いずれも完璧には程遠い?
iPad/iPhone向け無料電子書籍アプリ8製品を辛口レビュー
電子書籍を読む手段は専用端末だけではない。iPadやiPhoneで電子書籍が読める無料リーダーアプリが急速に充実している。使いやすいアプリはどれか? 8種を徹底レビューする。
皆さんにとって、「Kindle Paperwhite」や「NOOK Simple Touch」のような電子書籍専用端末は本当に必要だろうか。iPadやiPhone向けに豊富に出回っている電子書籍リーダーアプリは、タブレットやスマートフォンで本や雑誌を直接読めるように設計されている。こうしたアプリの実力はどうなのか。
ご存じのように、電子書籍端末はさまざまな画面サイズや価格で販売されている。価格は70~400ドル程度(7千円~4万円前後)で、多くの製品は100~300ドル(1~3万円前後)の範囲に収まる。ディスプレーは6~10インチ程度だ。
電子書籍端末には幾つかのメリットがある。ほとんどの製品は9.7インチのiPadよりも小さく、軽い。明るい日光の下でも読みやすいことが多く、価格もずっと安い。iPadは、あえてビーチや地下鉄で使いたくはないかもしれないが、電子書籍端末はもっと気軽に使えそうだ。
だが、わざわざお金を掛けて電子書籍端末を手に入れる必要があるだろうか?
iPadやiPhone向けの電子書籍リーダーアプリは無料であり、アカウントの取得も無料だ。自分が費やす時間以外のコストは掛けずに、こうしたアプリを試すことができる(そのプロセスでコンテンツを購入すればコストが掛かるが、無料で手に入るコンテンツもたくさんある)。
電子書籍リーダーアプリの考慮点としては、
- コンテンツの見栄え/表示方法
- ブックマークやソーシャルシェア/レコメンドなどの読書機能の有無
- 辞書やWikipediaなどの参照機能
- コンテンツの品ぞろえ、提供体制、管理機能の有無
- 同期の仕組み
- オフライン読書のためのローカルダウンロード機能の有無
- Webブラウザに切り替えてWebサイトにアクセスすることなく、アプリからコンテンツを直接入手できるかどうか
といった項目が挙げられる。
また、電子書籍リーダーアプリは、作成者が採用しているプロプライエタリフォーマットに加え、PDFやEPUBといった標準的なフォーマットのファイルの大部分も読めなければならない。
本稿では、iOSに対応し、iPadやiPad mini、iPhone、iPod touchで使える8つの人気の電子書籍リーダーアプリをざっと見てみる。取り上げるアプリを以下にまとめた(以下は米国の製品情報をベースにしている)。
これから見ていくように、これらのアプリはいずれも無料でダウンロードして使うに値する。だが、現時点では、完璧には程遠いものがほとんどだ。
iBooks
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPad。iOS 5.0以降が必要。iPhone 5に最適化 |
米Appleのアプリ「iBooks」は、iOS端末にビルトイン(プリロード)されている。iBooksでは7種類のフォント、3種類のページレイアウト(ブック、フルスクリーン、スクロール)、夜間モードをはじめ3種類のページ色を利用できる。テキスト検索、ブックマークによる文章のハイライトとメモの追加、引用/意見のシェアといった機能もある。
iBooksにはダウンロードストアの「iBookstore」が含まれている。このストアについて2つのことを指摘しておきたい。
第1に、iBookstoreにはトップレベルに「無料ブック」のカテゴリーがない。無料ブックのカテゴリーは、「マンガ」などジャンルなどを示す種類別のカテゴリー内に見つかる。無料ブックのカテゴリーでは、ニューリリースや注目作品、人気作品、Appleユーザーガイド、フィクション/文学といったカテゴリー別に電子書籍が行単位で配置されている。
第2に、iTunesのApp Storeなどとは異なり、iBookstoreでは購入済みのアイテムが分類表示されない。
評価
エクスペリエンスは良い。また、iTunesアカウントと統合されているため、電子書籍をアプリから購入できる。
Kindle
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPad。iOS 5.0以降が必要。iPhone 5に最適化 |
そのブランド力で電子書籍ビジネスの雄の1つとなっている米Amazon.com。皆さんは、恐らく既にAmazonのアカウントをお持ちのはずだ。であれば、同社の電子書籍リーダーアプリ「Kindle」で電子書籍を購入するのは難しくないだろう。
Kindleは、25万種の見出し語と語義を収録した辞書から、語句の意味を即座に調べる機能を備える。語句をタップし続けると、辞書が開いて語義を表示する。初めて使うときは、辞書をダウンロードするまで数秒間待たなければならないが、それ以後は待たずに済む。
またKindleは「X-Ray」という機能も提供する。この機能は、文中の人物のプロファイルやキーワードの解説と共に、人物やキーワードが文中のどこに登場しているかを図示する“部分索引”を生成する。
評価
きちんと機能を果たしているが、ライブラリ管理やフォーマットにおける行間の設定に大いに改善の余地がある。
Google Playブックス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPad。iOS 5.0以降が必要。iPhone 5に最適化 |
米Googleの「Google Playブックス」には幾つかのクールな機能があるが、あくまで少数にとどまる。このアプリでできることは、基本的に「読書」「ライブラリの管理」「テキスト表示の調整」に限られる。テキスト表示の調整では、行の高さ(行間)などを変更でき、ページを読みやすくするのに役立つ。
スキャンした書籍については、モードを「スキャンしたページ」と「フローテキスト」に切り替えることができる。スキャンしたページモードでは、オリジナルの印刷ページの画像が表示される。フローテキストモードでは、フォントサイズや段落配置、行の高さなどを調整できる。
Google Playブックスは、iOSの画面読み上げ機能である「VoiceOver」をサポートする(iOSの設定でVoiceOverをあらかじめ有効にしておく必要がある)。VoiceOverは、テキストが読めない場合に便利な機能だが、オーディオブックに代わるものではない。
評価
独自の便利な機能もあるが、全体的にはそれほどぱっとしない。
NOOK
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone 3GS、iPhone 4、iPhone 4S、iPhone 5、第3~5世代iPod touch、iPad。iOS 4.3以降が必要。iPhone 5に最適化 |
米Barnes & Nobleの「NOOK」は、機能が思い切り削られている。主な機能はフォーマット設定や画面の明るさの調整、テキスト検索、ブックマーク、プログレスバーくらいだ。
NOOKでは、さまざまなフォントサイズの選択、フリックによるページ移動、ダウンロード可能なアプリ内辞書での言葉の意味調べなどが可能だ。だが操作説明とは異なり、単語にタッチしても、文章のハイライトやメモの追加、言葉の意味調べのためのポップアップ画面が表示されないことが多かった。これは無用の混乱を招く。
Barnes & Nobleが運営する電子書籍ストア「NOOK Book Store」以外から入手したEPUBやPDFファイルをダウンロードすることもできる。無料ブックも数冊ロードされている。
評価
単に本や雑誌を読みたいのであれば、NOOKは悪くない選択肢だ。
OverDrive Media Console
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPad。iOS 4.3以降が必要。iPhone 5に最適化 |
「OverDrive Media Console」は、米国の大学や公立学校などの図書館で(これまでのところ1万8000カ所以上)、所蔵の電子書籍やオーディオブックを貸し出すために利用されている。
ユーザーは地元の公立図書館を利用する場合のように、図書館ごとに有効な貸し出しカードを持っていなければならない。自分が利用する図書館が図書館ネットワークに加入していれば、その図書館の貸し出しカードは同じ図書館ネットワークの蔵書にも有効だ。さらに、図書館ネットワークのメンバーである国内や世界の他の図書館の蔵書にも有効である可能性が高い(もちろん、インターネット経由で利用する場合、これらの図書館は全て手近だ)。多くの公立図書館と同様に、ユーザーは、図書館に置いてほしい書籍をリクエストしたり、書籍を予約したりできる。
実際の本のように、電子書籍やオーディオブックには貸し出し期間がある。唯一の違いは、「期限までに返却しないと、延滞料を課されてしまう」と心配せずに済むことだ。貸し出し期間が終わると、アクセスが不能になるからだ(その時点で、ユーザーも空き容量を回復するために、借りたアイテムを端末から削除した方がよいだろう)。
OverDrive Media Consoleは、利用期限がない多くの無料ブックにアクセスする機能もある。
一方、OverDrive Media Consoleにはいただけない部分もある。1つは、フォントのサイズ設定機能と、他のフォーマット設定機能が切り離されていること。もう1つは、他の一部の電子書籍リーダー(後述するKobo Booksなど)ほど行間を詰めることができないことだ。こうした点を重要視するユーザーもいるだろう。
また驚くべきことに、OverDrive Media Consoleは、ユーザーがどの図書館を利用したいかを記憶できるが、貸し出しカード番号は追跡できないようだ。
同様に、コンテンツ内、さらには特定の電子書籍フォーマットにおいて検索が簡単にできない。また、電子書籍を選択してダウンロードしても、それを開いて読み始めるには何度もクリックする必要がある。煩わしさに拍車を掛けるのが、電子書籍を選択した後もさらに数回クリックしなければ、本棚に追加してダウンロードすることができないことだ。
評価
OverDrive Media Consoleは、とんでもなく無駄に複雑だ。この業界が進化していないなんて信じたくない。
Kobo Books
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPadに対応。iOS 5.0以降が必要。iPhone 5に最適化) |
「Kobo Books」は、共有やパーソナライズの豊富なオプションを備えている。「Reading Life」機能では、自分が読んできた本の画像をコラージュしたり、読書に費やした時間、めくったページ数、書籍ごとの読書時間、1時間当たりの読書ページ数といった統計データが得られる。時系列で読書状況を示すグラフを表示したり、自分の読書情報をソーシャルメディアに投稿したりすることもできる。また、EPUBやPDFの電子書籍をメールやWeb、Dropbox経由でライブラリに追加できる。
評価
共有や統計などの先進的な機能がユーザーに評価されなければ、特別なインパクトを打ち出すことは望み薄だ。
Bluefire Reader
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone 3GS、iPhone 4、iPhone 4S、iPhone 5、第3~5世代iPod touch、iPad。iOS 5.0以降が必要。iPhone 5に最適化 |
Bluefire Readerは、一般的な用途に加えてAdobe DRMで保護された電子書籍を読むのに利用できる。こうした電子書籍には、図書館や出版社、小売業者からの多数のEPUBやPDFなどがある(これらの電子書籍は他の電子書籍アプリでも読めるかもしれない。Bluefire Readerだけが選択肢だと決めてかからず、ぜひ探求してみていただきたい)。
Bluefire Readerを使うには、Adobe IDが必要になる。これはAdobe SystemsのWebサイトで無料で入手できる。
Bluefire Readerは、他の数十種類のiOS電子書籍リーダーアプリで使われる“エンジン”でもある(Bluefire Readerの画面最下部にある「Get Books」アイコンを選択すると、これらのアプリが表示される)。
Get Booksアイコンを選択すると、デフォルトでページ内の「Readers」タブに誘導される。そこでは、Bluefire Readerベースのリーダーアプリが一覧表示されている。いまいましいことに、その一覧は、こうしたリーダーアプリを直接入手できるようにハイパーリンクされているわけではない。さらにいまいましいことに、Get Booksを選択すると、中央の「Free Books」タブではなく、常にReadersタブに誘導されるのである。ほとんどの場合、ユーザーはFree Booksタブにアクセスしたいはずだ(もう1つの「For Booksellers」タブは、電子書籍出版に関する広告だ)。
Free Booksのページでは、カテゴリー別に分類された無料の書籍のリストが表示される。これらの書籍はEPUBやPDFで提供されている。
だが、さらにいまいましいことに、これらの書籍は明確なパターン(著者やタイトルのアルファベット順など)で並んでいない。例えば「Science Fiction(サイエンスフィクション)」セクションをざっと眺めると、このことが分かる。
無料書籍のほとんどは、電子書籍図書館「Project Gutenberg」で公開されている作品ではないかと思う。これらの作品には、どんなWebブラウザからでも直接アクセスできる。Adobe Readerが読書体験に有意義な価値をもたらすかどうかは、ユーザー1人ひとりが判断することだ。私は、何冊かの新しい合法的な無料書籍も見つけた。例えば、コリー・ドクトロウ、チャールズ・ストロス、ケリー・リンクといった現代の作家によるSF作品だ。
Bluefire Readerはブックマークと注釈をサポートしている。iTunesの紹介ページでは、ユーザーは語義を調べたり、内容を共有したりできると記載されている。だが、これらの機能は見つからなかった。
評価
個別の機能はしっかりとしているが、限られた品ぞろえ以外のものをユーザーが読むには不十分だ。
Goodreads
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応端末 | iPhone、iPod touch、iPadに対応。iOS 4.3以降。iPhone 5に最適化 |
「Goodreads」は電子書籍リーダー機能も持っているが、主な機能は書籍の動向追跡とレコメンデーションエンジンだ。ユーザーはGoodreadsを利用して書籍のレビューを書いたり、他の人の評価をチェックしたりできる。
バーコードスキャンのような機能も提供する。ユーザーが“読みたい本リスト”に書籍のタイトルを簡単に追加できるようにするためだ(例えば、書店や友人の家で読みたい本が見つかった場合などに使える)。
Goodreadsは、新刊発売前に応募を募り、当選者に新刊を無料でプレゼントするキャンペーンも常時行っている(キャンペーン対象の新刊リストを見たが、私にはピンとこなかった)。
電子書籍リーダーアプリとしては、実のところ、Goodreadsはあまり役に立たない。2013年3月にAmazonの傘下に入ったGoodreadsは、2000以上のパブリックドメイン(著作件が放棄された)書籍を提供していると公言している。しかし、そのサービスに、他の電子書籍システムでは得られないものがあるとは考えにくい。
Goodreadsが扱う無料書籍には、J.K. ローリング著『ハリーポッター』シリーズの“ファンフィクション”(ファンによる二次創作小説。ハリーポッターシリーズの世界を舞台としている)のようなものも含まれている。
こうした無料書籍の1つを読んだところ、Goodreadsの“機能”にカチンときてしまった。それは、ページをめくると、行き過ぎた3D映画の画面効果のように、ページが飛び掛かってくるように見えるというものだ。この手のテクニックは、常にあっという間に陳腐化してしまう(この効果を変更するために設定を見ることもしなかった)。
評価
勧めたり、勧められたりするのが好きな人にとっては、Goodreadsは面白いかもしれない。だがこれは実際には、わずかな部分以外は電子書籍リーダーアプリではない。
総評:総じて発展途上、専門端末との違いは「制約のなさ」
以上のアプリは全て無料であり、アプリ自体はストレージ容量をあまり消費しないことを考えると、全部まとめてインストールしても問題ない。インストールすれば、例えばAmazon.comやBarnes & Noble、またはどこかがお得なセールをやっていたり、あるいは無料品を配布しているときに、そうしたチャンスをいち早く生かすことができる。
一方、ある電子書籍リーダーアプリは、他のリーダーアプリとの関連性がないため、主に1つのコンテンツエコシステムにフォーカスした方がよいかもしれない。
だがこれらのアプリをそれぞれ数回試した後では、全体的に不満が募り、イライラしてしまったことを白状しなければならない。
確かに、これらのアプリのどれを使っても電子書籍などのドキュメントを読むことはできる。いずれもテキストのフォーマットや画面の明るさなど、似たような調整機能を提供する。また、ライブラリ管理機能もほとんどのアプリで利用できる。
だが私の観点では、ほとんどのアプリはユーザビリティが不十分だ。例えば、“ストア”と直接接続されていない(例外はiBooksだけ)。コンテンツを手に入れるには、iPadでWebブラウザに切り替えるか、あるいはノートPCやデスクトップPCが必要になるということだ。これでは、アプリ外のステップが加わることになる(ただし、OverDrive Media Consoleでは、ライブラリからのアプリ内ダウンロードが可能)。
うまくいけば、いずれは(もしかすると、AndroidやWindows 8で)1つの共通コンテンツライブラリが持てるようになるだろう。本や雑誌、ドキュメントを読むには、適切なアプリをインストールしておかなければならないとしてもだ。
そしてうまくいけば、電子書籍リーダーアプリは、いずれもっと使いやすくなるだろう。
しかし、ここまで読んできても、結局、Kindle PaperwhiteやNOOK Simple Touch、あるいは他の電子書籍端末に投資する人もいるかもしれない。だがその場合は、特定のエコシステムの制約を受けることになる。もっとも幸いなことに、どの電子書籍端末を購入しても、そのエコシステムからのアイテムをiPadやiPhoneに同期し、それらを使って読むことも可能だ。
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