廉価なクラウドストレージも有力な選択肢に
中堅・中小企業のための効果的なバックアップ対策とストレージオプション
盗難、落雷、故障――予期せぬ事態の備えにバックアップは重要だ。IT専門部署がないような中堅・中小企業向けの、ディスクとクラウドストレージを利用するバックアップ対策を紹介しよう。
バックアップは重要だ。きちんとしたバックアップ対策がなければ、落雷による事故、空港などの公共施設でのノートPCの盗難、ハードウェアの重要部品の予期せぬ故障などが、企業の存続そのものを危うくする事態につながりかねない。
しかし中規模企業は従来、バックアップ対策の管理に関しては難しい立場に置かれている。バックアップ用のシステム、ハードウェア、管理機能は主として大企業ユーザーを対象としているため、これらのソリューションは中堅・中小企業(SMB)にとっては大げさ過ぎるのだ。それに、IT専門部署さえ存在しない企業で、バックアップに何千ドル(場合によっては何万ドル)もの費用を支出する理由を見つけるのは難しい。
しかし、今日の環境では状況が一変した。現在ではどんな企業でも、こういった“保険”に掛かっていた費用の数分の1のコストで、シンプルながらも効果的なデータ保護を実現できるのだ。以下に、SMB向けの効果的なバックアップ対策を紹介しよう。
ディスクベースのバックアップオプション
従来のバックアップ対策の主役はテープだった。優れたテープドライブとメディアの信頼性、扱いやすさ、保存容量当たりのコストという点で、ほかに匹敵するものがなかったからだ。しかしHDDの記憶容量の増大に伴い、ストレージコストが大幅に低下したことで、ディスクベースのバックアップの費用効果が高まってきた。加えて、ディスク方式には高速なアクセスと容易な管理という利点もある。
今日のSMB向けのディスクベースバックアップシステムの中には、例えば、Microsoft Windows Small Business Serverが動作するマシンにリムーバブルHDDを差し込むだけで終わり、といったシンプルなものもある。MicrosoftのSystem Center Data Protection Managerなどのソフトウェアを利用すれば、バックアップを自動化する、クライアント向けのポリシーを設定する、アーカイブを管理するといった機能に加え、米クラウドプロバイダーのIron Mountainと連携してリモートバックアップを実行するといったことも可能だ。複数のマシン間での柔軟な割り当てが可能な高機能型ストレージハードウェアに投資するという選択肢もある。ディスクベースのバックアップは、動的なバックアップ、高速なリカバリ(テープを挿入し、ファイルの場所を探し、比較的低速なインタフェースを通じてファイルをコピーするといった一連の操作が不要)、そして総所有コスト(TCO)の削減(ディスクの使用寿命はテープよりもずっと長い)を可能にするのだ。
しかしテープベースのバックアップと同様、ディスクベースのバックアップも、ハードウェアとソフトウェアへの初期投資が必要となる。さらにハードウェアとソフトウェアを構成するのに必要な管理オーバーヘッドに加え、これらのコンポーネントの継続的な保守と管理も必要とされる。
二次的バックアップ対策としてのクラウドストレージ
インターネットの浸透に伴い、クラウドストレージ──バックアップおよび将来のリストア用にデータを流し込める巨大なディスクスペースの“塊”──が選択肢として浮上してきた。これは、複数のオフィスや多数の外回りスタッフを抱える企業にとっては魅力的な選択肢だ。クラウドストレージを利用すれば、クライアントおよびサーバ上のデータが定期的にリモートサイトにアップロードされる。こういったリモートサイトは、複数のデータセンター、冗長ストレージ、保証されたアップタイムと可用性を提供するプロバイダーの施設に置かれるのが一般的だ。このデータは、インターネット接続が可能な場所であればどこからでもアクセスし、リストアに利用したり、再ダウンロードしたりすることができる。
米Seagateのi365部門が提供するSaaS(Software as a Service)型オンラインバックアップソリューション「EVault」のようなバックアップ製品では、データを直接インターネットにバックアップできるため、ディスクや管理ソフトウェアに投資する必要がなく、社内のバックアップポリシーを設定するための手間も省ける。
クラウドバックアップソリューションの主要な短所かつ最大のリスクは、「災害が発生して直ちにリストアする必要が生じたときに、データが即座に利用可能であるという保証がない」ということだ。ディザスタリカバリ対策としてクラウドに全面的に依存する企業は、自社の事業継続をリスクにさらすことになる。ダウンロード速度、プロバイダーの利用可能性、さらには日常的なメンテナンスといったリスクだ。しかし、クラウドが二次的なバックアップ対策としては有効であることは確かだ。災害発生時に備えたバックアップ用としては今後も社内のディスクに頼りつつも、月次、四半期、年次のアーカイブ保存の大半をクラウドに移行すれば、(利用される可能性が低い)古いデータを維持するために自社のローカルリソースに投資しなくても済む。
今日の経済状況では、SMBにとってディスクベースのバックアップ対策とクラウドストレージオプションが、コストとデータ管理の両面で最も合理的な方法だ。ディスクは高速なアクセス、迅速なリカバリ、動的なバックアップを可能にする。一方、クラウドはバックアップ保護対策として非常に優れた二次的レイヤーを提供し、バックアップサポート用の高価なハードウェア/ソフトウェアを自前で調達するのに比べて有利な点が多い。
本稿筆者のジョナサン・ハッセル氏は米Sun Valley Groupの社長。コンサルティングのほか、書籍の執筆や講演なども手掛ける。著書には、『RADIUS』『Learning Windows Server 2003』(以上O'Reilly Media刊)『Hardening Windows』『Windows Vista: Beyond the Manual』(以上Apress刊)などがある。
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