サーバ仮想化におけるライセンスの選択【第4回】
【徹底比較】サーバ仮想化ソフトウェア主要4製品 導入コスト比較! ~本番環境における試算
VMware vSphere、Hyper-V、Citrix XenServer、RHEV for Server。サーバ仮想化ソフトウェア主要4製品の導入コストを比較。サーバ仮想化を本番環境で導入したケースを想定しコストを試算した。
第3回の「サーバ仮想化ソフトウェア主要4製品 導入コスト比較! ~技術検証用途における試算」では、サーバ仮想化の導入形態を「技術検証用途」とし、仮想化ソフトウェア製品ごとに導入コストの試算と比較を行った。第4回では、「サービス提供用途(本番環境)」における仮想化ソフトウェア製品ごとに導入コストの試算と比較を行う。
試算の前提事項
第3回でも挙げた導入コスト試算の前提事項を再度取り上げる。留意事項は第3回と全く同様である。下記を踏まえ、できるだけ類する機能を持つエディションやオプション製品を選択する。なお、選択の仕方にはいろいろなパターンがあるので、本記事の試算は一例として捉えてほしい。
計算対象
◆ハードウェア
- ハードウェアとハードウェア保守コストは除外する
◆ソフトウェア
- ソフトウェア本体とソフトウェア保守のコストを考慮する
- ハイパーバイザー上の仮想マシンに接続するクライアントPCのOSコストは除外する
- サポート状態の条件をそろえるため、ハイパーバイザーの保守コストは考慮するが、運用管理ツールを導入するサーバ上のOSの保守コストは除外する
- 仮想マシンのゲストOSコストは今回の試算では除外する(※1)が、1~10台程度の仮想マシンが1仮想サーバ上で稼働する想定とする
- マイクロソフトのサーバOSについては、ボリュームライセンスで購入する
(※1)編注:2011年3月11日
ただし、マイクロソフトのWindows Server 2008 R2には、ゲストOSのコストが含まれている。
運用の前提
- ハイパーバイザーを管理するツールは、複数台をGUIで管理できるものを使用する
- 追加のCAL(Client Access License)の購入を不要とするため、メンテナンスなどでサーバにアクセスする人数は2人までとする
ケース2:サービス提供用途(本番環境)
第3回のケース1に加えてライブマイグレーションとバックアップ、運用監視、高可用性(HA)を導入する想定で試算した。ハードウェアの配置やスペックは、CPUのソケット数を4とした仮想サーバ9台と、運用管理ツール(ハイパーバイザー)を導入するためのサーバ1台である(図2)。
本番環境を見越したサービス提供用途であるため、機能的には無償の範囲でできるとしても商用サポートを必ず付与するものとし、本番環境のためサポートレベルは24時間×7日間とした。
このケースで必要なライセンスコストは表2のようになる。
表2 ケース2の初期ライセンスコスト
以下、内訳の説明では、第3回のケース1との相違点のみを解説している。
VMware製品を利用したときの導入コスト内訳
導入する9台の仮想サーバのCPU数からライセンス数を算出すると、4CPUを持つ仮想サーバ9台なので、36ライセンスとなる。運用監視機能では、VMware vCenterにアラーム機能としてライブマイグレーションとHA(高可用性)を標準で備えたためStandardを選択し、バックアップを行う「VMware Data Recovery」をサーバ台数分の9台購入した。
VMware vCenterは、3台を超える利用となるのでStandardを選択している。
これらを合計すると、金額は767万3140円となった。
Hyper-V製品を利用したときのコスト内訳
このケースでは、ハイパーバイザーでライブマイグレーションと高可用性(HA)を利用できるようにする必要がある。Windows Server 2008 R2 Standardではクラスタ構成を組めないため、Enterprise以上が必須でありこれを選択した(※2)。仮想サーバは9台なので、9ライセンス分を購入した。また、バージョンアップやサポートを必要したためSA(Software Assurance)も付与した。
(※2)Enterpriseを選択した理由についての補足
「Hyper-V Server 2008 R2」は無償だがサポートに制限がある。「Windows Server 2008 R2 Standard」ではライブマイグレーションができない。以上の理由でEnterpriseを選択した(2011年3月11日)。
Select Licenseの利用条件に当てはまるユーザーであれば、より安価に導入できる場合がある(2011年3月28日)。
仮想サーバや仮想マシンの管理に加えて、バックアップと運用監視の機能も利用するため、「Server Management Suite Enterprise」(以下、SMSE)ライセンスを選択した。
System Center製品を利用する場合、製品ごとに管理対象となる仮想サーバ分のMLライセンスが必要だが、SMSEはこのMLライセンスをまとめて安価に提供するスイートである。SCVMMのサーバライセンスはSMSEに含まれているため、SMSEと、SCVMM以外で使用するSystem Center製品のサーバライセンスのみを購入することで利用が可能になる。
仮想サーバは9台なので、9ライセンス分をSMSEで購入した。SCVMMの他に利用する「System Center Operations Manager」(SCOM)のサーバライセンスを1つ購入している。
これらを合計すると、金額は851万6000円となった(※3)。
(※3)おわびと訂正:2011年3月11日
本記事に関してマイクロソフトから指摘をいただき、以下のように訂正させていただきました。関係者の方々にはご迷惑をお掛けいたしました。
(訂正前)
SCVMMの他に利用するのは「System Center Data Protection Manager」(SCDPM)と「System Center Operations Manager」(SCOM)なので、それぞれのサーバライセンスを1つずつ購入している。
これらを合計すると、金額は868万4000円となった。
(訂正後)
SCVMMの他に利用する「System Center Operations Manager」(SCOM)のサーバライセンスを1つ購入している。
これらを合計すると、金額は851万6000円となった。
Citrix製品を利用したときのコスト内訳
運用監視、高可用性(HA)を利用するため、Advancedを採用した。このエディションは2010年6月に新設された廉価版だ。仮想サーバが9台で、サーバ単位のライセンスなのでライセンス数は9となる。保守コストについては不明なため、ソフトウェア購入金額の20%として試算した。ライブマイグレーションは無償バージョンから含まれているが、バックアップ機能はエクスポートで対応するか別途サードベンダーソリューションの導入が必要になる。今回はエクスポートで対応することとした。
合計した結果、金額は88万9283円となった。
RHEV for Server製品を利用したときのコスト内訳
4CPUの仮想サーバが9台となったので、36CPU分のライセンスが必要である。また、4CPUソケット分の高可用性(HA)機能を仮想サーバの9台分購入している。運用監視機能はRHEV for Serverに含まれるが、バックアップ機能はエクスポートで対応するか別途サードベンダーソリューションの導入が必要になる。今回はエクスポートで対応することとした。
合計した結果、金額は364万6400円となった。
ケース2:総括
やはりCitrix XenServerが価格的には安価となった。運用管理ツール(周辺運用)が標準のハイパーバイザーのエディション内にあり、まず欲しい機能が低位エディションでそろうようにした工夫が伺える(VMware vSphere 4もその方向性である)。ただし、運用監視機能がCitrix XenServerにあるため、Citrix XenServer自体に障害が発生したときの監視や、仮想マシン稼働の継続性については疑問が残る。
Hyper-Vは、ハイパーバイザー自体の金額ではVMware vSphere 4に比べて優位性があるものの、周辺運用を含めると金額が逆転してしまった。
RHEV for Serverは安価ではあるが、全体的な機能の充足感と兼ね合わせると検導入にはさらなる吟味が必要である。
「VMwareは高い、Hyper-Vは安い」とは言い切れない
今回の試算基準では総合的に見て、Citrix XenServerの価格優位性が目立った。また「VMwareは高い、Hyper-Vは安い」とされてきたが、適切にエディションの選択をし、SAや運用管理ツール(周辺運用)まで含めて試算すると、必ずしもそうなるケースばかりとは言い切れないことも分かった。
ただし「機能がある」といってもその成熟度には差がある。例えば、VMware vSphere 4やHyper-Vには存在する統合的なバックアップソリューションがCitrix XenServerには存在せず、エクスポートなどで代替をする必要がある。数台ならよくても、数十~数百台のバックアップの場合、現実的でないと認識されるかもしれない。つまり、他の機能でも「普通にできると思っていた」機能が高位エディションに属しており、予期しない費用が必要になるといったこともあるかもしれない。
対策としては、各機能についてどの程度のものならなくても許容できるのか、実機で試験を行った上での選択が必要だろう。とはいえCitrix XenServerは、VMware vSphere 4に肉薄する管理機能のラインアップと、ライブマイグレーション、高可用性(HA)、運用監視などの「皆が欲しがる」機能を選別し無償または安価に導入できるようエディションを構成している。これは、エンドユーザーのスタートアップから大規模化へと転換する過程を上手にガイドしており評価できる。
また、「費用が安い」にも注意が必要だ。今回試算したのは初期導入コストの一部だが、本来はランニングコストも評価しなければならない。その中にも、保守コストなど購入物に関連するものと、スペースコスト、消費/冷却電力コストなどシステムを動かすために発生するものがある。費用対効果(TCO)の観点ではここまで検討が必要だ。この試算結果によっては、高いといわれる「仮想化ソフトウェアの導入コストなど微々たるもの、電力コストの削減分で十分ペイできるので利便性の方が大事」という判断が下される場合すら考え得る。
第3回、第4回ではゲストOSの価格を考慮せず計算した。次回の第5回では、ゲストOSのライセンス体系について整理する。
西川 麗(にしかわ れい)
電通国際情報サービス ビジネスイノベーション本部 クラウド事業推進センター クラウドアーキテクトグループ
Java開発環境/ソフトウェアテストの技術検証、コンサルティングを経て、現在は基盤環境である仮想化技術の技術検証や、VMware製品を中心としたクラウドサービスの構築・運用設計に従事している。
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