標準ツールでは足りない!? サーバ仮想化の運用管理【第4回】
プロセス管理と自動化に優位性 IBM Tivoliの仮想化・クラウド対応機能
Tivoliの仮想化対応機能の中でも特徴的である、プロセス管理とプロビジョニングの自動化を中心にTivoliの製品群を見ていく。日本IBM自身のプライベートクラウドへの取り組みも紹介する。
企業システムの運用管理に求められるあらゆる機能を網羅する日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)の「IBM Tivoli Software」(以下、Tivoli)。ハードウェアの監視・モニタリング、ネットワーク管理、ジョブ管理、バックアップといったシステム運用管理に必須のさまざまな機能をサポートしているだけでなく、サービスリクエストやインシデント管理などITILに準拠したプロセス管理機能を充実させている。
仮想化やクラウドに対応した製品も幅広くラインアップ。最近は、仮想環境のポイントソリューションとして適用可能な個別製品に加え、仮想環境やプライベートクラウドに適用可能なスイート製品の拡充にも力を入れている。
Tivoliの仮想化対応機能の中でも大きな特徴といえるのが、プロビジョニングを自動化する機能だ。プライベートクラウドを構築してユーザー部門にサービスを提供する企業の情報システム部門にとって非常に有用であり、既に国内外の多くの企業で利用されている。もちろん、日本IBMも自社のクラウドソリューション事例である「IBM Cloud Showcase」にTivoliを適用することで、運用改善の取り組みを推進している。
本稿では、プロセス管理とプロビジョニング自動化を中心に、日本IBM自身の取り組み事例を交えながらTivoli製品を紹介する。
多くの製品が仮想化・クラウドに対応
Tivoliには、仮想化やクラウドに対応する多くの製品が用意されている。すぐに適用できるソリューションとして用意されているのが、「IBM Service Delivery Manager(ISDM)」および「IBM Tivoli Service Automation Manager(TivSAM)」だ。ISDMは、IBMのクラウド管理ソフトウェア機能(プロビジョニングの自動化や課金のためのデータ管理、ブレードサーバの電力監視など)をパッケージ化した仮想アプライアンスで、クラウド環境を迅速に構築できる。その構成要素にもなっているTivSAMは、サービスをリクエストしたユーザーが仮想サーバ環境を入手するまでの一連の流れを自動化するソリューションである。このスイート製品がTivoliの仮想化・クラウド対応機能の最大の特徴だ。
即時性の高い製品としては、他にもVMwareの仮想環境をバックアップするための「IBM Tivoli Storage Manager for Virtual Environments(TSM for VE)」がある。この製品は、VMwareのバックアップAPIであるVADP(VMware vStorage APIs for Data Protection)を使い、仮想マシンのイメージを差分バックアップするソリューションだ。
また、仮想環境のモニタリングを実現するのが、「IBM Tivoli Monitoring for Virtual Environments(ITM for VE)」である。これは、OS監視機能を含んだスイート製品であり、VMware、Hype-V、KVMなど多くのハイパーバイザーに対応しているのが特徴だ。他にも、仮想環境のセキュリティ対策を実現する仮想アプライアンス「IBM Security Virtual Server Protection for VMware(VSP)」もすぐに導入できる製品だ。
一方、ITサービス管理を充実させるための個別ソリューションも用意されている。「IBM Tivoli Service Request Manager(TSRM)」は、仮想環境をユーザーに提供するときの申請管理に役立つ製品だ。「IBM Tivoli Provisioning Manager(TPM)」は、プロビジョニング自動化のエンジン。上述したスイート製品のTivSAMは、実はTSRMとTPMを組み合わせたものであり、申請を受け付けてから仮想サーバを提供するまでの機能を自動化している。
プロセス管理の観点では、仮想環境の構成情報を収集する「IBM Tivoli Change and Configuration Management Database(CCMDB)」、ストレージ仮想化を管理する「IBM Tivoli Storage Productivity Center(TPC)」などの製品がある。
| 製品名 | 機能 |
|---|---|
| IBM Service Delivery Manager(ISDM) | クラウド環境を迅速に構築するための、IBMのクラウド管理ソフトウェア機能をパッケージ化した仮想アプライアンス |
| IBM Tivoli Service Automation Manager(TivSAM) | ISDMの1コンポーネント。セルフサービスポータルを通してITリソースの割り当てを自動化 |
| IBM Tivoli Storage Manager for Virtual Environments(TSM for VE) | VMwareのAPIを使い、VMware仮想マシンのイメージを差分バックアップ |
| IBM Tivoli Monitoring for Virtual Environments(ITM for VE) | VMware、KVM、Hyper-Vなど、複数のハイパーバイザーのパフォーマンスと可用性をモニタリング |
| IBM Security Virtual Server Protection for VMware(VSP) | VMwareで構築された仮想化環境において、ホスト、ネットワーク、ハイパーバイザー、仮想マシンおよび仮想マシン間の仮想ネットワークトラフィックを含む全てのレイヤーに対するセキュリティ対策 |
| IBM Tivoli Service Request Manager(TSRM) | インシデント、サービスレベルなどサービスマネジメントの管理機能を提供。システム運用業務の効率化やサービスレベルの向上、対応の進捗管理、運用業務のワークフロー管理など |
| IBM Tivoli Provisioning Manager(TPM) | 物理/仮想サーバやOSのプロビジョニング作業など、運用管理上で発生する定型的な作業を自動化 |
| IBM Tivoli Change and Configuration Management Database(CCMDB) | 物理/仮想の混在したシステム全体の構成情報の依存関係を明確に管理し、GUI上でシステム全体の構成マップを表示。また、仮想環境にフォーカスして、ハイパーバイザーと仮想サーバの依存関係を表示する |
| IBM Tivoli Storage Productivity Center(TPC) | 仮想ストレージの構成、稼働状態を把握 |
その他、仮想ネットワークを管理する「IBM Tivoli Network Manager(ITNM)」、仮想環境も含めた全てのイベントを集約する「IBM Tivoli Netcool/OMNIbus」、物理/仮想環境のアラートを自動対応する「IBM Tivoli Netcool/Impact」なども仮想化対応製品として挙げられる。パッチ管理やインベントリ収集を行う「IBM Tivoli Endpoint Manager(TEM)」も、仮想マシンのエンドポイント管理に対応している。
製品を自社のプライベートクラウドに適用
このように、あらゆる製品において仮想化・クラウド対応が進められているTivoliだが、やはり特徴的なのはプロセス管理を実現する製品群だ。日本IBMでは、2010年に構築した自社のプライベートクラウド環境であるIBM Cloud ShowcaseにTivoliを適用し、運用改善に成功しているという。IBM Cloud Showcaseに最初に導入されたTivoli製品は、仮想サーバを自動構築するTivSAMだった。TivSAMは、属人性を排除して誰でもセットアップできる仕組みや、指定した日時に仮想環境を準備し、利用後に自動消去される仕組みを実現するために導入された。
続いて、仮想環境の稼働状況を監視して複雑な全体構成を把握し、リソース不足や障害要因をいち早く発見することを目的としてITM for VEが導入された。現在は、ITM for VEを使い、マルチプラットフォームのクラウドリソースをシングルコンソールで監視しているという。コンソールにはリソースプールごとの利用状況をダッシュボード形式で時系列表示し、効率的なリソース配分を目指す。日本IBMによると、物理サーバと仮想マシンの構成管理情報も不整合がなくなり、運用コストを低減する効果が得られたという。障害の影響範囲も迅速に把握できるので、サービスレベルも大きく向上したという。
2011年後半には、利用者がいつでも申請できる仮想サーバ環境のシステムとメニューを提供し、申請から終了までのワークフローを一貫して管理する仕組みとしてTSRMをプロセス管理に組み込んだ。これにより、申請から仮想サーバの構築までのプロセスが自動化され、導入時間の短縮化、オペレーションミスの最小化を実現できたという。
成功事例を基にしたソリューション
こうした自社の成功事例を基に、日本IBMではTivoli製品を利用した3つのソリューションを提案している。
TSRMを利用したクラウド申請プロセス管理ソリューション
表計算ソフトのワークシートやメールでやりとりされるクラウド申請プロセスには、申請テンプレートへの入力内容に個人差があり、内容の確認・修正のために何度もやりとりが生じるという課題がある。多様なリクエストに対する例外処理も多く、キャンセルや期間延長へ対応する手間も管理者泣かせだ。ユーザーからの問い合わせや障害連絡へも場当たり的な対応になりがちであり、インシデント管理や変更管理への対応が不十分になるなど、数多くの課題がある。
これに対し、クラウド申請ソリューションを利用すれば、ユーザーがカタログ化されたメニューからサービスを選択するだけで、申請プロセスに沿った確実な処理が行われる。ユーザー自身が空きリソースを参照して利用期間を指定し、キャンセルや期間延長などのプロセスもユーザーが自分で行える。サービスデスク、インシデント管理、変更管理機能も提供されるので、蓄積したノウハウを検索して活用する仕組みを構築できる。これにより、安定的・効率的な運用管理を実現するとともに、サービス品質の向上とコストの削減を両立することが可能になる。
TivSAMによる仮想サーバ自動構築ソリューション
クラウドサービスとして仮想サーバを提供するとき、ハイパーバイザーごとに異なる管理ツールを使い、ネットワークやストレージの申請内容を確認しながら人手で個別に設定する方法では、作業が非効率で人為的なオペレーションミスも発生しやすい。運用管理担当者に高いスキルが求められるばかりか、作業負荷が高くなれば人を増やさなければならないケースも出てくる。
仮想サーバ自動構築ソリューションは、統一されたインタフェースで、登録済みイメージから選択するだけで仮想サーバを展開することが可能になる。作業が効率的かつ正確になり、申請から利用までの時間短縮などを実現できる。
ITM for VEによる仮想環境統合監視ソリューション
ITM for VEの仮想環境統合監視ソリューションは、全体像を把握できず、障害時の影響範囲を特定したり利用実績を把握したりすることが難しい仮想環境の課題を解決する。ハイパーバイザーの挙動も監視できるので、ライブマイグレーションで仮想サーバが移動して、どの物理サーバで稼働しているか分からないという心配もなくなる。新しい仮想サーバをどこに追加すればよいか、リソースをどのタイミングで拡張すればよいか、計画を立てることも容易になる。
このように機能面では足りないところがないように見えるTivoliだが、今後も自動化機能の改善に取り組んでいくとのこと。また、製品ラインアップが多様化・複雑化して分かりにくくなっていることから、スイート製品も含めて製品の見直しを図っているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
標準ツールでは足りない!? サーバ仮想化の運用管理
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー