IT管理者がWindows Thin PCに抱く期待と不安
Windows Thin PCは真のリモートデスクトップを実現するのか?
ターミナルサービス、シンクライアント、VDI……。リモートデスクトップ技術に関するITベンダーの約束が果たされることはなかった。MicrosoftのWindows Thin PCもまた、IT管理者を失望させるのだろうか?
古くからのIT管理者が、長年の経験から、次々に登場する新しいリモートデスクトップアプリケーション技術にうんざりした思いを抱くのはもっともなことだ。
以下のどれか1つでも覚えているだろうか。
- 1999年はターミナルサービスの年になる!
- シンクライアントに切り替えればデスクトップPCの刷新は20年以上先延ばしにできる!
- 間もなくあらゆるアプリケーションがセッションで実行されるようになる!
- Virtual Desktop Infrastructure(VDI)が答えであり、答えはVDIだ!
米Microsoftの新しい「Windows Thin PC」(WinTPC)を垣間見たとき、心をよぎったのは技術に対する期待の念と、また失望させられることに対して身構える悲観的な念が入り混じった思いだった。
WinTPCはその名の通り、PCをシンクライアントに転換させるソリューションだ。
私が抱く悲観は、WinTPCの技術や用途とは何の関係もない。WinTPCは、一般的にWindows Embeddedと称される製品スイートをうまくパッケージし直したものといえる。WinTPCが違うのは、クライアントハードウェアからWindows Embedded OSを切り離した点だ。
WinTPCは、その辺に放置されている一般的なハードウェアにシンバージョンのWindowsをインストールできる。つまり、Windows EmbeddedのOEM(Original Equipment Manufacturer)シンクライアントハードウェアに閉じ込められることはない。
WinTPCをOEMの縛りから解放することによって必然的に、リモートアプリケーションをエンドポイントに拡張するパワフルな使用事例が導かれる。中でも最も明白なのは、放置されている古いデスクトップPCの寿命を大幅に伸ばせる可能性だ。
WinTPCに必要な最小システム要件を見てみると、1GHz以上の32ビット(x86)プロセッサ、1Gバイトのメモリ、HDDの空き容量4Gバイト以上、WDDM v1.0以降のドライバを搭載したDirectX 9グラフィックデバイスとなっている。Microsoftは「16Gバイト以上のHDD使用可能容量」および「最適なパフォーマンスのためには15%以上の空き容量」を推奨している。この最小システム要件は、笑ってしまうほど最少だ。収納庫を探せば、WinTPCの最小システム要件を満たす6~10年前のハードウェアが見つかるだろう。
WinTPCは高度な使用感が求められる環境向けにも1歩前進している。セキュリティソリューションとして「BitLocker」「BitLocker To Go」「AppLocker」が、グラフィックスを多用するアプリケーション向けに「RemoteFX」プロトコルアドオンが加わった。さらに「Forefront Endpoint Protection」もサポートしている。もっとエキサイティングなのは、WinTPCインスタンスがMicrosoftの「Windows Embedded Device Manager」を通じて管理できることだ。これはIT専門家が絶賛しているか、さもなければ全く聞いたことがないというツールだ。
MicrosoftのWinTPCのライセンス契約も驚くほどリベラルだ。Software Assurance(SA)の顧客は、契約対象となるデバイスにWinTPCをインストールできる。Virtual Desktop Accessライセンス契約を結んでいる組織および比較的新しいMicrosoftのWindows Intune契約を結んでいる顧客も同様に利用できる。
他にも設計上の決定をめぐり、WinTPCの可能性に目を見張らせる点が2つある。1つはアプリケーションをローカルで実行できる機能を残した点だ。Microsoftのライセンス契約には「Microsoft Officeおよび同様のアプリケーションなど、プロダクティビティアプリケーションを実行してはならない」との文言がある。一方で、WinTPCインスタンスではそれ以外の種類のアプリケーションを実行してもよいと述べている。具体的には以下のようなアプリケーションだ。
- セキュリティ
- 管理
- ターミナルエミュレーション
- Remote Desktopおよび同様の技術
- Webブラウザ
- メディア再生ソフト
- インスタントメッセージングクライアント
- ドキュメント閲覧ソフト
- .NET FrameworkおよびJava仮想マシン
上記のアプリケーションに対応したことで、IT部門がこれまで従来型のシンクライアントを採用できなかった原因の多くは取り除かれる。管理ツールとセキュリティツールはローカルに置くことができ、Windows Embeddedで求められたような特別な配慮の必要もない。リモートアプリケーションの最大の問題であるWebブラウザ、メディア再生ソフトなどのアプリケーションは、リモートに置く必要はなく、特別な配慮も必要としない。これがサポートされたことで、Remote Desktop ServicesおよびVDIを使ったアプリ提供の様相は一変する可能性がある。
ターミナルサービス管理者の沈んだ気分を浮き立たせるもう1つの設計上の決定は、WinTPCがノートPCにも対応し、大量のドライバ(およびドライバサポート)が付属するという点だ。これは本質的にWindowsなのだ。
加えてMicrosoft DirectAccessの常駐型のVPNもサポートされる。ノートPCのプロビジョニング、利用、管理、紛失または盗難に遭った場合の対応について、根本的なデザイン刷新を思い描けるようになった。
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これらは技術としては素晴らしいが、実用的にはどうだろう。われわれはまだ悲観的だ。業界は実際にこれを採用するのだろうか。過去の製品について守られなかった約束や宣言があまりに多かったため、「シンクライアントの素晴らしさ」「根本的なデザイン刷新」といった言葉を書くのは苦痛に近い。過去にも同じようなことがあり、われわれは機能の限界と難解なライセンス規約と、ムズムズしながら解決できない1つか2つの重要な問題に悩まされてきた。
さらに、このアプリケーション提供方式がもたらすパワーを理解してくれそうにないCIOなどの経営陣と話すことを考えるとさらに気が重くなる。やはり今回も様子見の姿勢を取って、10年以上も前からその存在を信じてきたリモートアプリケーションの夢が今度こそ現実になることを期待したい。
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