エンタープライズディスクストレージ製品紹介:日本IBM
ビッグデータ管理を簡素化するストレージ「IBM XIV Storage System Gen3」
近年、多くのハイエンドストレージがデータの階層化機能を搭載している中、運用管理の簡素化を目的とする階層化がかえって管理の煩雑化を招く場合もあると指摘する日本IBMが、新たなストレージ製品を市場投入した。
IBMのハイエンドストレージ製品といえば、メインフレーム時代からの実績に裏打ちされた超高性能・超高可用性なシステムというイメージが強い。IBMは昔からこの分野で強さを発揮してきたが、数年前からこれまで同社のポートフォリオにはなかった製品を提供している。それが「IBM XIV Storage System」(以下、IBM XIV)である。
この製品は、2008年に米IBMが買収したストレージベンダーXIVの技術をベースにしたハイエンドストレージである。
連載インデックス
- 日本HP:QoS制御とデータ階層管理の自動化を実現する「HP StorageWorks P9500」
- 日立製作所:ストレージ階層の仮想化・自動化を実現する「Hitachi Virtual Storage Platform」
- 富士通:最大容量と可用性にこだわったハイエンドストレージ「ETERNUS DX8000」
- EMCジャパン:仮想化・クラウド時代のストレージ「Symmetrix VMAX」
- ネットアップ:独自のキャッシュ技術でストレージの階層化を実現する「FAS6200シリーズ」
- 日本オラクル:ZFSを活用した拡張性が強み「Sun ZFS Storage Appliance」
- デル:データ管理を自動最適化するストレージ「Dell Compellent」
既に充実したポートフォリオを持っているように見える同社が、なぜあえてこのような製品を投入したのか? 日本IBM システム製品テクニカル・セールス ストレージ・テクニカル・セールス アドバイザリーITスペシャリスト 松本宇史氏は、次のように説明する。
「IBM XIVはビッグデータに対応した新世代のストレージ製品という位置付けになっている。ビジネスデータの容量はこれまでとは比べものにならないスピードで増加し続けている。そのため、これまでのやり方ではデータを管理するために膨大な手間とコストが掛かってしまう。IBM XIVでは、たとえデータが急激に増えた場合でも、人手を掛けずにシンプルにデータを管理できる仕組みを提供する」
独自の設計思想「Tierlessアプローチ」
その鍵を握るのが「Tierlessアプローチ」と呼ばれる独自の設計思想だ。近年、多くのハイエンドストレージ製品では、データの階層化機能をウリにしている(関連記事:情報ライフサイクル管理(ILM)を支える階層型ストレージ)。しかし松本氏は「最近では、データ階層化だけが自社のデータ管理にとって必ずしも最良の解ではないとの認識が多くの企業で広まっている」と指摘する。
その理由について、松本氏は「運用管理を簡素化するために導入したはずのデータ階層化が、かえって管理を煩雑化すること場合がある」と語る。データ階層化では、もともとファイバーチャネル(FC)ディスクしかなかったストレージ環境にSSD(ソリッドステートドライブ)やSATAディスクを新たに導入したり、アプリケーション個々のサービスレベルを細かく定義したりする。また、階層化の複雑なポリシーを定義し、新たな運用管理ツールを導入するなど、データ階層を管理するために必要な作業が発生する。
一方IBM XIVは、データの階層化という概念を一切なくしてしまおうという発想に基づいている。ユーザーがボリュームのサイズと数を指定すれば、後はストレージ装置側で最良の性能が発揮できるデータエリアの割り当てや配置を自動的に実施する。また、独自の仮想化技術によって、ストレージの物理レイヤーがユーザーからは完全に隠蔽される。そのため、ディスクドライブの種別やRAIDタイプなどを一切考慮する必要がない。一般的なデータ階層化と比べて大幅に管理作業が簡素化されるというわけだ。
完全グリッド構成によるスケールアウト型ストレージ
また一般的なハイエンドストレージアレイでは、コントローラー部にCPUやメモリが搭載され、その下にディスクドライブが複数ぶら下がる構成となっている。IBM XIVでは「モジュール」という構成要素を複数つなぎ合わせることで、ストレージシステム全体を構成する。
個々のモジュールにはそれぞれCPUとメモリ、そして12台のSASディスクドライブが搭載されている。モジュール間はInfiniBandの高速バスで接続され、互いが協調動作することでシステム全体としての機能を実現する。つまり、完全なグリッド型アーキテクチャになっているわけだ。
データは1Mバイト単位の細かいブロックに分割され、複数のモジュール間に分散して保管される。データアクセスのためのI/O処理は、複数のモジュール間で並行処理される。システム全体としては極めて高いスループットを実現できる。さらに、ストレージ装置が自動的に判断・実行してくれるため、データ階層化の設計やパフォーマンスチューニングといった管理作業が不要になる。「Tierlessアプローチによる管理の簡素化」とは、こうした仕組みのことを指している。
ディスクドライブの種類も、データ階層化のように複数の種類のディスクドライブやRAIDタイプを混在させるのではなく「容量2Tバイト、7200rpmの3.5インチSASドライブ」の1種類のみだ(2011年9月現在)。このことからも、データ階層化のアプローチとは全く異なる発想に基づいて性能や管理性の向上を目指した製品だということが分かるだろう。
松本氏によると「IBM XIVのアーキテクチャは、障害発生時の回復処理においてもメリットがある」という。IBM XIVではデータをディスクに保管する際、同時に必ず別のモジュール上のディスクにデータブロックのコピーを保管し、データの冗長性を確保している。ある特定のモジュールで障害が発生した場合、残り全てのモジュール上にデータのコピーが分散して配置される。データのリビルド処理もそれら全てのモジュールで並行分散処理される。従って、一般的なRAID構成の場合と比べ、はるかに高速にデータのリビルドが行われ、リビルド中のアクセス性能の劣化も最小限に抑えているという。
また、ディスク容量の増設もオンラインでモジュールを追加するだけで済む「スケールアウト型」のアーキテクチャを採用している。新たに追加したモジュールのディスクへの既存データの再配置は、これもIBM XIVがバックグラウンドで自動的に実施するので、一切人手を掛けずにアクセスの偏りによるホットスポットの発生も回避できる。データが急激な勢いで増え続けるビッグデータに対応していく上で、これは有用な機能だといえよう。松本氏も次のように述べる。
「近年のビジネスアプリケーションは、ストレージ容量の増加やI/Oの傾向などを予測しにくくなってきている。また、異なるアクセス傾向を持つ多種多様なアプリケーションを、単一のストレージ上に集約するケースも増えてきている」。さらに「それぞれのアプリケーションのサービスレベルを細かく定義し、さらに将来予測を立てるとなると、手間やコストが掛かるだけでなく、アプリケーションの稼働、ひいてはビジネスの立ち上げなどが遅れてしまう」と指摘する。
もちろん、手間やコストを惜しまずに、最高レベルの性能と可用性を目指す必要があるアプリケーションもある。そうしたアプリケーションは、基幹系システムの中でもごく一部に限られる。従って、「IBM XIVのように自動的に最適なレベルの性能を維持するストレージの上にアプリケーションを集約し、管理工数をまとめて節約した方がトータルで見た場合の効率性やビジネスのスピードはアップする」というのが同社の主張である。
ストレージ管理作業の効率化・簡素化にこだわりが
その他にも、IBM XIVはストレージ管理の簡素化を目的とするさまざまな機能を実装している。例えば「スナップショット」機能。多くのストレージ装置では、スナップショットを取るためには専用のディスク領域をあらかじめ手動で割り当て、その後もその領域の状態を継続的に監視する必要がある。また、スナップショットでバックアップを取る処理はストレージ装置に掛かる負荷が高く、アプリケーションの性能に影響を及んでしまうのが常だ。
しかしIBM XIVは、前述したようにディスク領域の割り当て方法が極めてシンプルであるため、スナップショット領域の物理設計がそもそも不要になる。また、「Redirect on Write」の仕組みにより、アプリケーションからのアクセス性能に影響を及ぼすことなく、スナップショットによるバックアップを実施できるという(関連記事:“スナップショット”と“レプリケーション”で重い処理はストレージ任せ)。
また、IBM XIVは同期および非同期の差分データミラーリング機能を備えているが、通常は複雑な設定が必要になるミラーリングも、IBM XIVはGUIツール上で極力シンプルな操作で設定できるよう工夫されている。松本氏いわく、「ベンダーの手を借りずに、ユーザーが直接設定することが可能」だという。また、ミラーリングサイトを新規構築する際の課題として挙げられる初回同期も、テープバックアップによるオフライン同期とオンライン同期を組み合わせることで、回線に負荷を掛けずに、かつ確実に同期を取る仕組みが提供されている。
ストレージを新たに導入する際に必ず課題になるのが、既存のストレージ上からのデータマイグレーションだ。IBM XIVでは、データのマイグレーション作業を極力簡素化するよう工夫されている。他社製のストレージ装置も含め、異機種のストレージからのデータマイグレーションの設定と実行をGUIツール上の簡単な操作で確実に行うことができるという。
また、接続ホストごとにIOPSやスループットの上限値を個別に設定できるQoSの機能も備えている。これも、ハイエンドストレージ製品の多くが実装している機能だが、管理作業の簡素化にこだわるIBM XIVでは、これもGUI上で2ステップほどの簡単な操作で行えるよう設計されている。
こうしたハイエンドシステム向けの機能は、通常はスキルの高い管理者が操作することを前提としているため、「簡単操作」がウリになることはあまりない。逆に、この点にこだわっていることが、他のハイエンドストレージ製品とIBM XIVとの差別化ポイントだといえるだろう。なお、ここまで紹介してきた機能は、標準ライセンスの中に全て含まれている。
近い将来にSSDオプションに対応予定
日本IBMは、IBM XIVの最新版となる「IBM XIV Storage System Gen3」(以下、XIV Gen3)を9月8日に出荷開始した。XIV Gen3は、2008年に出荷を開始した「Gen2」からハードウェアコンポーネントを刷新した。モジュール間の内部通信バスがイーサネットからInfiniBandになり、大幅に帯域が拡張された。また、外部ポートも新たにFCの8Gビットに対応する。こうした機能強化の結果、Gen3はGen2との比較で、おおむね最大で4倍のパフォーマンス向上を果たしているという。さらに2012年上半期にはSSDがモジュールに搭載可能となる予定だ(関連記事:企業向けSSD市場が活性化してきた本当の理由)。
「SSDを読み込みキャッシュ用途で活用できるようになるので、ランダムリード処理のスループットが飛躍的に向上するはずだ」(松本氏)
なお同製品の標準価格は、搭載するモジュールの数などによって異なってくるが、55Tバイトのディスク(実効容量)を搭載した最小構成時では1億2155万3000円(税別)となっている。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 搭載ディスクドライブ | SAS 2Tバイト(7200rpm) |
| 最大キャッシュ容量 | 360Gバイト |
| 最大ドライブ数 | 180ドライブ |
| 最大システム実効容量 | 161Tバイト |
| 最大接続ポート数 | FC 8Gbps 24ポート、iSCSI 22ポート |
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