ストレージ導入事例:Isilon
ストリーミング配信の鍵を握るNAS JストリームがIsilonを選択した理由
ストリーミング配信されるコンテンツは、他のファイル形式と比べて非常に容量が大きい。そうしたファイルデータを効率良く、確実に管理するためにJストリームは自社のNASシステムにIsilon IQを採用した。
ストリーミング配信事業で重要な役割を果たすNAS
日本初のインターネットでの動画配信(ストリーミング)専業企業として、1997年に設立されたJストリーム。現在では、多彩な端末に対応する安定した動画・ストリーミング配信を行うインフラ事業の他、コンテンツの企画、制作や効果検証といった動画配信に関連する幅広い事業を手掛けている。
同社のビジネスを支えるITインフラの中で重要な役割を演じているのが、NAS(Network Attached Storage)システムだ。動画配信されるコンテンツファイルは、文書ファイルや画像ファイル、音声ファイルなどと比べて非常に容量が大きい。そうした大容量のファイルデータを効率良く、かつ確実に管理するため、同社では常に最新のNAS技術の動向をチェックし、実際に導入・活用してきたという。
Jストリーム 配信事業統括本部 技術部 次長 兼 アプリケーションサービス課長 三井貴文氏は、同社におけるストレージ運用を次のように説明する。
「弊社の動画配信のストレージインフラは大きく分けて、複数の顧客のコンテンツを相乗りの形で保存するホスティング用ストレージと、顧客ごとに専用ストレージ装置を用意する形態の2通りがある。前者のホスティング用ストレージは2系統のストレージシステムに分けて運用しているが、それぞれを3年おきに容量単価がより低い最新機種にリプレースしている」
Jストリームでは1年半ごとにNASのリプレースが発生することになる。NAS技術は特にここ10年の間で大きく進化し、現在もなお技術革新が進んでいる。同社はストレージのリプレースのタイミングごとに、その時点で最も同社のニーズに合致する製品を慎重に選んで採用してきた。
同社は2010年、ホスティング用サービスの基幹システムにアイシロンのNAS製品「Isilon IQ」シリーズを初めて採用。もう片系統のホスティング用ストレージについても、本来のリプレース時期を前倒しして、2011年6月に「Isilon IQ NL」シリーズを採用した。
「スケールアウト型」と「ファイルシステム」がアイシロン導入の決め手
Jストリームは2008年、顧客ごとの専用ストレージ装置にアイシロン製品を初めて採用した。実はそれ以前から製品を選定するごとに、アイシロン製品は候補に挙がっていたという。しかし、当時はフェイルオーバー機能や製品価格が同社の要件に見合わなかったため、採用を見送ってきた。それが、2008年ごろから機能面、価格面ともに要件を満たすようになり、一躍有力候補に躍り出たという。
同社はもともと、アイシロン製品独自の「スケールアウトNAS型アーキテクチャ」が、自社のニーズに極めて合致すると考えていた。一般的なストレージ製品は、コントローラー部とディスク装置部で構成されるが、このアーキテクチャでは高い処理負荷が掛かった状況ではコントローラー部がボトルネックになってしまうことがある。特にJストリームのように大容量のファイルデータを扱う場合はそうした傾向が顕著になる。
その点、アイシロン製品のスケールアウトNASアーキテクチャでは、コントローラー部とディスク装置は分かれていない。CPUやメモリ、ネットワーク制御などのコントローラーの機能とディスク装置をひとまとめにした「ノード」を複数接続してクラスタ構成を組み、それぞれのノードが互いに協調動作することでストレージ機能を実現する。システム拡張の際には、このクラスタにノードを追加することで、ディスク容量だけでなく処理性能も順次拡張できる。
Jストリーム 配信事業統括本部 技術部 アプリケーションサービス課 課長代理 和泉慶彦氏は、次のように述べる。
「アイシロン製品を採用した最大の理由の1つは、スケールアウト型なのでコントローラー部がボトルネックにならず、パフォーマンスをリニアに拡張できる点だった。そしてもう1つの決め手が、ファイルシステムだった」
アイシロン製品は数P(ペタ)バイトという大容量の単一ファイルシステムを構成できる。Jストリームがそれまで利用してきたストレージ装置では、事実上10Tバイト程度に制限されていたため、運用に手間が掛かっていたという。
「ホスティングサービス用ストレージの場合、複数のユーザー間でファイルシステムを共有するため、特定のユーザーが大量の動画ファイルをアップロードしてファイルシステムの容量がパンクしてしまうと、サービス全体に影響が及んでしまう。そのためこれまでは顧客ごとにアップロードされるファイルの合計サイズを常に監視する運用を行っていた」(和泉氏)
アイシロン製品の導入によって、ファイルシステムの容量オーバーのリスクが事実上なくなるとともに、ディレクトリ単位でファイルシステムの利用状況を把握できる管理機能を利用でき、運用が非常にシンプルになる。これらの点を高く評価し、同社はアイシロンのストレージ製品の導入を決定することになる。
ディスク数が減ったことで電力コストの削減効果も
特定顧客向けの個別システムでの運用実績を積んだ後、2010年のホスティング用ストレージのリプレースタイミングで1系統をアイシロン製品にリプレースした。リプレース作業自体はおおむねスムーズに運び、機器設置から1カ月後にはデータ移行も含め全ての作業が完了、無事稼働を開始した。しかし、一部の設定作業には苦労したという。
「当社のシステムはWindowsとLinuxが混在しているため、NFSとCIFSの2つのファイルシステムが混在したストレージ環境を構築する必要があった。しかし、それぞれのアクセス権限をマッピングする方法が、それまで運用してきた製品と異なっていた。そのため、その設定にはかなり苦労した」(和泉氏)
しかしこの点がクリアされた後は、導入・運用ともにスムーズに運んだという。その結果、もう片系統のホスティング用ストレージもリプレース時期を前倒しして2011年6月に切り替えた。これにより、当初狙っていた拡張性とファイルシステム容量のメリットが享受できるのはもちろんのこと、運用コストの面でも大きな効果があったという。
「アイシロン製品ではSATAディスクが使われているので、大容量のディスク装置を採用できる。これによってディスクの数が減り、電力消費量を抑えることができた。ストリーミング事業を展開するわれわれのような企業では、全体コストの中に占めるデータセンターコストの割合が大きいので、これは非常に大きなメリットだった」(三井氏)
一般的にSATAは、SASやファイバーチャネル(FC)と比べ性能が劣るといわれるが、アイシロン製品ではSATAでも十分な性能が確保できるとうたわれている。事実、Jストリームでもその効果は実感できたという(関連記事:ストレージの省電力化を実現する「グリーンストレージ技術」)。
「もともと弊社のストリーミング基盤は、キャッシュサーバを有効活用することでバックエンドのストレージに極力負荷が掛からないよう工夫されている。しかし、アイシロン製品にリプレースしたことでストレージ性能は劣化するどころか、むしろ若干上がっている」(和泉氏)
EMCブランドになった後も製品進化に期待
アイシロンは2010年11月、ストレージベンダー最大手のEMCに買収されている。買収後もアイシロン製品は引き続きEMCブランドで提供されているが、買収前からのユーザーであるJストリームでは、この買収劇をどう捉えたのだろうか? 三井氏は次のように語る。
「不安感よりもむしろ、EMCという大手企業と一緒になったことで経営の安定性が増し、今後も製品が安定的に供給・サポートされ続けるだろうという安心感の方が強い。また、当社もEMC製品を採用していた経験があり、同社の製品サポートサービスにはとても信頼を置いていた。それと同じ品質のサポートサービスがアイシロン製品にも適用されるとしたら、歓迎すべき変化だ」
同社では国内最大規模のユーザーとして、アイシロン製品の技術革新に今後も期待しているという。特に期待を寄せているのが、同製品の最新OSに搭載される「SmartPool」という機能である。異なる機種のアイシロン製品のディスク領域を、ストレージ仮想化技術を使って単一のファイルシステムに束ねるというものだ(関連記事:ストレージ仮想化のメリットって何ですか?)。
「現在、ホスティング用に利用している2系統のストレージは、同じアイシロン製品であっても導入時期が異なるため、違う機種になっている。これをSmartPoolによって1つに束ねることができれば、より柔軟なストレージ運用が可能になるはずだ」(和泉氏)
また、現時点ではアイシロン製品に重複排除機能は実装されていない。この機能が実装されれば、ディスク容量の削減によるコストメリットが享受できるだろうと三井氏は述べる(関連記事:“De-duplication”(重複除外)でストレージの無駄遣いをなくす)。
「動画コンテンツファイル自体は重複排除による容量圧縮効果は期待できない。しかし、今後、サーバ仮想化環境における仮想OSの一元的に管理する場合、動画以外のデータに対してはストレージの重複排除機能を有効活用できる。将来的に重複排除機能が実装されることを期待している」
IPTV時代に備えた高スループットストレージへの投資
今後、動画配信の世界では、スマートフォンやスマートデバイスなど、PC以外の端末によるコンテンツ消費が増えることが予想されている。そのため、同一コンテンツに対して、各端末に最適化されたフォーマットのファイルを複数用意する必要が出てくる。それは、より多くのストレージ容量が必要になることを意味する。「ストレージ製品の選定に当たっては、今後も容量単価は極めて重要なファクターだ」と三井氏は述べる。
一方で、動画ファイルのサイズに関しては、インターネットテレビ(以下、IPTV)の普及が状況を大きく変える可能性があるという。「ほとんどのテレビ新製品にはLAN機能が付いており、インフラとハードウェア面では既にIPTV普及の条件がそろっている。何らかのきっかけで一気に普及する可能性があり、動画コンテンツの数も容量も増えることで、ストレージ装置には現状よりもさらに高いスループットが求められるだろう」。
和泉氏によると、そのときにどのストレージを選定するかは分からないが「スケールアウトNASとして高い性能と拡張性を備えるアイシロン製品であれば、IPTV時代にも十分対応できると考えている」という。
取材企業紹介
社名:Jストリーム
設立年月:1997年5月
Webサイト:http://www.stream.co.jp/
1997年5月にトランス・コスモス、国際電信電話(現KDDI)、NTTPCコミュニケーションズ、米プログレッシブネットワークス(現リアルネットワークス)の4社によって設立。国内随一の配信実績と高度な運用技術を生かし、動画やFlashをはじめとしたリッチコンテンツ配信のみならず、コンテンツ企画制作、Webサイト制作、効果検証にいたるまでのサービスをワンストップで提供している。PCや携帯電話、スマートフォンなどに向けて高品質で安定したコンテンツ配信・運用サービスを行っている。
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