選定に難航も“口コミ”が突破口に
【事例】「通販生活」のカタログハウスが語る、BI選び「7つの基準」
通販大手のカタログハウスがビジネスインテリジェンス(BI)製品に求めた要素とは何か。同社情報システム部長である小幡 亮氏の話から明らかにする。
カタログ通販誌「通販生活」で知られる通販大手のカタログハウスが、ビジネスインテリジェンス(BI)製品を導入した。同社は、どういった目的でBIを導入したのか。製品選定のポイントとは何か。2013年3月にクリックテック・ジャパンが開催した情報システム部門向けイベント「Business Discovery World Tour in Tokyo with Google」で、カタログハウス執行役員 情報システム部長の小幡 亮氏が明らかにした。その内容を示す。
BI導入の背景:通販業界の変化でデータ分析のニーズ高まる
発行部数100万部を超える通販生活を中心に、通販事業を展開するカタログハウス。同社がBI導入に踏み切った目的は、マーケティング施策を効率化したいという営業部門など現業部門の声に応えるためだった。その背景には、新規顧客の獲得が難しくなっている現状があったという。
日本通信販売協会の調査によると、2011年度の通信販売全体の売上高は5兆900億円と、2002年度の2兆6300億円から約2倍の規模へ成長。日本百貨店協会が調査した2011年度の全国百貨店売上高は6兆1525億円であり、通信販売業界は約10年で百貨店の売上高に匹敵する規模に成長したことになる。
通販業界成長の原動力となったのは、ECサイトを中心としたネット通販の急拡大だ。ただし、成長市場だけに競争は激化している。アマゾンジャパンや楽天といった有力プレーヤーに加え、2013年3月にはリクルートライフスタイルが仮想ショッピングモール「ポンパレモール」を開始するなど、新規参入の動きも激しい。
既存顧客のリピート購買強化へ
ネット通販が急拡大する一方、紙のカタログの新規購読者数は減少傾向にある。顧客の紙媒体離れに加え、カタログの主要な促進策である新聞の折り込みチラシやテレビコマーシャルの効果が低下したことが原因だ。同社は2001年からネット通販を開始したものの、競合がひしめく中では厳しい戦いを強いられ、「紙のカタログの請求者数の減少を補えない状況が続いた」。
そこで同社は、化粧品や食品を対象とした新媒体の創刊といった新規顧客の獲得を進めつつ、既存顧客の購入回数の増加を重視する戦略へと転換。既存顧客のリピート購買に結び付くダイレクトメールの強化を進めることにした。
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基幹システム再構築の一環でBI導入を決断
リピート購買の促進を進める上で、現業部門からは業務効率の向上を求める声が挙がったという。例えばダイレクトメールを送付する際、適切な送付先を抽出するといった作業は、データを管理する情報システム部門へ都度依頼する必要があった。また、抽出条件の詳細な指定や分析が難しいといった課題もあった。一連の作業を効率化する分析システムが存在しなかったからだ。
こうした状況を踏まえて同社は、2009年に立案した基幹システム再構築計画の一環として、BIシステムの構築を決断した。新基幹システムの本格稼働は2011年8月を予定していたが、現業部門から「BIシステムは2011年1月には利用したい」という要望があり、それに応えるべくBIシステム構築を進めることになったという。
製品選定:SIerの提案は合わず、自社選定へ
同社は、BIシステムの構築に当たり、システムインテグレーター(SIer)から製品やシステムの提案を受けた。SIerから提案されたのは、データウェアハウス(DWH)を構築し、リピート顧客や関連購入商品、商品ジャンルごとの売り上げ/粗利の分析を可能にするBIシステムだった。
だが同社は、こうした提案は「自社に合わない」と考えた。「新規サーバの導入を抑制したかったことからDWHの構築は考えておらず、確保している予算にも合わなかった」。こうした経緯から、自社でBI製品を選定することにした。
7つの項目でBI製品を評価
BI製品の選定に当たって、カタログハウスが設けた選定基準は以下の7つだ。
- DWHを必要としない
- 数億レコードのデータの取り扱いが可能
- 日々の差分データを容易に取り込むことができる
- 分析軸やシステム変更が容易
- システムに不慣れな従業員でも使える高いユーザビリティ
- 予算内で導入可能
- 2011年1月の本格稼働に間に合う短納期導入が可能
上記の選定基準を基に、日本テラデータなどの外資系ベンダーを含め複数のBI製品を比較検討した。だが、選定基準を満たすBI製品はなかなか見つからず、選定は困難を極めたという。
口コミで知ったBI製品が最右翼に
こうした中、2010年7月、小幡氏は口コミでクリックテック・ジャパンのBI製品「QlikView」の存在を知った。「当時、QlikViewは選定対象に入っていなかったが、当社の選定ポイントを満たす可能性があるBI製品として調査を始めた」
口コミの真偽を確かめるべく、小幡氏は部下をQlikViewの研修へ派遣した。その結果、部下からは「今まで検討してきたBI製品と異なり、選定基準に合致する可能性が高い」と報告を受けたという。その後、体験版をダウンロードしてテストを実施するなどで、機能面では選定基準をクリアしていることを確認した。コストについては懸念が残ったが、SIer2社へ見積もり依頼をしたところ、予算内に収まることが判明。同年8月ごろに導入を決めた。
導入効果:レスポンス問題を乗り越え、従業員の5分の1が利用するBIへ
同社が構築したBIシステムは、日本アイ・ビー・エムのオフィスコンピュータ「IBM AS/400」で稼働する基幹システムから、ETLツールを利用してQlikViewへデータを取り込んで分析する仕組みである。開発はスケジュール通りに進行し、現業部門からの要望通り、2011年1月に本格稼働までこぎ着けた。
本格稼働直後、「大量データで動作させると、処理が終わるまでに数十秒かかってしまう」など、BIシステムのレスポンスが想定よりも悪いことが判明した。機能については現業部門からの評価は高かったものの、レスポンスの悪さが災いし、1カ月後には「利用者がゼロになった」。
実は、レスポンスに関する動作検証は少量データでしか実施しておらず、実運用で利用する規模のデータでは実施していなかった。あらためて検証した結果、レスポンスの悪化を招いた原因は「ウォーターフォール型の設計手順を取ったことで、幅広い要望に応えるべく、データ項目を詰め込み過ぎたこと」と判明。サーバのCPUクロック数も、QlikViewが求める水準に達していないことが分かった。
こうした課題を踏まえ、レスポンス改善に向けたチューニングを9週間で実施した。開発方式は、試行の繰り返しで開発を進めるスパイラル型へと変更。「QlikViewは分析機能の開発が容易だったことが、スパイラル型への移行を容易にした」。データ項目を必要最小限に絞り込み、後から必要に応じて追加するといった工夫を凝らすことで、レスポンスの改善に成功した。
QlikViewを中心としたBIシステムは、現在1日当たり80人が利用。同社の従業員約380人のうち、約5分の1が利用していることになる。現業部門からは「見えなかった購買傾向が見えるようになった」など評価は上々。現在のところ、QlikViewに関する現業部門や情報システム部門からの不満はないという。
同社は、今後QlikViewの活用範囲を広げ、「配送やシステムログの分析にも活用していきたいと考えている」。
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