教えて経理部長【第10回】
ERP導入で連結決算を早期化するには
ERPを導入することで連結決算を早期化したい――そう期待する経理部門は多い。IT部門がその期待に応えるには親会社と子会社の勘定科目やマスターの統一がポイントになる。
連結決算の業務プロセス
回答 早期化の話を始める前に、連結決算の業務プロセスを確認する。多くの会社の連結決算の業務プロセスは以下のようになっている。
| 順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 子会社から単体財務諸表など連結決算に必要な情報を収集する |
| 2 | 各会社の単体財務諸表を連結財務諸表の勘定科目に修正する |
| 3 | 子会社・親会社の財務諸表を合算する |
| 4 | 連結精算書上で以下のような連結仕訳を行う (1)投資と資本の相殺消去 (2)連結グループ会社同士の債権債務の相殺消去 (3)連結グループ会社間の取引の相殺消去 (4)未実現損益の消去 (5)持分法の適用 |
| 5 | 完成した連結精算表を基に連結財務諸表を作成する |
| 6 | 注記、セグメント情報などを作成し、開示書類を完成させる |
上表1の連結決算に必要な情報は、表計算ソフトのスプレッドシートの定型化したフォーマットで収集されることが多い。そのフォーマットの集合を一般に連結パッケージと呼ぶ。その連結パッケージで収集した情報を連結会計ソフトに入力して、2から5の作業を行う。その意味では、連結決算の手続きの多くの部分はシステム化されており、ERP導入による改善の余地はないように思える。
債権債務や会社間取引の相殺がボトルネック
しかし、グループ会社に共通のERPを導入して運用することで、上表4の(2)と(3)の作業量を大きく軽減できる可能性がある。連結決算の過程で、多くの工数を必要とするのは、4の(2)の債権債務の相殺消去や、(3)のグループ会社間取引の相殺処理である。これは、連結パッケージに入力された他の連結グループ会社に対する債権債務や取引金額の情報を基に、連結精算表上で相殺処理する作業である。
機械的に相殺すれば済む作業のように思える。しかし、実際には各社が報告する金額に差異があり、その調査のため親会社の連結担当者が子会社に問い合わせする作業などが必要となり、結果として、大変な作業量となることが多い。
相殺処理が大変な理由
A社が作成した連結パッケージにあるB社に対する売上金額や売掛金は、あくまでA社の基準で算出した数値である。これらは、必ずしもB社が把握しているA社からの仕入金額や買掛金と一致するわけではない。例えば、以下のようなケースが考えられる。
- A社では今期の売り上げに計上したが、B社では来期の仕入れとして計上していた
- A社ではB社に対する販売報奨金を販促費用として経費処理しているが、B社ではA社からの仕入れの減額として処理している
- A社ではB社の支店ごとに取引先マスターコードを設定しているが、B社ではA社に対する債務を1つの取引先マスターコードで管理している
こういった連結グループ会社ごとの処理方法や勘定科目、取引先コード設定の違いなどが、会社間の債権債務や取引額の差異として集積され、相殺処理を難しくしているのである。
連結決算早期化のためにERP導入で考慮すること
この問題を解決するために、ERPの導入では処理方法や取引先マスターの設定方法、勘定科目の統一などを行う必要がある。これにより、各社の債権債務や取引金額の情報が同じような基準で計上され、統一的に取り扱えるようになる。さらに、グループ会社間の取引データにはフラグを付けて識別可能とする。こういったことだけで、ばらばらの個別業務システムを使っている場合に比べて相殺作業を大きく効率化でき、連結決算早期化に寄与することになる。
ERPの特性を見定めて早期化実現を
取引データと会計データが結びついているERPを複数のグループ会社で共通的に使うケースでは、連結グループ会社同士の債権債務の特定や、グループ会社間取引の特定を比較的効率的に行える。これによって連結決算早期化の効果が期待できるだろう。
単体決算の早期化についてこの連載の第1回「自動化がポイント、決算早期化に必要な会計システムの要件とは」で述べたように、高度なERPを導入すれば決算早期化が自動的に達成できるというわけではない。しかし、ポイントをよく把握した上で、導入するERPの特性を生かして改善に取り組めば、必ず早期化の成果が得られるであろう。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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