機能ブラウザ搭載スマートフォンをほぼ常時携帯する外勤者向けにモバイル化してほしい』という要望が高かった」と語った。
「現在、モバイル版への需要が急激に伸びている」(同氏)
しかし、業界全体で見ると、モバイルSaaSの普及はそれほど急速には進んでいないと、ジュード氏は語った。少なくとももう1~2年は、モバイルSaaSはニッチな位置付けにとどまりそうだという。
例えば、Googleの「Google Apps」に含まれるアプリケーションの一部は、小型の端末上ではまったく表示されないと、ジュード氏は語った。「こうしたアプリケーションのモバイル対応が行われる前提は、モバイル市場の規模が十分大きいことだ」
一方、Webアプリケーションがモバイルユースをサポートしていても、すべてのWebブラウザで同じように表示されるとは限らない。
例えば、AppleのiPhoneに搭載されているモバイル版のSafariは、使い勝手とWebサイトの正確なレンダリングで広く称賛されている。このWebブラウザは、オープンソースのWebKitをベースにした幾つかのモバイルブラウザの1つ。ディートリック氏は、WebKitは現時点において特に強力な技術だと強調した。
ほかのWebKitベースブラウザとしては、Nokia S60のネイティブブラウザや、Googleが開発中のAndroidに含まれるブラウザなどがある。
これに対し、BlackBerryやWindows Mobileのデフォルトブラウザはこれまでのところ、あまりぱっとしない。これらのWebブラウザは、グラフィックスの表示が崩れたり、複雑なページのロードに失敗することがよくある。両ブラウザをサポートする開発者は、顧客のWeb体験を改善するために奮闘していると報じられている。Research in Motion(RIM)は、BlackBerryのWebブラウザの新バージョンを試しており、MicrosoftもDeepfishという新プラットフォームをテストしている。Deepfishでは、レンダリング作業の多くが中央サーバで行われる。
しかし現在、ほとんどのモバイルSaaSアプリケーションは、完全な互換性のあるWebブラウザでなくても、有効に活用できる。こうしたアプリケーションは、余分な要素をそぎ落とした特別なモバイルサイトを提供する。モバイル専用のWAP(Wireless Access Protocol)を使って、主要機能をシンプルかつ高速に利用できるようにしている場合もある。
モバイルに特化したこうしたサイトを設計すれば、企業はアプリケーションを個々のOSに合わせてカスタマイズしなくても、多様な端末に対応できると、ジュード氏は語った。
「iPhoneやBlackBerryに対応したアプリケーションを作成するとなると、とたんに過大なオーバーヘッドが発生してしまう」(同氏)
だが、モバイルWebでは今後、さらに興味深い展開が進むだろう。Safariは絶賛されているが、開発者はより良いブラウジングの枠組みを現在も模索しており、モバイル端末でのブラウジングとデスクトップでのブラウジングをシームレスにすることを目指していると、ジュード氏は語った。同氏によると、Androidに含まれるWebブラウザは、プレビューボックスとズームインビューを組み合わせて利用できるもので、同氏はその初期のデモを見て期待を持ったという。
また、ディートリック氏は、同氏が目指すモバイルWebの目標を次のように要約した。
「肝心なのは、顧客体験を、基本的に頭を使わずに済むものにすることだ」と同氏。「技術が分からない顧客でも、ページを見ることができるようにしなければならない」
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