キーワードでひもとくバックアップ最新事情【第7回】
“スナップショット”と“レプリケーション”で重い処理はストレージ任せ
加速度的に増加するデータ。放置しておけば、バックアップの処理時間も長くなる一方だ。しかしスナップショットとレプリケーションをうまく使えば、稼働系サーバに負荷を掛けずにバックアップを行うことができる。
ストレージ側に処理を任せる
24時間動き続けなければならないサーバでは、できるだけデータバックアップに時間を費やしたくないだろう。また、たとえ土日に作業をスケジューリングしていたとしても、バックアップ処理に時間がかかり過ぎて月曜日の始業時間になってもバックアップが終わらず、業務に支障が出てしまうというケースも間々見受けられる。そんな状態になるまで肥大化してしまったデータを、どうすればサーバに負荷を掛けずにバックアップすることができるだろうか?
時々、HDDストレージは単なるHDDの集まりだと思い込んでいる方がいるが、サーバと同様にCPUやメモリを持っていて、データ入出力の処理を行っている。もちろん、そのためのOSだって搭載されているのだ。さらに、ストレージ自体でデータを安全に守る仕組みを持っているものもある。こうしたストレージはバックアップ処理をストレージ側で行うため、稼働系サーバへの負担を軽くしてくれる。
冒頭で挙げたような、サーバになるべく負担を掛けずにバックアップを取りたいケースでは、なるべくストレージ側で処理を行う方がいいに決まっている。今回はそのような、ストレージ側で運用できるデータ保護の代表的な手法である「スナップショット」と「レプリケーション」について分かりやすく解説してみたいと思う。それぞれ特性があり、うまく組み合わせることで絶大な効果を挙げることができる。
スナップショットとは?
まずスナップショットであるが、これは写真でいう「スナップショット」と同じように「その瞬間を切り取る」ことをいう。もちろん、切り取る対象は風景や人物ではなくデータなのだが、その瞬間を取っておくのに「データ自体」をコピーするのではなく、「ポインタ」と呼ばれる、データがどこにあるかという情報を記録するのが特徴だ。Windowsでいえば、ショートカットのようなものである。ポインタ自体のデータ量はごくわずかなので、ほんの数秒でどのデータがどの場所にあるかという情報を取ることができる。
スナップショットの最も優れた点は、ポインタ情報を使うことにより、スナップショットが作成したデータ領域を、元のデータ領域とまったく同じ内容の別データ領域として見せかけることができるところにある。別のサーバからスナップショットのデータ領域にアクセスすると、そのサーバのローカルディスクとして認識される。また、Windowsであればネットワークドライブとして使用することができる。
そのため、上図のように稼働系サーバとは別にバックアップ専用サーバを用意して、スナップショットのデータ領域をマウントすれば、このサーバ上だけでバックアップ作業を行うことができる(図1)。こうすれば、稼働系サーバ自体ではバックアップ作業を行う必要がなくなる。これで、稼働系サーバのバックアップ作業に掛かる負荷や時間をほとんど気にする必要がなくなるのだ。
このスナップショットを定期的に行うことで、それほどデータ容量を消費することなく、多くの世代の「瞬間データ」を取っておくことができる。そのため、最新のバックアップ内容だけでなく、ある特定の時点までさかのぼって過去のデータ内容に戻すことが可能になる。また、複数サーバのデータのスナップショットを一挙に取得して1台のストレージ内に保存し、バックアップ専用サーバでこれをマウントすれば、あらゆる種類のOSのサーバデータを一元的にバックアップでき、運用がとてもシンプルになる(図2)。
ここまでの説明で、恐らく次のような疑問を持たれた読者も多いかと思う。つまり、「ポインタが指し示す元データ自体は常に更新されているので、ある瞬間のデータの内容を保持し続けることはできないのでは?」ということである。しかしスナップショットでは、データが更新される際に直前のデータを別の場所に退避させ、ポインタはその退避させた場所を指し示すようになっている。この仕組みにより、ある特定の瞬間でのデータの状態を保ち続けることができるのだ。
また、「スナップショットで作成されたデータ領域にアクセスする際は、結局ポインタ経由で元のデータ領域を読みに行くのではないか?」という素朴な疑問が浮かぶかもしれない。これは、まったくその通りである。スナップショットのデータ領域にアクセスすると、結果的には稼働系サーバのデータ領域にアクセスすることになるため、稼働系サーバの負荷は下がっても、ストレージ自体の負荷が下がることにはならない。また当然のことながら、元のデータ領域に障害が発生すると、スナップショットも成り立たなくなる。そのため、通常のデータバックアップに取って代わるものではないという点には、くれぐれも注意されたい。
迅速に復旧できるローカルレプリケーション
では、元のデータ領域に障害が発生しても復旧できるようにするには、どうすればいいのだろうか? そこでレプリケーションの出番である。レプリケーションは文字通り、データの複製を作成することである。特にストレージ内部でデータを複製することを「ローカルレプリケーション」(クローニング、ミラーリングなどと呼ぶ場合もある)といい、HDD障害が発生してもデータは守られる。
データを復旧する際には、通常のバックアップとは異なりリストアの作業が必要なく、複製されたデータ領域をマウントし直すだけなので、短時間で運用を再開することができるのが大きな特徴である。ただし、元データの完全な複製を作成するので、元データ量と同じだけのディスク容量が必要になることを念頭に置く必要がある。
また、基本的に直近の状態のデータを複製するので、データ内容をある特定の時点のものに戻すような目的には向いていない。ただしこの点については、ローカルレプリケーションとスナップショットを併用することでカバーできる。元データを保護することができないスナップショットの欠点をレプリケーションで補い、複数世代のデータを保持するには向いていないレプリケーションの欠点をスナップショットで補うわけだ。
災害対策にはリモートレプリケーションを
さらに災害対策まで考慮するのであれば、遠隔地にネットワーク経由でデータの複製を作成する「リモートレプリケーション」の検討をお勧めする(図3)。
災害対策として導入しやすいものといえば、テープにバックアップを取って遠隔地に保管する方法があるが、頻繁にテープを運搬するのは運用上面倒である。例えば、1週間置きにテープを運搬する場合だと、復旧するタイミングによっては1週間前の古いデータにしか戻すことができない。また、データを復旧するためには、別途ストレージを用意して時間のかかるリストア作業を行う必要がある。そのため、システム復旧にかなりの時間がかかることを覚悟しなければならない。
その点、リモートレプリケーションであれば、毎日でもデータの更新を行うことができ、復旧もデータ領域をマウントし直すだけなので、作業時間を大幅に短縮できる。データの内容が重要であればあるほど、リモートレプリケーションの導入をお勧めしたい。
以上のように、ストレージ側で行うデータ保護の仕組みをうまく組み合わせることで、稼働系サーバに負担を掛けることなくバックアップや災害対策を行うことができるのである。なお、実際の導入に当たっては、稼働系サーバへの影響度合い、データの重要度、システム予算など、あらゆる観点からの検討が必要だ。
<筆者紹介>
羽鳥正明
EMCジャパン株式会社 マーケティング本部 プロダクト・マーケティング・マネジャー
同社にてバックアップ・リカバリ関連製品のプロダクト・マーケティングを担当。
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