顧客をつかみ、離さないためのマーケティングキャンペーン事例集
「やりすぎ」で失敗しないためのマーケティングキャンペーン成功のコツ
消費者と良好な関係を築くには、マーケティング分析ツールを用いて、顧客理解を深めることが有用だ。だが、顧客のイメージを具体的に描き、キャンペーン精度を高めるには、ちょっとしたコツが必要だ。
今日の細分化されたメディア市場においては、「消費者にリーチし、有意義な関係を構築する」という目標はこれまで以上に難しくなっている。この困難な取り組みを少しでも容易にしようと、マーケティング担当者は大量のデータを収集し、マーケティング分析ツールを用いて、「自分たちの顧客は誰なのか」や「顧客が望む製品やサービスはどのようなものか」についての理解の増進に努めている。
だが、人口統計データだけで有用な顧客プロファイルを構築できると考えるのは間違いだ。ギフトバスケットの販売を手掛ける米Harry and Davidで顧客マーケティング担当副社長を務めるポール・レイゾリサック氏は先頃、米SASが開催した経営層向けカンファレンス「Premier Business Leadership Series」で講演し、次のように語った。「人口統計データは祖父世代のデータのようなものだ。顧客のイメージをもっと具体的につかみたいのなら、もっと深く踏み込む必要がある」
広告キャンペーンの最適化で顧客の離反リスクを回避
人口統計データを使えば、顧客を大まかなグループに分けて全体的な傾向を把握することはできる。だがHarry and Davidが望んだのは、顧客おのおのについてもっと深く知ることだった。顧客について詳しく知ることができれば、広告や製品プロモーションのターゲットをより的確に絞り込んで、より適切に最適化でき、それが収益の改善につながるからだ。
Harry and Davidは現在、自社のオンラインストアも含め、複数のWebサイトで顧客の購買行動を追跡している。同社のマーケティングチームはそこで得たデータを用いて、特定のタイプの顧客に向けたキャンペーンを打ち出すことができている。さらにチームは、「顧客が誰のためにギフトを購入しているか」「1年のどの時期に買い物をしているか」「どの商品と一緒に購入することが多いか」なども把握できる。
マーケティングチームは、例えば、消費支出額が最も高い顧客の多くは、年末のホリデーシーズンにだけ商品を購入していることも分かったという。こうした顧客は、Harry and Davidにとって非常に大切な顧客だ。だが、こうした顧客に対し、年がら年中売り込みをかけるのは無意味だ。「広告キャンペーンを最適化することで、タイミングの悪い売り込みのせいで顧客が離反してしまう問題を回避できた」とレイゾリサック氏は語る。
医療分野もマーケティング分析ツールを活用
ターゲットを絞った顧客重視のマーケティング手法は、医療業界においても重要性を増している。医療の分野では、改革は質の高い効果的なケアに直結する。全米で20以上の病院と400の外来患者向け施設を運営する米ピッツバーグ大医療センター(UPMC)の健康保険サービス部門、UPMC Health Planでマーケティングおよびコミュニケーション担当副社長を務めるシェリ・マニング氏は次のように語る。「患者が病気になったときだけ治療をするのではなく、患者の健康維持を重視した新しい支払いプランにおいては、医療機関が患者のことをもっとよく知り、もっと患者と関わることが必要となる」
「マーケティング担当者としては、これから新たな関係を構築することになるという点を理解する必要がある。そうした対話をするつもりなら、真の協力関係が必要だ」と、マニング氏は続ける。
マニング氏によれば、患者、つまり消費者と良好な関係を構築するためのプロセスは、まずデータ、しかも大量のデータを取集することからはじまるという。例えば、UPMCは進行中のクオリティ改善プロジェクトの一環として、糖尿病患者の健康状態を改善したいと考えていた。そこでマーケティングチームは、糖尿病患者のプロファイルを構築し、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを展開することで、患者が自身の健康を自己管理できるよう支援しようと考えた。マーケティングチームには、各患者の主訴の記録と病歴にアクセスできるという強みもあった。
データの分析後、マーケティングチームは患者が糖尿病の合併症を患っていないかなど、通常の情報も使用できた。さらに医師らはこのシステムを使って、患者の職業や家族状況などを把握できた。また、こうした詳しい情報のおかげで、チームは「治療方針への患者の順守度」を左右する要因も全て把握することができたという。さらにチームはマーケティング分析ツール「SAS Campaign Management」を使って、各患者の個別の事情に的を絞ったアウトリーチキャンペーンも実施した。
「患者のことを知らなければ、誰も成功などできない。重要なのは、人々の健康であり、糖尿病患者に確実に治療方針に従ってもらうことだ。だからこそ、本当に賢く取り組まなければならない」と、マニング氏は語る。
「やりすぎ」に注意
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとばかりに、できるだけ多くの人たちを対象にキャンペーンを展開するというパラダイムは既に消えかかっている」。こう語るのは、米銀行Bank of Americaの顧客オファーおよび顧客ターゲティング担当副社長を務めるアンドレ・デ・アルマス氏だ。Bank of Americaのマーケティングチームもかつては、ほぼ全ての顧客を対象に新規のキャンペーンを打ち出していた。だが今はマーケティング分析ツールを使い、連絡する顧客の数をキャンペーンごとに制限して、キャンペーンの恩恵を受けるであろう人たちにのみメッセージが届くようにしているという。
この目標を達成するため、Bank of Americaは顧客に関するデータを収集し、「どのようなメッセージを送るか」の判断に役立てている。例えば、住宅ローンの利率を案内するダイレクトメールを大学生に送っても恐らく効果はほとんどないが、クレジットカードを案内するメールであれば、もっと興味を抱いてもらえるはずだ。
「ただし、大量のデータを収集するだけで、キャンペーンが自動的に改善されるわけではない」と、デ・アルマス氏はくぎを差す。全てのデータ点がマーケティング戦略に有意義な影響を及ぼすとは限らない。「顧客を必要以上に細かく分類し、マーケティング戦略が置き去りにされるようでは、せっかくの最適化の取り組みが無駄に終わりかねない」とデ・アルマス氏。
「いくら情報収集能力を駆使して顧客に関する洞察を得ることができても、意思決定に変化がなければ、時間を無駄にしているも同然だ」と、同氏は続ける。
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