簡単じゃなかったクラウドでのDWH構築
消費者を中心に据えるP&Gのデータ分析基盤
消費財メーカーの米Procter & Gambleでは、米TeradataのDWHをクラウド上に構築し、各ブランドのWebサイトなどから集まるデータの分析に利用している。しかしながら、ここに至るまでの道のりは長かったようだ。
米Procter & Gamble(以下、P&G)は、世界最大手の消費財メーカーである。25のブランドを傘下に置き、2013年の売り上げは840億ドルを超える。世界規模で事業を展開し、消費者に親しまれているが、インターネットの破壊的な力に打ち勝つことはできていない。
分散していたデータを1箇所に集約
P&Gでは、マーケティング活動の大半を、テレビという1つの強力な媒体で賄っていた時期もあった。現在、消費者は、スマートフォン、タブレット、PCなど、オンラインの世界でより多くの時間を過ごすようになっている。その結果、テレビの威力は衰えを見せている。P&Gは、オンライン広告に投資し、約1万5000件の消費者向けWebサイトを開設したが、同社の製品は、ほぼ小売業者経由で販売されている。このような状況では消費者に関する情報を集めるのは難しい。「オンラインの世界で消費者に関する情報を入手するには新しいアプローチが必要だ」とP&Gのアソシエイトディレクター、トニー・ハドネル氏は話す。
例えば、P&Gが製造・販売する世界的な紙おむつブランド「Pampers」のマーケティングチームは、「Pampers Village」というWebサイトを開設した。この情報サイトでは、女性の妊娠週数や幼児の月齢に合わせたアドバイス、無料サンプル、割引クーポンを提供している。妊娠週数や幼児の月齢は、ページ上部にある画像をあしらったスライダーでユーザーが選択する。ユーザーはWebサイトへのログイン時に詳細な個人情報を入力することになる。
多くのP&Gブランドで同様の取り組みを行う一方で、同社は世界中で開設している何千ものWebサイトから集めたデータの処理方法を決める必要があった。
P&Gでコンシューマーソリューションのアソシエイトディレクターを務めるデニス・デバイン氏は次のように語る。「以前は大量のデータが分散していて、基準も策定されておらず、可視化できなかった。そこで、思い切って全ての情報を1箇所にまとめる構想を打ち出した」
消費者中心のアーキテクチャ
CRMに関連したグローバル技術開発を統括するハドネル氏は次のように話す。「CRMを担当するグローバルビジネスサポートセンターは、概念アーキテクチャの構築に着手している。このアーキテクチャでは、消費者を中心に据えて、そのまわりに考えられる“接点”を配置した」
「接点は、オンラインかもしれないし、店舗やテレビかもしれない。それぞれの接点を体系化して、消費者との包括的なやりとりに組み込んでいる。この構想を打ち出すまでは、モデルの中心には各ブランドが据えられていた」とハドネル氏は語る。
P&Gは、消費者向けWebサイトで、名前がひも付けられた全ての消費者に関するデータを1箇所に集めるようにした。これには、各ブランドとやりとりする方法や参加しているプログラムについて消費者が選択した全ての情報が含まれる。
P&Gでは、米Teradataのソフトウェアを従量課金で利用し、クラウド環境でデータウェアハウス(DWH)、キャンペーン管理、分析システムを構築・運用している。
「統計データを読み解けば、マーケティングプログラムにどんな消費者が反応したのか、何に興味を示しているのか、その動機になっているものを分析できる。取引情報からは、ロイヤルティーの高い消費者を特定したり、消費者のロイヤルティーを高める方法を発見したりできる。このツールを使用すると、こうした全ての課題に対処できる」と10月に開催された「Teradata Partners 2013」でハドネル氏と一緒に講演を行ったデバイン氏は語った。
「このツールでは、マーケティングキャンペーンの効果を可視化できる。今後企画するキャンペーンの効率化にも役立つ。広告代理店からは『これがベストな方法だ』という声が寄せられている。以前は、実際の効果を視覚的に確認することができなかった。だが、今では視覚的に確認することが可能になった。施策を見直し、効果の有無を見分けられると広告代理店は話している」(デバイン氏)
「これらは全て、ビジネスを進める上でとても重要な情報だ。以前はこのような情報は得られなかった」と同氏は述べる。
P&Gでは、Secure File Transfer Protocol(SFTP)を使用して、DWHに対するデータの抽出、転送、読み込みを行っている。マスターデータの管理には、米Trilliumのソフトウェアを使用している。
DWHをクラウドで導入するという選択肢
Teradataは10月、同社DWHおよび分析製品をクラウド環境でも提供すると発表した。同社のDWHをベースに構築されたクラウドシステムで、「Teradata Customer Interaction Manager」「Retail Logical Data Model」「Teradata Master Data Management」「Teradata Warehouse Miner」などの分析ツールが組み込まれている。
デバイン氏は次のように話す。「ハードウェアを購入したが、計画が頓挫するという事態は避けたかった。『専門家のあなたたちに任せる』とTeradataに伝えた。そうすれば、われわれは戦略とビジネスの結果に注力できるからだ。これは新たな試みであり、これまでにいろいろと学ぶことがあったが、今では万事うまくいっている」
「新たなシステムをうまく稼働させるための“魔法”は、テクノロジ自体にあるのではなく、消費者の行動を体系化し、データモデルを決定したもともとの概念アーキテクチャにあった」とハドネル氏は話す。
「ビジネス部門からのサポートも簡単に得られた。この計画は、受け入れることに問題はなかったが、実現するのが難しかった」と同氏は打ち明ける。
「今でこそ申し分ないシステムになっているが、ここに至るまでの道のりは長かった。アジアでシステムを稼働し始めたときは、Teradataもわれわれもどうすればよいのか分からず、一緒に学んでいった。未開の地に足を踏み入れた状態だった。データを何度も読み込み、試行錯誤しながら状況を理解した」(ハドネル氏)
同氏によると、このシステムは、既にアジアと米国で稼働中であり、西欧でも間もなく運用を開始する予定であるという。
クラウド環境を選択するメリットとしては、導入の迅速さやコストの低さが挙げられる。だが、DWHの場合、P&Gの経験からいえるのは、クラウドを使用するかどうかは関係なく、概念アーキテクチャとデータモデルの定義に多くの労力が必要になるということだ。
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